しなずち ~転生触手妖怪 異世界侵略風味、褐色爆乳女神と現地収穫の巫女衆を添えて~

花祭 真夏

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第24話 都合の良い休戦の知らせ

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 ピロンッ、という軽い音が頭の中で鳴り、俺は気怠い身体を起こそうとして起きられなかった。

 理由は簡単だ。

 もう何日目になるかわからないが、成人直後の魅惑の褐色が俺に跨り、下の口で咥え込んで一向に離してくれないから。

 数日前にアーカンソーから『お前が助けろ』と大きな卵を渡され、部屋に持って帰ったのは覚えている。そこから先の記憶は酷く曖昧で、気付けば、目の前で褐色の割れ目が奈落の入り口をパクパク開いて閉じてを繰り返していた。

 慣れた手つきで服を捲られ、腕を縛られ、ズボンも下着も脱がされて舌と唇が舐め呑みしゃぶる。

 テクも何もない性欲の粘着は酷く拙く、場末の娼婦にすら酷く劣る。なのに、今までに抱いたどの女よりも魂が満たされ、思わず獣のような叫びをあげてしまった。

 数百年前の声色で、切ない、欲しいとねだる彼女。

 抑え込んでいた恋慕と熱情に火が点き、俺は拘束を引き千切ってうつ伏せに押し倒した。前戯を忘れて狭い膣道にねじ込み抉じ開け、入口から最奥までを何度も何度も何度も貫く。

 抜かずの五連戦で、俺も彼女もぐちゃぐちゃに果てた。

 そのまま寄り添い寝入って目が覚めて、肉のぶつかり合う音を前に夢の現実は終わりを告げない。俺を下にして愛しい褐色美女は腰と尻を上下させ、情欲と性欲に塗れた瞳でもっともっとと訴えかける。挿入前の口技で搾っただろう粘液を口端から垂らし、そういえば一回サキュバスの娼婦とやった時がこんな感じだったなぁ――――なんて思い出して、思考と意識だけが置かれている状況を理解した。

 うん、図られた。

 彼女を寄越してきたしなずちとかいう男は、これが狙いだったのだ。

 『幸せに』とか何とかは理由の一つにすぎず、俺が国を運営できないくらい、彼女との子作りに励ませる。その間は現場任せで疎かになって、隙を見てクルングルームとアギラを落とす算段だろう。

 策としては穴だらけだ。

 俺だって、伊達に五百年も転生を繰り返して女を抱き続けていない。本気のテクで失神させればいくらでも時間は作れる。問題は、彼女の回復力がやけに高く、たったの数分でまたベッドに磔にされる事だった。

 絶対、絶対に強化されてるよな?

 強化してるよな?

 アーカンソーの浄化で打ち消されない単純な身体能力の強化とか、性欲の増強とか、ああもう完全に理解したわ。

 あのしなずちっていうの、すっごく性格が悪い。

 事実は事実なんだけど、正確には正確なんだけど、相手が求める肝心な部分もちゃんと伝えるけど、決定的に重大な問題を隠して笑う。

 絶対笑ってる。

 絶対。


「ギンタぁ? どうしたの? 気持ち良くない?」

「ううん。気持ち良いよ、ミュウ。ちょっと通知が来ただけだよ」

「何だぁ。じゃあ、後にしてシヨ? ね?」

「同意したいけど、ちょっと寝てて」


 右手を左乳首の先の先、左手をクリの心持ち右下、膣壁に擦られる肉竿を子宮入り口に添え、同時に強烈に刺激する。

 『ヒグゥッ!』と男を猛らせる悲鳴を上げ、盛大に潮を噴いてミュウの身体が大きく跳ねた。以前よりずっと大きなHカップのふくらみが胸を基点に大きくバウンドし、後ろに倒れて咥え込んでいたモノを名残惜しく解放する。

 俺はミュウの両手を適当な布で縛り、宙をサッと左手で払った。

 光の板が虚空に浮かび、イベントを示す画面右上のアテンションマークに指で触れる。板に表示される項目が切り替わり、新規イベントを先頭に今までのイベント一覧がリストで表示された。

 迷わず新規に指を触れ、開かれた内容を確認する。


「――――え? マジ?」

『どうした、ギンタ? ようやく終わったか?』


 この場にいない筈のアーカンソーの声が頭に響く。

 これも隠されていたのだが、アーカンソーは俺達の幸せを補助する契約を結ばされ、一定期間確認が取れないと気になって集中できなくさせられている。

 戦闘を回避する為の策として仕込んだのだろう。

 しかし、それでは俺達も色々都合が悪いので、今朝、俺の近況ログを確認できる『王の監視者』に設定した。

 これなら戦場に出ても幸せかどうか確認が出来る。契約も破っていないからしなずちの思惑を外せ、してやった感からすこぶる良い気分だった。

 直後にグランフォート皇国の陥落とダルバス神聖王国の宣戦布告の情報が来て、アーカンソーを南に送る羽目になって最悪な気分にされたのだが……。

 まあいい。それよりイベントの内容だ。


「ミュウの方はまだだけど、女神軍関連のイベントが来た。『休戦交渉』って、どう思う?」

『都合が良すぎるが、幾らお前でも南北の戦争とミュウとの幸福追求は同時に出来まい。内容次第だが、検討する価値はあるな』

「だよねぇ…………でも神と交渉か……」


 正直な所、神には関わりたくない。

 俺もミュウもアーカンソーも昔の仲間達も全員含め、前世で神々の戦争に巻き込まれて命を落とした。

 戦場に荒れ狂う神の力で正常な輪廻転生に戻れず、前世の記憶や特殊な能力を魂に付与され、今世を迎えたのだ。

 それは、ゲームや小説のような理想的なものではない。

 生まれ直した先は価値観が違う。意識が違う。優先順位が異なるし、思想も異なる。更にはファンタジー世界の村や町は閉じたコミュニティであることが多く、記憶持ちの転生者達はそこで殆どが躓いた。

 多少馴染めても、僅かながら決定的な違いを要因として迫害され、異端認定される事もある。

 ミュウのように神童と扱われる例もあるにはあったが、殆どは魔女や異端信仰者に仕立て上げられて不遇の生を終えていった。

 俺には、それが耐えられなかった。

 有力貴族の一人息子として転生し、生まれた時から意識があり、管理遊戯者の能力に目覚めていた。領内の全ての出来事を認識でき、成長するまでの数年間で何人もの孤独な死を見送ってきた。

 そんなの、間違ってる。

 七歳になり、多少の遠出が出来るようになって、俺はすぐ行動に移った。

 山を三つ越えた『聖竜の峰』にいるというホーリードラゴン――――アーカンソーの棲み処に赴き、世界と神々の不条理を訴えた。管理遊戯者の能力のおかげで、アーカンソーも転生者と分かっていたからからな。

 そこが始まりとなり、数々の戦いを経て王国を建国し、数百年が経った。

 千人もの転生者が国内で生まれ、共に生き、共に戦い、共に語らって笑い合って、幾度も終わりまでを見送った。

 これからもそうだ。

 転生者の安息として、この国の番人として、より多くの魂を救い、その果てに眠る。

 それが、俺の役目。

 だから、神になんて関わりたくない。


『しなずちという尖兵と話した時の事だが、家族という言葉が妙に耳に残った。その辺を突けば活路はあるかもしれん』

「それは交渉者が野郎の場合だけだろ?」

『そうだな。だが、向こうは一枚岩ではあるまい。揺さぶり、囲い、宥め、脅す。この五百年でお前が担当してきた事だ。自信を持て』

「ハハッ、確かにそうだ」


 俺は両手を広げて苦笑した。

 綺麗事だけで国は纏められない。

 汚い事も率先してやらないといけない。

 出来なければ唐突に滅びる。

 最初は慣れたくないと思っていたが、今ではいつもの茶飯事だ。今回は難易度が高く、最悪の事態になる可能性が極端に高いだけ。

 でも、だからこそ、俺はやらないといけない。


「やってやるさ」


 眠るミュウに口づけ、俺は誓った。

 もう二度と離したりなんかしない。

 離されたりもしない。

 絶対に。
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