しなずち ~転生触手妖怪 異世界侵略風味、褐色爆乳女神と現地収穫の巫女衆を添えて~

花祭 真夏

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第47話 少年と小鼠、娼館に行く

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 日が暮れ、夜も更けた頃、壁一つ越えたパルンガドルンガの通りでは至る所で火が焚かれていた。

 風紀が行き届いた通常の都市と違い、盗賊の都の夜は乱れている。性に、暴力に、金に、酒に。あらゆる悪徳が顔を出し、眺め歩くのはなかなかに楽しい。

 金にモノを言わせて他人の女を寝取る腹太の男。

 横取りされた酒に火をつけて盗人を焼く老婆。

 暗がりに誘って持ち金を奪う薄布の女。

 そんな中、幼い少年と小柄な小鼠族の組み合わせはどう映るのか?


「おやおや……お前さん達に夜の街は刺激が強いじゃろう。攫われる前に宿にお帰り」

「お心遣いありがとうございます。攫われない為にはどの道を行けば良いですか?」


 周りから気付かれないよう、忠告をくれた御仁にそっと銀貨を渡す。


「礼儀正しい子じゃの。暗い道は行かぬことじゃ」

「わかりました。それと、私からも一つ。蛇に気を付けて。近寄ってはいけません」

「蛇……?」


 私はそれだけ伝えるとその場を離れた。

 不思議そうな顔でキュエレが横に付く。

 同じ方向に同じ速度で歩きながら、慎重にこちらを窺ってきた。


「しなぢゅち様、蛇って?」

「目印だよ。これからたくさんばらまく。まずはあそこから」


 そう言って、大きめの館を指差す。

 『傷の花園』と看板を掲げるそこは、身体のどこかに大きな傷跡を持つ娼婦ばかりが集まる娼館だ。

 酔客達の話だと、料金が安く、技術に優れ、客を選ばない穴場だという。その分、乱暴な客が多く、治療費ばかりかかって用心棒を雇う金がない。

 むしゃくしゃしたら傷の花園、と歪んだ笑みを浮かべていた。

 いけない事だ。そんな場所があると、悪い妖怪に悪用されてしまうというのに。


「ヂュ!?」

「キュエレは初めて? 軍資金はたんまり集まったから楽しんでみる?」

「ヂュヂュ!? しなぢゅち様、そんなお金どこで稼いだでチュ!?」


 金貨が詰まった財布袋を五つ見せると、キュエレは大きな目を見開いて驚いて見せた。

 中から三枚を渡してやり、ニヤリと悪い笑みを見せ付ける。


「私の故郷に、郷に入りては郷に従えって言葉があってね。盗賊っぽい事をやってみたんだ」

「ぢゅっと一緒に歩いてまちたよね!?」

「外見と動作はいくらでも偽れるからね。こんな風に」


 片手を十又の触手に崩し、伸ばしたり縮めたりして見せる。

 昼間からずっと、すれ違う連中から少しずつスリ取っていた。十分な量を集めるのに夜までかかり、これでようやっと動く事が出来る。

 キュエレを連れて館の門に立ち、客引きをする片腕の女性にお代を渡す。

 女性は私達の外見の幼さに驚きを見せるが、客と分かると手を引いて中に招き入れてくれた。共に白い石造りの玄関をくぐり、掃除の行き届いた館へ堂々と入る。

 簡素な蝋燭の程よい明かりが、廊下に並ぶ嬢達の妖しさといやらしさを引き立たせる。

 暗がりに紛れる肢体には、聞いた通りに様々な傷が刻まれていた。

 腕や足の欠損。四肢や胴体、顔に傷痕や火傷痕。四肢が全て無い娘もおり、キュエレは泣きそうになりながら正視できないで目を覆っている。

 私は、じっくりと全員を舐り眺めた。

 良い。実に良い。

 傷の全てが彼女達の美しさを損なわせず、魅力的な雌を際立たせている。

 個人的に、傷とはその人そのものだと思っている。傷一つ一つは生の証。まっさらな綺麗な肌も素敵だが、生きる中で得た傷は別種の美しさを孕んでいる。

 その点、この娼館の嬢達は全員が上玉だ。

 どうにかして巫女に加え入れられないかと本気で悩む。しかし、今はキュエレの兄弟達の方が優先。


「全員朝まで貸し切りたいんだけど」

「そんなこと言って大丈夫? お金もあっちも全然足らないんじゃない?」

「嬢は二十三人で、一晩一人金貨三枚、貸しきり料金と合わせて金貨八十枚でどう?」


 金貨袋を一つ丸ごと渡す。

 重さから持ち切れない――――と思いきや、女性は軽々受け取ると受付のカウンター台に置き、中身を確認し始めた。

 学はあるらしく、五枚単位で総額を数えている。きっちり八十枚ある事を確認し、カウンター奥の部屋に向かって大きな声で呼びかける。


「姐さん! 上客だよ! あねさーん!」

「うるっさいよ、リタ! こちとら両足が無いんだからそっちから来な!」

「だって。二人とも、ついておいで」


 リタと呼ばれた女性はカウンターに手を着き、ヒョイッと軽々跳び越えた。

 薄く際どい下着の隙間から色々見えてしまい、耐性のないキュエレは目隠しを強める。

 私と一緒にいるともっといかがわしい状況に陥るというのに……やはり、今夜しっかり教育しておく方が良いか。

 それと、あのリタという女性。

 表面上は女性の柔らかで滑らかな肉質をしていながら、大の男性でも持つのに苦労する満杯の金貨袋を片手で持っていた。

 軽やかな身のこなしといい、ただの娼婦では在り得ない。魔獣狩りか軍人崩れか、隻腕という不利があっても、この辺りの盗賊が束になっても敵わないだろう。

 やっぱり巫女にしようかな?


「ほら、跳んで跳んで」

「キュエレ、行くよ」

「チュゥゥゥ…………」

「仕方ないか。ちょっと失礼」


 目隠しを取らないキュエレを持ち上げ、肩車してカウンターを跳び越える。

 しっかりとした白石の床は二人分の重さをしっかり支え、着地の際にふらつく事はなかった。ただ、着地の衝撃でキュエレのお腹に私の頭が刺さってしまい、『ヂュエッ!?』という叫びが漏れて出でる。

 勢いで目隠しが取れ、リタの豊かな双丘がキュエレの目の前に現れる。

 断末魔のような叫びが聞こえたかと思うと、頭の上に乗る筋肉という筋肉が弛緩して、ずっしりとした重さに変わり果てた。そして、赤い滴りが上から落ち、白い床を小さく汚す。

 白一面に赤の痕とはよくわかっている。

 これで気を失っていなければ合格点なんだけど…………。


「大丈夫?」

「何処かに寝かせてもらえない?」

「任せて。テイラ、ミーシャ、この子をよろしく。朝までに起きたらやっちゃって良いわよ?」

「小鼠族って初めてー」

「滅茶苦茶回数するって話だよ?」


 リタに呼ばれた少女二人が、私からキュエレを受け取ると脇に体を入れて運んでいく。

 慣れたもので、自分達とほぼ同等の重さを二人でしっかり支えていた。肩の高さを水平に取って重量バランスも取っており、やはり、どこか軍人然とした雰囲気を強く感じさせる。

 ふと、ミーシャと呼ばれた少女の片割れが、だらしなく舌を出して二本指を出し入れして見せた。

 露骨な誘いに三本指を示して見せ、金貨を一枚投げ渡す。何を意図するかは互いに大体わかり、ミーシャは宙で受け取ると、内股を三本指で撫ぜて廊下の奥へと消えていった。

 次いで、私の頭にリタの美乳が乗せられる。

 柔らかな中に弾力と張りが強く潜む、女戦士特有の肉付き。似た身体のシムナより雌の層は控えめなれど、そっと撫ぜた腹部と太腿の締まりから彼女の極上を予想できる。

 元々、私はこういう研ぎ澄まされた、とびっきりの女が大好物なのだ。

 愛撫に近いリタの手付きを頬から鎖骨にかけて受け、そっと手を取って指を交わす。力尽くではなく確かめ合う加減で握って握り、互いの雄と雌を昂らせて伝え合う。


「ん……扱いが上手いのね。今夜だけじゃなく、明日の朝一番も吸い尽くされるかも?」

「寝かせてくれるなんて優しいんだね。全員孕むくらい、お腹いっぱいにしてあげるつもりなんだけど?」

「ハハッ、そりゃ大変だ。姐さんにも手伝ってもらわないと」

「そんなら早く入ってきな。いつまで待たせるんだい?」


 部屋の中から若く、張りと勢いのある声が飛ぶ。

 私達は絡み合いながら部屋に入り、大きなベッドに腰掛ける黒髪の美女と対面した。

 古傷だらけの美女だ。

 顔の左の斬痕と潰れた目を眼帯で覆う以外、一切を隠さない露わな姿。ツンと上に向いた二つの大きな膨らみ、鍛え磨かれた筋肉質な肢体、後ろで纏められた長い黒髪、腿で切断された両の脚、全身に刻まれた斬り突き抉りの傷痕の数々。

 生命の、美。

 人生の、美。

 見惚れていた私は言葉を発せず、思わず両腕の人型を解いて彼女を襲った。

 数十の触手を差し向け、ベッド下から取り出された槍に弾かれ断たれ裂かれて散る。しかし、その程度では私の欲を潰せはしない。

 私を止めようとリタが首を絞める。

 外見にまんまと騙されたか。首どころか全身の結合を解して液状に変え、リタの背後に回ってベッドに向かって突き飛ばす。古傷の美女も同僚を貫くわけにはいかず、足が無いから避けもできずに真正面から受け止めた。

 全裸の美女と半裸の美女。

 二人合わせて無事に済ますは男じゃない。奪い奪われるのが盗賊の都なら、この二人の全てを我が物にするのが正道と言えよう。

 触手の二十本で衣服を剥き、四肢を巻き、腕も股も開かせて湿った茂みを露わに晒す。

 処女なら自分のモノで最初に貫くが、彼女達は娼婦だ。膣に三本から始めてアナルも口も尿道も犯し、本来母乳を出す両胸の先端から私を注いで大きく大きく盛って盛ろう。

 おそらくは、快楽の行き過ぎで死の境を往復してしまうだろう。その内に夢と現がわからなくなって常識の枷が外れて消え、そしたら押し倒して解れた雌穴をたっぷりじゅっぷりどっぷり楽しむ。

 何度も、何度も、何度も、何度も、虚ろな意識を私で染める。

 さぁ、始めよう。

 啼いた分だけ突き上げて、啼いた分だけ奥を擦って、啼いた分だけぐりぐり押し付けて、啼いた分だけ愛の素を注いであげる。

 まずはそのキツイ目つきを柔らかくさせて――――?


「…………シムナ?」


 愛する巫女の面影に気付いて、私は簒奪の手を思わず止めた。
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