しなずち ~転生触手妖怪 異世界侵略風味、褐色爆乳女神と現地収穫の巫女衆を添えて~

花祭 真夏

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第35話 旅路

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 普通の足で一か月かかる道のりを数十倍の速度で駆けたらどうなるのか。

 単純に考えれば、一日か半日かで到着する。しかし、それはあくまで単純な話。

 走る時間、経路、食料と水の補給、休息や睡眠を考慮していない。旅とは道程に関わる諸々を計算に含める必要性があり、場合によっては長くもなれば、時によっては短くもなる。

 では、第四軍最速のヒュレインの脚ならどうか?

 勇者時代に培った風魔術を駆使して、空すら駆ける俊足の人馬。遮れるものは無く、魔獣の襲撃は置き去りにし、ほぼ直線距離を最高速度でずっとひたすら踏破出来る。

 結果――――


「はい、とうちゃーく!」


 たったの二時間で辿り着いた。

 最高速から急ブレーキをかけ、ヒュレインの蹄は大地に擦過傷を刻み付ける。背に乗る私は慣性のままに押し潰され、後ろのアシィナに圧迫もされて、柔らかさと柔らかさの心地良いプレスを堪能する。

 二人の生乳で挟まれる奉仕とは違う、不可抗力の事故的快楽。

 例えるなら、一人を組み敷いて昇天させた所に、後ろからもう一人に抱き乗られる感覚。下の娘を味わっている最中だから身動きが出来ず、上に被さる娘の攻めを一方的に受けなければならない不自由に似ていた。

 三日前の夜伽を思い出し、ほんの少し欲求不満が溜まる。

 だが、舞い上がった土埃の向こう。辛うじて見える頭上の光景に気付くと、私の心から燻りは消えた。ユーリカ達の森より遥かに高い巨木の群れ。あちらが樹齢数百年としたら、こちらは千年に近いのではないだろうか。幹も枝も、太さと皺の見事さがまるで違う。

 周囲が晴れ、全容が明らかになると感嘆の息が漏れた。

 自然だ。

 高い山から広範囲を見渡して感じる大自然ではない。入口で全体の一部しか見れていないのに、奥まで続くであろう生命の連なりの雄大さが目に浮かんで圧倒してくる。

 一歩間違えば呑まれかねないような、深淵とした奥深さ。

 恐怖すら孕む魅力を前に、胸が高鳴り魂が震えた。


「良い……」

「しなずち様って、こういう所好きですよねぇ。私は得体の知れない怖さがあるからあんまり好きじゃないかも……」


 引きつった笑顔を浮かべ、ヒュレインは森の中に歩を進めた。

 草原を駆けるケンタウロス族からすれば、こういう場は視界も足場も制限されて窮屈に感じるのだろう。

 一本一本の幹が家一軒程の太さがあり、木々の間が大街道のように広くともそう。何かあった時に咄嗟に動く事が難しく、ついつい苦手意識を感じてしまう。

 私はヒュレインの人型の腹部を擦り、安心するよう促した。

 さっきまでのゆったりした歩みが、ステップ交じりの小走りに変わる。この程度のスキンシップで上機嫌になるなんて、ちょろ過ぎはしないだろうかと心配なくらいだ。

 でも、この娘はこういう所が特に可愛いらしい。

 私を求める頻度も圧も、巫女の中では一・二を争う。それでいて焦らしても不機嫌にならず、私が相手をするまでずっとずっとずっと媚び続ける。

 まるで、主人を求める子犬のよう。

 この娘の場合は『性的に』の注釈が付くけれども。


「にしても、一番近い人型は随分遠いな。匂いは十分にわかるけど、熱は小さくて凄く弱い」

「森というより樹海だから。ギュンドラ王国の北部三領を合わせたくらい広いのに、その中に暮らすのはダークハイエルフ五百とハイエルフ六百だけ。里の位置を知ってるか住民を感知出来ないと接触すら難しいのよね。往診が辛くって辛いったらもう…………」


 昔を思い出したらしく、後ろのアシィナがため息を漏らした。

 巫女となる前、彼女は病と薬を求めて流離う医者だった。

 医聖アシィナ・リサイアと言えば、かなりの僻地でも名が通り、一部には現人神として信仰すらされている。この樹海まで行動範囲に含まれていたのには驚きだが、彼女のある種の熱狂さと熱心さを考えると納得できなくもない。

 病を治し、傷を癒し、土地を肥えさせる魔物の血。

 シムカの村を流行り病から救った後にそんな噂が流れ、私を探し当てた彼女は自分自身を差し出してまで求めた。彼女でも治せない患者達の為に身も心も晒し、対価に得た私の血を使って治療薬を作り続けた。

 その効力は凄まじいの一言。

 数十もの新薬が数ヶ月の間に生み出され、一人も治せない病人はなく、一人も癒せない怪我人はなく、一つも富まない土地はなかった。大勢の感謝が私達に集まり、病の拡散防止に国が行った隔離政策も影響して、嫌気が差した施政者達は第四軍の軍門に下った。

 然程の労もせず、勝手に進んでいく侵攻と信仰の広がり。

 最初から途中を過ぎて最後まで、たった一人のたった一つの意志がここまでの結果を生み出す物なのか。尊敬と同時に恋慕が生まれ、私は医療部隊『白巫女衆』の巫女頭と眷属の座をアシィナに与えた。

 シムカを右腕とするなら左腕に値し、今回の同行指名にも影響している。

 でも、有能過ぎて割と頭が上がらないから、今回の侵攻で少しでも株を上げとかないと――――?


「しなずち様、どうかした?」

「魔脈がおかしい。ヒュレイン、止まってくれ」

「ぇ~!? 降りちゃうの~!?」

「口が寂しいなぁ。ヒュレインは前を向いてないとだし……アシィナ、しよっか」

「は~い、止まりまーす! あっ、あそこなんて良いかも!」


 地面から捲り上がった根で地面が持ち上がり、洞穴のようになった場所をヒュレインが示す。

 良い選択だ。木の根はただ広がるわけではなく、大地の脈に沿って向きを変え、行き先を決める。魔脈だけでなく、地脈と水脈も診れる絶好地と言える。

 出入り口が一方のみで、周囲から身を隠しやすいのも高評価だ。周囲の状況がわからない以上、開けた場所より安全に調査がしやすい。

 ヒュレインに指示して洞穴に入り、地面に降りると魔脈の流動がしっかり感じられた。

 ご褒美に手を広げて招き、頭を抱いて口づけを交わす。

 満足はしても発情しないように加減するのが難しい。深くねっとり舌は絡ませ、歯茎や舌の根元は刺激しない。じっくり一分ほどして唇を離し、満ち足りた笑顔の額に軽いキスを最後に残す。

 顔を離すと、すぐ横にアシィナの顔があった。

 縦に長い瞳孔が更に細くなり、期待した眼差しを私に向けている。


「私には?」

「欲しい?」

「欲しい!」


 両手で頭を押さえられ、無理やり唇を奪われる。

 ムードも何もない、貪るような激しさ。嫉妬と嫉妬を嫉妬で挟んで寂しさで包んだような味わいが、狂おしい程の愛しさを私の口内に注ぎ込む。

 全部受け止めようと細い首に腕を回すと、苔に覆われた地面に押し倒された。

 アシィナは唇を離し、羽衣の前を開ける。

 サラシが解かれ、豊満と豊満を重ねたような乳房がばるんっとこぼれて大きく跳ねる。碌な愛撫もないのに乳首がビンビンに張っていて、更に自分で抓り擦って先から白の滴りを漏らし伝わせた。


「うん、やっぱり無理。ヒュレイン、予定通りやるわよ」

「アシィナ?」

「巫女を連れて外に出るなら気を付けないとね。社だと大体十人くらいで、でしょ? 行く先々で巫女を増やすし、少人数でしたければ出た直後くらいしか機会がないのよね」

「アシィナ様、土魔術で出入り口塞いでそれっぽく偽装しました! 音が漏れないように風の精霊さんも協力してくれるそうです!」

「え? あ、ちょっ――――!」


 抗議しようとして、顔を二つ乳の谷底に落とされて口を塞がれる。

 乱暴に服を引き裂かれ、露わになった肌に二人の唾液をかけられ塗られた。私をその気にさせる彼女達の雌成分が一気に浸透し、子種の生産が活発化して固く大きくそそり立つ。

 調査を優先したいのに、跨られて押さえつけられて抵抗できない。

 体を崩そうにも、アシィナが眷属の力で人型を解かせてくれなかった。鼓膜に染みるくちゅっという音が手遅れを伝え、あぁ、もう搾られるしかないのかと、心が諦めて快楽を受け入れる。

 雄の権化をゆっくり包み呑み込む、柔らかで温かく、狭くて滑った蜜の壺。

 一回目の上下で下半身の神経が震え、二回目で腹から首下まで跳ね回る。三回目ともなると髪の先までが渇いて欲し、自由を求めて生殖触手を背中から生やす。

 今回は十三本。

 私のモノを長く伸ばしたようなそれらでアシィナの四肢を巻き、持ち上げて落として打ち付ける。その度に甲高い悲鳴が小さく上がり、何回目かで二本の先が熱い湿りに吸い付かれた。

 アシィナと、待ちきれないヒュレインの口が淫靡な音を立てて誘う。


「あはっ。シムカより先に欲しいなぁ~」

「その次は私ですよぉ~?」

「ヴィラ、助けて…………」


 快楽で白む意識の中、私は愛する恋人に助けを求める。

 だが、返ってきた言葉は『帰ったら三日』だ。助ける所か独占日を要求され、ユーリカの時といい、自分でどうにかするしかないのか……。

 ある種の絶望を胸に、私は幸せの肉音と水音を子守唄に身を委ねた。
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