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第107話 神界会議
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「では、これより神界会議を開催致します。司会は私、極光神ルエル。書記は賢神ケイズが務めます」
野球球場を思わせるドーム型の議場。
その一番奥の、点数プレートが設置されているであろう高さの辺りに四つのテラスがせり出している。一番高い一つにソウと尖兵の鬼巫女、一段下がってルエルと名乗った光を纏うロリ女神、その横に紫の女神アイシュラ、更に横に何度も間違っていないか確認した上で私達が座している。
おおよそ数千か万か、先住の神々を見下ろし、同時に多くの視線を向けられた。
嫉妬、羨望、興味、策謀に侮り、憤怒等々、向けられる感情が酷すぎて酷すぎる。きっとここは相応の地位にある神の席で、ぽっと出の私達が座るべき場所ではないのだろう。
何故、こんなことになった?
「まずは新入りの発表です。不幸にも魔の手先にされてしまった力の女神アーウェル、信仰数八万六千。中位神への任命で、ダルバス神聖王国改めジユウ国の全土と、周辺部族の生活領域を管轄域と認めます。ビッチ女神の玩具にされないように頑張ってください」
会場の中央近い場所で、付き添いのダイキに掲げられる赤の女神が称賛の拍手に囲まれる。
信仰数の程度がわからないが、力の弱そうな神々は総じて入口の辺りに集まっている。中位神との説明もあり、大体真ん中くらいの位階か。
にしても、拍手の規模が大きい割に、送り元の笑顔は殆どが引き攣っていた。
おそらく、後ろ盾となるアイシュラ神の威光が強すぎるのだと推測できる。誰が手を叩いて誰が叩いていないか、私達の席からは丸見えだ。目を付けられて不利を受けるのは皆嫌で、内心は歓迎なんてしていない。
その証左が次に見られる。
「次は、私からの勧誘を振り払った勇気ある勇の女神クロスサ、信仰数三万七千。下位神への任命で、元ジュカ軍事連邦の領土及びマヌエル山脈の南面を管轄域として認めます。因みに、私は諦めていないので、そこの所よろしく」
入口と中央の間くらいに座る、クロスサとアガタへの拍手はまばらで少ない。
一人と一柱は威厳たっぷりに佇み、遠く射られた極光の視線を受け流していた。これが新入りの迫力なのかと直近の神を慄かせ、睨みを利かせて明後日の方向へ向けさせている。
こっちの方が、私達らしいといえばらしい。
元々侵略で無理やり席を奪ったのだから、歓迎なんてされる方がおかしい。表立って敵対されないだけでもかなり上等だ。交流次第で、いくらでも良い関係を築いていける。
私とは違って。
「残りは一気に行きます。知の女神キサンディア、信仰数六万二千。繁栄の女神ヴィラ、信仰数五万八千。この二柱は中位神への任命ですが、同時に属神としての申請がありました。こんなおっぱいお化け共を手籠めにして、しかも成り上がりとかふざけているのかと思われている事でしょう。私も思います」
煽りたっぷりの口調と文句に、格闘技大会の選手紹介を思わせる。
面白がって、ヴィラが私の背中を押した。
ヒールらしく自己紹介して来いと席を立たせ、テラスの端で手を振らせる。向けられる負の感情が一層強まり、反感を持つであろう九割以上の神々が立ち上がって拳を上げた。
「生の神しなずち。信仰数八十一万六千。創造神ソウ、魔王神アイシュラ、暴神ドガ、死と安息の神アンダル、ついでに地球侵攻中の理の女神アルセアから推挙を受け、最初から上位神への任命です。管轄域は広すぎるからざっくり、マヌエル山脈から東西と北の海までの大体半分。隣接する連中はドガ以外手遅れなので、別の世界への渡界を勧めます」
『『『『『ざっけんなぁああああああああああああっ!』』』』』
議場全体を揺るがすほどの絶叫が木霊し、私は納得する以外出来る事はなかった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「あっはははっ! やっぱり来てよかったよ、ほんとっ!」
いつから居たのか、豪華なソファーを私達のテラスに持ち込んで座り、クリスマス時期に出回るノンアルコールのシャンパンで琥人が乾杯し始めた。
任命式の熱が冷めやらぬ中、会議自体はルエル神の強行的な進行で進んでいる。
主に私の任命に対する質疑応答が行われていて、神の資質を疑う声が七割、先住の中位神を差し置く不満が二割、管轄域が脅かされているどころか既に陥落寸前である事実に対してが一割だ。
いや、アンタらが悠長に過ぎるんだろう?
ナルグカ樹海で琥人に煽られて、勇国を攻めるまでは表立った侵攻はしていない。勇者や英雄の討伐隊に頼っていないで、危機感を持って自前で対処すれば信仰を奪われる事はなかったのだ。
まぁ私も、奪った信仰はヴィラに向いているものと思っていたから、偉そうな事は言えないんだが…………。
「女神軍の筆頭神とは聞いていたけど、上位神とは思わなかった」
「地球と違って絶対数が少ないから、信仰が五十万を超えたら上位神なんだ。中位神で十万越えは、ケイズとドガとアンダルだけ。抗議している連中は君から少しでも信仰を奪い取りたいみたいだけど、君の信仰は殆どが自主的な改宗ばっかりだからまず無理だよ。うん、無理無理」
「でも八十万って……そんなにやったかなぁ……?」
侵攻に当たって今までやった事を思い返し、信仰の数と突き合わせる。
最初はシムカの村から始め、近隣の村々を病から救って治水と豊穣に努めた。病で倒れていた行商人達を抱き込んで、表と裏の薬を様々な場所で捌かせて資金を作り、商会を開かせ売名もした。増えすぎた巫女達の生活費工面の為にブラックマーケットで実名参加もして、色々な国の貴族や権力者達とも仲良くなって…………。
あれ? そういえば、ヴィラの名前って表向きの救済と布教には出してるけど、裏社会関係は出してなかったんじゃないか?
裏稼業や密教系、邪教信仰系に流れて広がった? 見ればそれっぽい感じの腐敗神とか詐欺神とか商神とか、暗くて汚そうな連中がルエル神に向かっては極太のレーザーに焼かれている。
それが、帝国のエルフ族救済で一気に火が点いたのだとしたら?
在り得なくもない。ディプカントの神々は信徒を奴隷か何かと勘違いしている連中ばかり。信仰は要求するが自分達から与える事はなく、生活の質は低くまとまり、流行り病に呑まれて潰えかけた。
そんな所にわかりやすい救済の手が現れて、信仰と崇拝に至らないわけがない。
何だ。結局こいつらの自業自得じゃないか。
「なるべくしてなったか、運が良かったか……」
「きっと両方だよ。あ、見て見て! ルエルがブチ切れた!」
ドゥンッ!と、隕石を掴んで叩きつけたかの如き衝撃音と衝撃波が議場を揺るがした。
テラスを思いっきりぶっ叩いたらしく、ロリ女神の目の前の手すりが粉々に砕かれている。百メートルは離れているのに額の青筋がはっきりと見え、声を上げていた神々は臆し、さっきまでの勢いをひっこめていた。
「いい加減にしなさい! そもそも、信仰者達を導こうとしない貴方達の怠慢が現在の状況を作り上げているのです! 認めたくありませんが、しなずち神は信仰に足るだけの多くの命を導き、救っています! ダルバスのように神界でふんぞり返るだけの愚神でいたいなら、私の勇者達に討伐させますから前に出て名乗りを上げなさい!」
「ルエル。貴女の使徒達だけに仕事をさせるのは良くないわ」
「アイシュラは下がっていなさい! 存在意義すら怪しい連中に神罰の一つもくれてやります!」
「まだ最後の議題が残っているのよ。それを決めてからでも遅くない。というより、今正にぴったりの議題だと思うの。貴女が提案した事なのに忘れたの?」
「!」
アイシュラの言葉に、沸き上がっていたルエルの激怒が終わり際の噴水のように勢いを落とした。
僅かに燻る残り火をくゆらせ、ニヤリと笑って目配せをし合う。一瞬こちらとも目が合い、ろくでもない企みを察知して背筋を悪寒が駆け上がる。
何をするつもりだ?
いや、何をさせるつもりだ?
「すっかり忘れていました。この度、アルセアの渡界によってディプカントの管理・運営要員が不足しておりまして、特に優秀な神々を中枢に迎え入れようと考えたのです。勿論、ソウ様の許可も頂いています。そして、中枢に迎えるにあたり、その神には信仰数に関わらず上位神としての地位を差し上げます」
唐突な話に、議場全体がざわついた。
現在、上位神はルエル、アイシュラ、私の三柱だけ。信仰数五十万なんてそうそう稼げるわけがなく、誰でも至れる別の方法が新設された事実は無視できない。
しかし、場に熱狂はない。
ルエルは『優秀な神々』と言った。これは特別に機会を作って選定が為される事を意味している。既に決まっているなら任命式でやっている筈で、決まっていないからこその表現だからだ。
ならば、その方法は何だ?
無能の神に鉄槌を下そうとする女神の案。しかも気狂い創造神の許可も出ているとなると、もう嫌な予感以外当たる気がしない。
――――ルエルは片手を高く掲げ、指を一つ鳴らした。
「このチャンスを逃したら、特に下位の方々は上位になんて至れないでしょう。しっかりモノにしてここに足を着きなさい。私達の横に立ってみなさい。それが出来ればきっと、貴方か貴女は最高の神と讃えられる」
天井に巨大な光の板が生成され、ディプカント全土の地図が表示された。
様々な色や模様、マークで地域が区分されている。剣や鎧、炎、妖精、金槌等々が地域ごとに貼られ、私達の支配域は血色の蛇模様で埋め尽くされていた。
表されているのはおそらく、神々の管轄地。
こんなものを示されて優秀な者の選別なんて言われたら、何をさせられるのか深く考えるまでもない。
私はルエルとソウの顔を見比べた。
張り付いているのは悪だくみしか感じられない真っ黒な笑顔。狂気じみた瞳の色に怖気と恐怖が沸き上がり、咄嗟に巫女達の羽衣とリンクして警戒と注意を皆に伝える。
「ここに、神界再編『戦争』の開戦を宣言します」
休暇は取りやめだ、ちくしょう。
野球球場を思わせるドーム型の議場。
その一番奥の、点数プレートが設置されているであろう高さの辺りに四つのテラスがせり出している。一番高い一つにソウと尖兵の鬼巫女、一段下がってルエルと名乗った光を纏うロリ女神、その横に紫の女神アイシュラ、更に横に何度も間違っていないか確認した上で私達が座している。
おおよそ数千か万か、先住の神々を見下ろし、同時に多くの視線を向けられた。
嫉妬、羨望、興味、策謀に侮り、憤怒等々、向けられる感情が酷すぎて酷すぎる。きっとここは相応の地位にある神の席で、ぽっと出の私達が座るべき場所ではないのだろう。
何故、こんなことになった?
「まずは新入りの発表です。不幸にも魔の手先にされてしまった力の女神アーウェル、信仰数八万六千。中位神への任命で、ダルバス神聖王国改めジユウ国の全土と、周辺部族の生活領域を管轄域と認めます。ビッチ女神の玩具にされないように頑張ってください」
会場の中央近い場所で、付き添いのダイキに掲げられる赤の女神が称賛の拍手に囲まれる。
信仰数の程度がわからないが、力の弱そうな神々は総じて入口の辺りに集まっている。中位神との説明もあり、大体真ん中くらいの位階か。
にしても、拍手の規模が大きい割に、送り元の笑顔は殆どが引き攣っていた。
おそらく、後ろ盾となるアイシュラ神の威光が強すぎるのだと推測できる。誰が手を叩いて誰が叩いていないか、私達の席からは丸見えだ。目を付けられて不利を受けるのは皆嫌で、内心は歓迎なんてしていない。
その証左が次に見られる。
「次は、私からの勧誘を振り払った勇気ある勇の女神クロスサ、信仰数三万七千。下位神への任命で、元ジュカ軍事連邦の領土及びマヌエル山脈の南面を管轄域として認めます。因みに、私は諦めていないので、そこの所よろしく」
入口と中央の間くらいに座る、クロスサとアガタへの拍手はまばらで少ない。
一人と一柱は威厳たっぷりに佇み、遠く射られた極光の視線を受け流していた。これが新入りの迫力なのかと直近の神を慄かせ、睨みを利かせて明後日の方向へ向けさせている。
こっちの方が、私達らしいといえばらしい。
元々侵略で無理やり席を奪ったのだから、歓迎なんてされる方がおかしい。表立って敵対されないだけでもかなり上等だ。交流次第で、いくらでも良い関係を築いていける。
私とは違って。
「残りは一気に行きます。知の女神キサンディア、信仰数六万二千。繁栄の女神ヴィラ、信仰数五万八千。この二柱は中位神への任命ですが、同時に属神としての申請がありました。こんなおっぱいお化け共を手籠めにして、しかも成り上がりとかふざけているのかと思われている事でしょう。私も思います」
煽りたっぷりの口調と文句に、格闘技大会の選手紹介を思わせる。
面白がって、ヴィラが私の背中を押した。
ヒールらしく自己紹介して来いと席を立たせ、テラスの端で手を振らせる。向けられる負の感情が一層強まり、反感を持つであろう九割以上の神々が立ち上がって拳を上げた。
「生の神しなずち。信仰数八十一万六千。創造神ソウ、魔王神アイシュラ、暴神ドガ、死と安息の神アンダル、ついでに地球侵攻中の理の女神アルセアから推挙を受け、最初から上位神への任命です。管轄域は広すぎるからざっくり、マヌエル山脈から東西と北の海までの大体半分。隣接する連中はドガ以外手遅れなので、別の世界への渡界を勧めます」
『『『『『ざっけんなぁああああああああああああっ!』』』』』
議場全体を揺るがすほどの絶叫が木霊し、私は納得する以外出来る事はなかった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「あっはははっ! やっぱり来てよかったよ、ほんとっ!」
いつから居たのか、豪華なソファーを私達のテラスに持ち込んで座り、クリスマス時期に出回るノンアルコールのシャンパンで琥人が乾杯し始めた。
任命式の熱が冷めやらぬ中、会議自体はルエル神の強行的な進行で進んでいる。
主に私の任命に対する質疑応答が行われていて、神の資質を疑う声が七割、先住の中位神を差し置く不満が二割、管轄域が脅かされているどころか既に陥落寸前である事実に対してが一割だ。
いや、アンタらが悠長に過ぎるんだろう?
ナルグカ樹海で琥人に煽られて、勇国を攻めるまでは表立った侵攻はしていない。勇者や英雄の討伐隊に頼っていないで、危機感を持って自前で対処すれば信仰を奪われる事はなかったのだ。
まぁ私も、奪った信仰はヴィラに向いているものと思っていたから、偉そうな事は言えないんだが…………。
「女神軍の筆頭神とは聞いていたけど、上位神とは思わなかった」
「地球と違って絶対数が少ないから、信仰が五十万を超えたら上位神なんだ。中位神で十万越えは、ケイズとドガとアンダルだけ。抗議している連中は君から少しでも信仰を奪い取りたいみたいだけど、君の信仰は殆どが自主的な改宗ばっかりだからまず無理だよ。うん、無理無理」
「でも八十万って……そんなにやったかなぁ……?」
侵攻に当たって今までやった事を思い返し、信仰の数と突き合わせる。
最初はシムカの村から始め、近隣の村々を病から救って治水と豊穣に努めた。病で倒れていた行商人達を抱き込んで、表と裏の薬を様々な場所で捌かせて資金を作り、商会を開かせ売名もした。増えすぎた巫女達の生活費工面の為にブラックマーケットで実名参加もして、色々な国の貴族や権力者達とも仲良くなって…………。
あれ? そういえば、ヴィラの名前って表向きの救済と布教には出してるけど、裏社会関係は出してなかったんじゃないか?
裏稼業や密教系、邪教信仰系に流れて広がった? 見ればそれっぽい感じの腐敗神とか詐欺神とか商神とか、暗くて汚そうな連中がルエル神に向かっては極太のレーザーに焼かれている。
それが、帝国のエルフ族救済で一気に火が点いたのだとしたら?
在り得なくもない。ディプカントの神々は信徒を奴隷か何かと勘違いしている連中ばかり。信仰は要求するが自分達から与える事はなく、生活の質は低くまとまり、流行り病に呑まれて潰えかけた。
そんな所にわかりやすい救済の手が現れて、信仰と崇拝に至らないわけがない。
何だ。結局こいつらの自業自得じゃないか。
「なるべくしてなったか、運が良かったか……」
「きっと両方だよ。あ、見て見て! ルエルがブチ切れた!」
ドゥンッ!と、隕石を掴んで叩きつけたかの如き衝撃音と衝撃波が議場を揺るがした。
テラスを思いっきりぶっ叩いたらしく、ロリ女神の目の前の手すりが粉々に砕かれている。百メートルは離れているのに額の青筋がはっきりと見え、声を上げていた神々は臆し、さっきまでの勢いをひっこめていた。
「いい加減にしなさい! そもそも、信仰者達を導こうとしない貴方達の怠慢が現在の状況を作り上げているのです! 認めたくありませんが、しなずち神は信仰に足るだけの多くの命を導き、救っています! ダルバスのように神界でふんぞり返るだけの愚神でいたいなら、私の勇者達に討伐させますから前に出て名乗りを上げなさい!」
「ルエル。貴女の使徒達だけに仕事をさせるのは良くないわ」
「アイシュラは下がっていなさい! 存在意義すら怪しい連中に神罰の一つもくれてやります!」
「まだ最後の議題が残っているのよ。それを決めてからでも遅くない。というより、今正にぴったりの議題だと思うの。貴女が提案した事なのに忘れたの?」
「!」
アイシュラの言葉に、沸き上がっていたルエルの激怒が終わり際の噴水のように勢いを落とした。
僅かに燻る残り火をくゆらせ、ニヤリと笑って目配せをし合う。一瞬こちらとも目が合い、ろくでもない企みを察知して背筋を悪寒が駆け上がる。
何をするつもりだ?
いや、何をさせるつもりだ?
「すっかり忘れていました。この度、アルセアの渡界によってディプカントの管理・運営要員が不足しておりまして、特に優秀な神々を中枢に迎え入れようと考えたのです。勿論、ソウ様の許可も頂いています。そして、中枢に迎えるにあたり、その神には信仰数に関わらず上位神としての地位を差し上げます」
唐突な話に、議場全体がざわついた。
現在、上位神はルエル、アイシュラ、私の三柱だけ。信仰数五十万なんてそうそう稼げるわけがなく、誰でも至れる別の方法が新設された事実は無視できない。
しかし、場に熱狂はない。
ルエルは『優秀な神々』と言った。これは特別に機会を作って選定が為される事を意味している。既に決まっているなら任命式でやっている筈で、決まっていないからこその表現だからだ。
ならば、その方法は何だ?
無能の神に鉄槌を下そうとする女神の案。しかも気狂い創造神の許可も出ているとなると、もう嫌な予感以外当たる気がしない。
――――ルエルは片手を高く掲げ、指を一つ鳴らした。
「このチャンスを逃したら、特に下位の方々は上位になんて至れないでしょう。しっかりモノにしてここに足を着きなさい。私達の横に立ってみなさい。それが出来ればきっと、貴方か貴女は最高の神と讃えられる」
天井に巨大な光の板が生成され、ディプカント全土の地図が表示された。
様々な色や模様、マークで地域が区分されている。剣や鎧、炎、妖精、金槌等々が地域ごとに貼られ、私達の支配域は血色の蛇模様で埋め尽くされていた。
表されているのはおそらく、神々の管轄地。
こんなものを示されて優秀な者の選別なんて言われたら、何をさせられるのか深く考えるまでもない。
私はルエルとソウの顔を見比べた。
張り付いているのは悪だくみしか感じられない真っ黒な笑顔。狂気じみた瞳の色に怖気と恐怖が沸き上がり、咄嗟に巫女達の羽衣とリンクして警戒と注意を皆に伝える。
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