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第一部

第十一話 多勢に無勢

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 科学と魔術が共に発展し、絶対的な『最強』は過去にしかない。

 自分の適性と見合った装備と、戦技戦術戦略で戦いは進められる。修練鍛錬の途中ではなく、整合しない戦法なら3流以下。得意を知って不得意を知って、得手を鍛え不得手を埋める。

 ――――身体が小さく非力な僕は、身体強化と空間魔術を選んだ。

 修得途中の幾つかもあるが、今の1番はこの2つ。特に乱戦、特に市街戦、塹壕戦に電撃戦にその他色々を切り抜け現在。左舷下に傾く甲板で両足を着き、軽量取り回し重視のサブマシンガンからマガジンを抜く。

 32発装填のロングマガジン。

 ジャケットに差した6本も含め、今回はどのくらい必要になるのか?


「目標、エンディグレル工房塔から半径100メートル円周上6点。弾種、音響炸裂弾」

『装填完了』

「発射」


 甲板左舷に取り付けられた小型砲塔3門から、重く響く砲撃音が合計6回薄霧の虚空へ。

 狙撃に比べればゆっくりと弧を描き、折れた塔の周囲6方向に光跡を伸ばす。地上から撃ち落そうと対空射撃が始まり、4か所の射撃点を確認できた。魔術で視力を強化すると更によく見え、ドワーフとサイクロプスの部隊が複数展開している。

 一つが撃ち落され、耳を劈く暴音をかき鳴らす。

 地上に届いたであろう頃合いを見て、僕は空間をずらして地上へ歩いた。


「ほぼ全員男? となると、女子供は別途隠れてるのかな?」

「お、おいっ、だれかっ! へんじをしてくれ!」

「くそっ、耳がっ!」

「はい、バイバイ」


 軽い軽いパタタッで3つ、髭面のドワーフが血の花を咲かして倒れ伏す。

 一時的に聴覚を麻痺させる音響炸裂弾に、音が過ぎ去った直後現地入りする空間転移。急襲でありながら足音が聞こえず、混乱もあって気配を感じ取れない無防備は容易だ。視線を流して男は射殺し、一人いた女は両脚を撃って行動を封じた。

 あと3箇所。

 時間の猶予は、おおよそ2分から3分。


「次」


 空間の断層に飛び込んで、ズレた本来の座標へ出る。

 大きな通りの中央に、塔を背にした土嚢陣地が組まれていた。

 こちらは全員サイクロプスで、耳を押さえて涙を流し蹲る。傍らに落ちるセミオートアサルトライフルから、砲弾を落としたのはココの誰かだろう。単眼族の狙撃適正は二流三流でも、動く目標を的確狂い無く撃ち抜いて見せる。

 しかし、ならば、なんで最初の狙撃にAS弾なんて使わせた?

 面子を考えれば、アレも間違いなくサイクロプスの射手だ。でも、単眼は縦横2次元の1点狙いに秀でても、奥行を含めた3次元を把握しきれない。おそらくちゃんと撃ち抜いた弾は幾つもあって、全部船体を透過してから術式が切れていた…………。

 これだから、適材適所を知らない輩はっ。


「くっそっ、一体なんなんだっ!?」

「気付けない内にバイバイ。来世は頑張って」

「アッ」


 僕を視界に入れた大目玉に2発をくれて、他のは頭の横から3発ずつ。

 念のため塹壕向こうをクリアリングし、他の呻きが聞こえないのを確認したら3か所目に移った。だが、こちらは砲弾が直撃したらしく全員絶命していて、4か所目も最初から生存者無し。仕方なく1か所目まで急いで戻り、生き残りの女ドワーフを鋼線ワイヤーで締めあげる。

 身長は僕より小さい、130以上140未満。

 やや太めの四肢は筋骨隆々が良く似合い、浮き上がったエイトパックの上には上向き爆乳が素晴らしい。戦時即応で出てきたらしく、チューブトップにスパッツという薄着が何ともそそる。しかも端が捲れた下は真っ白と褐色が境を作り、日焼けのコントラストが女の魅力を何倍にも何倍にも。

 ――――短く揃えた赤髪を掴んで押し倒し、収納ポーチから1つ取り出す。

 丸く黄金に輝く小さな輪。

 びっしり魔術式が刻まれたソレは、暴れて手が付けられない奴隷用に開発された拘束具。強制的に主従契約を行い、主に対して絶対服従。自意識を失わせ朦朧とさせ、主の命なら酒場でストリップも平気で見せる。

 ただし、コレは僕の専用特注。

 空間魔術を使わないと、付けも外せもしない最低最高の逸品だ。


「な、に、しやが、るっ!?」

「わからない内に手遅れにするのって、とっても興奮するっ。詳しくは首輪から情報引き出してねっ。終わったら帰りの停泊地でたっぷり可愛がってあげるよっ」

「くそっ! くそっ、くそっくそっくそがぁあああああああああああああっ!」

「はぁ~い、バイバイっ。そして初めまして、これからよろしくっ」


 彼女の首の真ん中が消え、ぽっかり空いた隙間に金の輪を通す。

 大分余りが出ているものの、まるでネックレスのように鎖骨の上に。抜けた首の間が元に戻れば、着用者の魔力を魔術式に走らせ効果を起動。汚い言葉を叫ぶ声が苦悶と共に小さくなり、押し付けに抵抗する力も弱く果てて脱力舌出し。

 覗き込んだ顔は虚ろで、瞳もまた焦点が合っていない。


「それじゃ、聴力が戻るまでそこらのお家で休もっかっ。傷も治して装備も整えて、そしたらお名前と所属と本拠地と目的と…………ベッドの上で全部曝け出してねっ」

「………………」


 ひょいっと担ぐ僕に悪態をつかず、言われるがままされるがままの美体は媚体。

 こういうたまの上物が、自分に対する最大のご褒美。思う存分楽しんで、思う存分使い潰す。そして全部を喰らいつくして奪いつくして、もっともっともっともっと。

 ――――彼女は一体、何を持っているのだろう?

 場合によっては、ヴィナの支払いのあては無くなるのかな?

 …………楽しみだなぁ……っ。
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