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それは私を嘲笑う/テーマ:のびる
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私のおじいちゃんの家には日本人形が飾られており、お正月やお盆に両親に連れられ行く度に、その人形は視界に入る。
特に気にしていなかったけど、小学3年生の頃に友達から聞いた、日本人形の髪がのびるという話でその年のお盆は日本人形が気になって仕方なかった。
明るく家の中が賑やかなうちにじっと人形を見るけど、何の変哲もないただの日本人形。
しばらく観察していると、何をしてるのかお母さんに聞かれたから「髪がのびないかと思って」なんて答えたら、人形の髪がのびるはずないと笑われた。
友達から聞いた話を説明するけど、ただの作り話だといって相手にされず、再びおじいちゃんたちと話し出す。
私だって信じてるわけじゃないけど、怖いものは怖い。
それに、じっと見ていたら顔が人みたいに見えてきて今にも瞬きをしそう。
少しの恐怖がありながらも、お風呂と夕食を済ませたあとは布団を敷いて横になる。
今までは人形のことなんて気にしていなかったのに、その部屋で眠る今の状況が更に私の意識を人形へと向けさせていく。
横を見れば、お母さんもお父さんもすでに眠っている。
私も寝てしまおうと、ギュッと布団を掴み瞼を閉じた。
どれくらい眠ったんだろう。
目が覚めた視界はまだ暗く夜なんだと思ったとき、私は違和感を感じた。
いくら夜とは言え天井すら見えないほど暗いなんておかしい。
起き上がろうとしても身体はびくともせず、まるで何かに全身を覆われているみたいな感覚。
恐怖で声を出そうとしたとき、口の中に何かが入り込んで塞ぐ。
苦しくて怖くて瞼をグッと閉じて目を開けると、外の光が照らす天井が瞳に映る。
嫌な夢を見た。
汗で服は濡れていて気持ちが悪い。
横を見れば、お母さんもお父さんもまだ眠っている。
安心してホッとしたとき、口に何かあることに気づき指で摘んで取り出す。
起き上がって見ると、指にはベッタリとついた数本の髪。
声にならない恐怖が襲い視線を前に向けると、日本人形がこちらを向いている。
一日見続けたんだから間違うはずがない。
日本人形の髪がのびている事に気づいた私を嘲笑うかのように、人形の口と目は弧を描き不気味に笑う。
《完》
特に気にしていなかったけど、小学3年生の頃に友達から聞いた、日本人形の髪がのびるという話でその年のお盆は日本人形が気になって仕方なかった。
明るく家の中が賑やかなうちにじっと人形を見るけど、何の変哲もないただの日本人形。
しばらく観察していると、何をしてるのかお母さんに聞かれたから「髪がのびないかと思って」なんて答えたら、人形の髪がのびるはずないと笑われた。
友達から聞いた話を説明するけど、ただの作り話だといって相手にされず、再びおじいちゃんたちと話し出す。
私だって信じてるわけじゃないけど、怖いものは怖い。
それに、じっと見ていたら顔が人みたいに見えてきて今にも瞬きをしそう。
少しの恐怖がありながらも、お風呂と夕食を済ませたあとは布団を敷いて横になる。
今までは人形のことなんて気にしていなかったのに、その部屋で眠る今の状況が更に私の意識を人形へと向けさせていく。
横を見れば、お母さんもお父さんもすでに眠っている。
私も寝てしまおうと、ギュッと布団を掴み瞼を閉じた。
どれくらい眠ったんだろう。
目が覚めた視界はまだ暗く夜なんだと思ったとき、私は違和感を感じた。
いくら夜とは言え天井すら見えないほど暗いなんておかしい。
起き上がろうとしても身体はびくともせず、まるで何かに全身を覆われているみたいな感覚。
恐怖で声を出そうとしたとき、口の中に何かが入り込んで塞ぐ。
苦しくて怖くて瞼をグッと閉じて目を開けると、外の光が照らす天井が瞳に映る。
嫌な夢を見た。
汗で服は濡れていて気持ちが悪い。
横を見れば、お母さんもお父さんもまだ眠っている。
安心してホッとしたとき、口に何かあることに気づき指で摘んで取り出す。
起き上がって見ると、指にはベッタリとついた数本の髪。
声にならない恐怖が襲い視線を前に向けると、日本人形がこちらを向いている。
一日見続けたんだから間違うはずがない。
日本人形の髪がのびている事に気づいた私を嘲笑うかのように、人形の口と目は弧を描き不気味に笑う。
《完》
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