12 / 27
綺麗な私/テーマ:化ける
しおりを挟む
可愛いや美人の基準は誰が決めたのか。
昔の美人は今で言う可愛いや美人とはまた違うと聞いたことがある。
化粧で化ければそれは美人で可愛いのだろうか。
だとしたら、誰でも美人や可愛いになれてしまう。
見た目は持って生まれた自身の姿。
化粧はまやかしに過ぎない。
だから私は大人になってもメイクをせず、私自身の姿で過ごしている。
なのに、何故周りはそれを良しとしないのか。
「社会人なんだから化粧くらいしないと」
職場の先輩に言われたけど、何故そんなこと言うのかわからない。
社会人になったら、まやかしの姿をしなければいけないなんて決まりはないけど、化粧は大人のマナーだと周りは言う。
遂には上司にまで遠回しに言われてしまい、私は人生初のメイクをする。
会社へ向かう間の道では、過ぎ行く人が私に視線を向けている。
化けた姿にそこまでの威力があるんだろうかと思いながら会社につくなり、周りがシーンと静まり返る。
「ちょっと、こっちに来なさい」
先輩に腕を掴まれ連れて行かれたのは化粧室。
持ってきていたメイクポーチから化粧落としを取り出した先輩は、私の顔をゴシゴシと擦りメイクを落とす。
「貴方、ふざけてるの? そんな化物みたいなメイクして来るなんて」
メイクを今までしたことのない私は、どうやら別の意味で化けたらしく、先輩がメイクをほどこしてくれた。
鏡で見た自分の姿は、化粧をしてないときとあまり変化がない。
「貴方は元がいいから、ファンデーションをするくらいで十分よ。ほら、仕事に戻るわよ」
先輩が化粧室から出ていったあと、私は鏡と向かい合う。
私は元が化けてたんだと笑みを浮かべ、メイク落としでは決して落とすことの出来ない本来の私を鏡に思い浮かべる。
赤いコートを着るのをやめ、マスクをやめ、現代社会に溶け込んだ自分。
化粧なんかしなくても、元の私はこんなにも美しい。
それでも隠さなければならないのは、この美貌に周りが逃げ出してしまわぬように。
鏡に映る自分の口元に手を触れれば、本来の姿が鏡に浮かび上がる錯覚をおこす。
口が裂けたその姿は、昔に噂された都市伝説そのもの──。
《完》
昔の美人は今で言う可愛いや美人とはまた違うと聞いたことがある。
化粧で化ければそれは美人で可愛いのだろうか。
だとしたら、誰でも美人や可愛いになれてしまう。
見た目は持って生まれた自身の姿。
化粧はまやかしに過ぎない。
だから私は大人になってもメイクをせず、私自身の姿で過ごしている。
なのに、何故周りはそれを良しとしないのか。
「社会人なんだから化粧くらいしないと」
職場の先輩に言われたけど、何故そんなこと言うのかわからない。
社会人になったら、まやかしの姿をしなければいけないなんて決まりはないけど、化粧は大人のマナーだと周りは言う。
遂には上司にまで遠回しに言われてしまい、私は人生初のメイクをする。
会社へ向かう間の道では、過ぎ行く人が私に視線を向けている。
化けた姿にそこまでの威力があるんだろうかと思いながら会社につくなり、周りがシーンと静まり返る。
「ちょっと、こっちに来なさい」
先輩に腕を掴まれ連れて行かれたのは化粧室。
持ってきていたメイクポーチから化粧落としを取り出した先輩は、私の顔をゴシゴシと擦りメイクを落とす。
「貴方、ふざけてるの? そんな化物みたいなメイクして来るなんて」
メイクを今までしたことのない私は、どうやら別の意味で化けたらしく、先輩がメイクをほどこしてくれた。
鏡で見た自分の姿は、化粧をしてないときとあまり変化がない。
「貴方は元がいいから、ファンデーションをするくらいで十分よ。ほら、仕事に戻るわよ」
先輩が化粧室から出ていったあと、私は鏡と向かい合う。
私は元が化けてたんだと笑みを浮かべ、メイク落としでは決して落とすことの出来ない本来の私を鏡に思い浮かべる。
赤いコートを着るのをやめ、マスクをやめ、現代社会に溶け込んだ自分。
化粧なんかしなくても、元の私はこんなにも美しい。
それでも隠さなければならないのは、この美貌に周りが逃げ出してしまわぬように。
鏡に映る自分の口元に手を触れれば、本来の姿が鏡に浮かび上がる錯覚をおこす。
口が裂けたその姿は、昔に噂された都市伝説そのもの──。
《完》
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【完結】1話完結のSS集
月夜
恋愛
別作品『1話完結の短編集』より短いお話の詰め合わせです。
ちょっとした時間のお供にでもお読みくださいませ。
多ジャンルではありますが、恋愛のお話が多めになると思うので、カテゴリは恋愛にしております。
[各話の表記]
・テーマ(コンテスト用に書いた作品にのみ)
・他サイト含むコンテスト(受賞、優秀作品を頂いた作品のみ記載有り)

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

シチュボ(女性向け)
身喰らう白蛇
恋愛
自発さえしなければ好きに使用してください。
アドリブ、改変、なんでもOKです。
他人を害することだけはお止め下さい。
使用報告は無しで商用でも練習でもなんでもOKです。
Twitterやコメント欄等にリアクションあるとむせながら喜びます✌︎︎(´ °∀︎°`)✌︎︎ゲホゴホ

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる