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第二幕 戦国での初料理

三 戦国での初料理

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「ちゃーはん?とか言うやつ、うめぇな!肉は細かく切って入れてあるんだな」

「はい。野菜だけでも体によくないですし、お肉だけでもよくないので、両方食べれるようにと入れてみました!」

「この料理、今度俺にも教えろ。俺の料理にも加える」

「え!?政宗さん料理なんてするんですか!?」

「政宗殿の料理美味しいんだよ!」



 政宗さんが料理をすることに驚いていると、それを聞いていた家康さんが答えてくれた。

 周りを見ると、皆料理を食べてくれていて、やっぱり一人で作ってよかったと思えた。



「貴様は俺の隣で食せ」



 皆が食べているのを見ていると、突然信長様に腕を掴まれ、そのまま隣へと座らされると、私も食事をとり始めた。



「お口に合いましたか?」

「不味くはない」



 そう言う信長様の箸は止まらず進んでいた。


 これは美味しいって意味なのかな?


 しばらくして食事が終わると、あれだけ沢山あった料理は全て無くなっている。


 片付けをしようと器を集めていると、三成さんも一緒に集めだした。



「三成さん大丈夫ですよ。私がやりますから」

「さっきも言っただろう、何か手伝うことがあったら言ってくれと。これくらいのことは俺にも手伝える」

「ありがとうございます!」



 器を集め終わり厨へと向かうと、そこには政宗さんと家康さんの姿があった。



「器はこれで全部かい?」

「はい」

「じゃあ、後は僕と政宗殿に任せて実影ちゃんは休んでいて」

「え、でも……」

「いいから休んでろ!さっきも言ったが、俺は料理を作るのに慣れている、そして洗い物にもだ」



 私は二人にお礼を伝え、お言葉に甘えて自室へと戻ることにした。

 三成さんにもお礼を伝え、自室へと向かう途中、背後から私の名前を呼ばれ振り返ると、そこには秀吉さんの姿があった。



「料理美味かった。俺はあいつらみたいにお前を手伝えねぇけどな。洗い物を手伝おうとしたら、逆に増えるからやめろって言われたんでな」



 秀吉さんに手伝わせたら、逆に片付けが増えてしまうという光景が想像つき、つい笑ってしまった。



「秀吉さんは、食材を用意してくれたじゃないですか。秀吉さんが準備をしてくれていなければ、夕餉の時刻には間に合いませんでした」

「少しはお前の役に立てたみたいで良かった……」

「え……?」



 小さな声で呟かれた言葉は私に届かず、廊下を吹き抜ける風がスッとさらっていった。



「なんでもねぇよ!部屋に戻ってゆっくり休めよ」



 秀吉さんはそれだけ言うと、私に背を向け、ヒラヒラと片手を振りながら歩いていってしまった。

 私も自室へ戻ろうと、広間の前を通ると、光秀さんの姿が見えた。



「光秀さん、どうかされましたか?」

「ああ。お嬢さん、貴女を待っていたんですよ」

「私を?」

「ええ。お嬢さんが作ってくれた夕餉は、今まで食べた物の中で一番だった。あまり食べない俺が全部食べてしまったんだからね。それを伝えたくてね」



 光秀さんに誉めてもらい、私は嬉しくて口許を緩ませた。



「そう言っていただけて嬉しいです!また機会があれば作りますね!」

「その時は、俺だけのためによろしくね」



 優しい微笑みを向けられ言われると、さっき言われたような、冗談めいた言葉には聞こえず、返事に困ってしまう。



「っはは!冗談だよ」

「な、なんだ!ビックリしちゃいましたよ!」

「すまないね、少しからかいたくなったんだ。お嬢さんは部屋に戻る途中だろう、ゆっくり休むんだよ」

「はい」



 光秀さんと別れ、私は自室へと向かった。



「面白いお嬢さんだな」



 誰もいない広間で、光秀さんが口角を上げ呟いた言葉は誰にも届かず、静寂の中へと消えていった。



 その時私は、廊下を歩きながら今日のことを思い出していた。

 料理を作ったことにより、なんだか皆との距離が縮まって、いろんなことがわかった気がした。


 皆の好きな食べ物や、政宗さんが料理好きだったり、信長様が素直じゃないこともわかった。


 料理、作ってよかった!



 そんなことを考えながら自室の前まで着き、襖に手をかけようとしたとき、突然襖が開き、中から伸ばされた手に腕を掴まれ、そのまま部屋の中へと引っ張られた。



「んっ!んー!」

「静かにしていろ」



 助けを呼ぼうと声を出そうとしたとき、口を塞がれてしまい、逃げようとしていると、聞き覚えのある声が私の耳元で聞こえた。


 今の声……。


 暗闇の中、次第に目が慣れてくると、その人物の姿がハッキリと見えた。


 信長様!?



「ようやく大人しくなったようだな」

「ぷはっ!何故信長様が私の部屋に!?」



 口から手がようやく離され、部屋にいた信長様に驚いていると、信長様は私の耳元へと口を近づけた。



「美味かった……」

「え…?」

「二度は言わん」



 目が慣れても、薄暗い部屋では信長様の顔はよく見えないけど、目を逸らし、何だか照れくさそうにしているのがわかる。


 さっきは、ハッキリ美味しいとは言ってもらえなかったけど、耳元で囁くように言われた言葉に、私は嬉しさを感じた。


 それだけ言うと、信長様は扉へと手をかけ、去り際に、ゆっくりやすめ、とだけいい行ってしまった。


 それをいいに、わざわざ来てくれたのかな?


 まだ昨日あったばかりだけど、この世界の武将に愛がないと言っても、優しさはあるのかもしれないと思えた。


 料理を作る前も、作ったあとも、皆が私のことを気遣ってくれているのを私は感じた。



「お疲れ様!」



 その時、突然声が聞こえ、視線を向けると、窓際に刻の姿があった。



「刻!」

「やぁ。今日君がしたことは、武将達にとって変化をあたえたみたいだね」

「変化?」

「そうだよ。その少しずつの変化は、次第に大きな変化へと変わる」



 私にそんなことが本当にできたのかはわからない。

 でも、今日私がしたことは、私にとって武将達を知る大切な機会にもなった。

 同じことを皆も感じてくれていたら嬉しいと思う。



「その変化は、君にも次第にわかるようになっていくはずだよ。今日は皆が言うようにゆっくり休んで、疲れをとってね」

「うん。ありがとう」



 それだけ言うと、刻の姿はスッと消えてしまった。


 私は布団を敷き横になると、瞼を閉じ、明日からはどうしようかと考えながら眠りへと落ちていった。
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