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第一部
第三話 パーティ
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「へっ、デカい獲物だぜ!」
10km以上先行するソレを下車口から臨み、武者震いする一人が歓喜を口にする。
ドミディナ共和国が誇る武装輸送列車『タウラナ・マシュア』。
幅30m、全長100mの3階建て車両を3つ繋げ、屋上に20mm対空砲台が合計20門。乗員は武闘派の軍属が多く、両サイドからの襲撃を固定砲座無しでも対処可能。浮沈戦艦ならぬ無敗列車と評価は高く、割に合わないと盗賊達からは忌み嫌われる。
しかし、決して弱点がないわけではない。
その一点に、強盗列車は真っ直ぐ突っ込む。
『接触まで30秒。総員、対ショック姿勢』
「おいおいおいおいっ! 何する気だっ!?」
「口閉じてないと舌噛むよ、グロウバルン。あと、このくらいはいつもの事でしょ」
「いつもって――」
「ベテランはタイミング合わせろ! ルーキーは生きてたらいいなっ!」
「先に行くぜっ!」
見る見る近づき接近し、大きさを増す輸送列車のデカいケツ。
そこかしこにしがみつく大半を笑い飛ばし、残りの半数弱と一緒に下車口で並ぶ。事前に目を付けていたスパイ共は、怯えて竦んで一人も混じらない。この時点で選別できるなら大変助かり、追い付かれるまでの時間が本格的な勝負所。
目測、残5秒――――最前列が車外に跳ぶ。
目測、残3秒――――中列の連中と一緒に高速の宙へ。
目測、残1秒――――最後列の連中が全員空駆け、
カウント0秒――――音を通り越した爆音と共に、衝突した2車列は前に抑えられて後方に流れる。
免れた僕達は速度を保ち、秒で先頭車両の前へ回った。だが向こうは速度を落としても進み続け、こちらは推進器無しの慣性飛行。浮遊魔術で軽く微調整して正面を捉え、自由落下の如くフロントガラスに真っ直ぐ落ちる。
――――全員が強化魔術を自身に唱え、一斉に得物を構えて狙った。
軍用列車の先頭車両なら、使用しているガラスは対抗魔術付与の対弾仕様。大元の耐久性もきっと高く、ただのミサイルなら3発は耐える。しかし、その程度は想定内で毎度の事であり、僕も腰の多次元拡張ポーチから長大なライフルを選び取り出す。
20mm魔徹甲炸裂弾装填AMR(アンチマテリアルライフル)『デイガス‐20AM』。
ボルトを引いて初弾を装填、セーフティ解除し引き金に指、運転士と思しき連中には構わず自分の未来進行を射線上に、打ち合わせていなくてもほぼ同タイミングで発砲音と衝撃波。
刹那も感じず、車両前面が光って敗れた。
戦車の装甲を軽く貫くエネルギーが40余り、綺麗で透明なガラスを白く濁った破片へと変える。粉々というには大きすぎる欠片は風圧で、守っていた室内に荒れ狂い斬り貫いた。当然の如くソコにいた人間は理解する間もなく、来世の扉へ無惨に放り込まれる。
強風と血飛沫が散り舞う中へ、僕達は着地し室内戦装備へ急ぎ換装。
「室内クリア。生存者無し」
「車両制御装置は?」
「少しいかれちゃいるが、特に問題ねぇな。ん? サムア、何してんだ?」
「どうせなら動きやすくしようよ。――――こちら運転室! 所属不明の列車が後方から追突し、戦闘員が侵入・襲撃してきたと報告あり! 繰り返す! 所属不明勢力が後部車両へ最後尾から侵入! 至急確認せよ!――――っと、こんな所かな?」
「へっ、脳震盪中のルーキー共と正規兵、どっちが生き残るかねぇ?」
「どうせスパイだらけなんだから、全滅で良いよ。で? これからどうする?」
「決まってんだろ? 早い者勝ちだ!」
高周波振動カトラスで出入り口のドアを切断し、気の早い一人が廊下に跳び出す。
叫び声と悲鳴、怒号、銃声に爆音が後に続いた。即応力がある手練れから大丈夫と思うが、カバーもなしによくできるものだ。ついて行く連中を尻目に僕は離れ、大口径アサルトライフルを手に別のドアを開ける。
事前に、情報屋を使って良さそうな物資に目を付けてある。
そいつらの在り処は、2号車1階の左舷側。
「悪ぃ顔してるじゃねぇか、サムア?」
「私達も便乗させてもらうわね」
「お好きにどうぞ。後悔はしないでね?」
10km以上先行するソレを下車口から臨み、武者震いする一人が歓喜を口にする。
ドミディナ共和国が誇る武装輸送列車『タウラナ・マシュア』。
幅30m、全長100mの3階建て車両を3つ繋げ、屋上に20mm対空砲台が合計20門。乗員は武闘派の軍属が多く、両サイドからの襲撃を固定砲座無しでも対処可能。浮沈戦艦ならぬ無敗列車と評価は高く、割に合わないと盗賊達からは忌み嫌われる。
しかし、決して弱点がないわけではない。
その一点に、強盗列車は真っ直ぐ突っ込む。
『接触まで30秒。総員、対ショック姿勢』
「おいおいおいおいっ! 何する気だっ!?」
「口閉じてないと舌噛むよ、グロウバルン。あと、このくらいはいつもの事でしょ」
「いつもって――」
「ベテランはタイミング合わせろ! ルーキーは生きてたらいいなっ!」
「先に行くぜっ!」
見る見る近づき接近し、大きさを増す輸送列車のデカいケツ。
そこかしこにしがみつく大半を笑い飛ばし、残りの半数弱と一緒に下車口で並ぶ。事前に目を付けていたスパイ共は、怯えて竦んで一人も混じらない。この時点で選別できるなら大変助かり、追い付かれるまでの時間が本格的な勝負所。
目測、残5秒――――最前列が車外に跳ぶ。
目測、残3秒――――中列の連中と一緒に高速の宙へ。
目測、残1秒――――最後列の連中が全員空駆け、
カウント0秒――――音を通り越した爆音と共に、衝突した2車列は前に抑えられて後方に流れる。
免れた僕達は速度を保ち、秒で先頭車両の前へ回った。だが向こうは速度を落としても進み続け、こちらは推進器無しの慣性飛行。浮遊魔術で軽く微調整して正面を捉え、自由落下の如くフロントガラスに真っ直ぐ落ちる。
――――全員が強化魔術を自身に唱え、一斉に得物を構えて狙った。
軍用列車の先頭車両なら、使用しているガラスは対抗魔術付与の対弾仕様。大元の耐久性もきっと高く、ただのミサイルなら3発は耐える。しかし、その程度は想定内で毎度の事であり、僕も腰の多次元拡張ポーチから長大なライフルを選び取り出す。
20mm魔徹甲炸裂弾装填AMR(アンチマテリアルライフル)『デイガス‐20AM』。
ボルトを引いて初弾を装填、セーフティ解除し引き金に指、運転士と思しき連中には構わず自分の未来進行を射線上に、打ち合わせていなくてもほぼ同タイミングで発砲音と衝撃波。
刹那も感じず、車両前面が光って敗れた。
戦車の装甲を軽く貫くエネルギーが40余り、綺麗で透明なガラスを白く濁った破片へと変える。粉々というには大きすぎる欠片は風圧で、守っていた室内に荒れ狂い斬り貫いた。当然の如くソコにいた人間は理解する間もなく、来世の扉へ無惨に放り込まれる。
強風と血飛沫が散り舞う中へ、僕達は着地し室内戦装備へ急ぎ換装。
「室内クリア。生存者無し」
「車両制御装置は?」
「少しいかれちゃいるが、特に問題ねぇな。ん? サムア、何してんだ?」
「どうせなら動きやすくしようよ。――――こちら運転室! 所属不明の列車が後方から追突し、戦闘員が侵入・襲撃してきたと報告あり! 繰り返す! 所属不明勢力が後部車両へ最後尾から侵入! 至急確認せよ!――――っと、こんな所かな?」
「へっ、脳震盪中のルーキー共と正規兵、どっちが生き残るかねぇ?」
「どうせスパイだらけなんだから、全滅で良いよ。で? これからどうする?」
「決まってんだろ? 早い者勝ちだ!」
高周波振動カトラスで出入り口のドアを切断し、気の早い一人が廊下に跳び出す。
叫び声と悲鳴、怒号、銃声に爆音が後に続いた。即応力がある手練れから大丈夫と思うが、カバーもなしによくできるものだ。ついて行く連中を尻目に僕は離れ、大口径アサルトライフルを手に別のドアを開ける。
事前に、情報屋を使って良さそうな物資に目を付けてある。
そいつらの在り処は、2号車1階の左舷側。
「悪ぃ顔してるじゃねぇか、サムア?」
「私達も便乗させてもらうわね」
「お好きにどうぞ。後悔はしないでね?」
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