1話完結のSS集Ⅱ

月夜

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身近に宇宙人/テーマ:運命のふたり

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 宇宙人は、実は身近にいる。
 私自身も、周りの歩く人々も、宇宙の他の生物からしたら宇宙人なのだから。
 自分達も宇宙人なのに「宇宙人などいない」と否定する人や「宇宙人に会いたい」と言う人がいる。
 毎日そこら中にいる同じ人間ではなく、自分達と異なる者が見たいんだろう。

 全ての物に名前をつけるのも区別するため。
 宇宙人という言葉だって分ける為の言葉に過ぎない。
 地球以外に暮らす生き物からしたら、なんと勝手なんだと思うだろう。
 でも、その区別が地球だけでなかったとしたら、私達はなんと呼ばれているのか気になる。
 同じ言葉が使われていることすらないに等しいのだから、意外に「天才」なんて褒め言葉で呼ばれているかもしれない。
 傍また地球人が理解できない言葉かもしれないけど、それを考えたところで答えなんて出ないしただの妄想に過ぎない。



「ねえ、もしバケモノって言われたらどうする?」

「しばく」



 友達の言葉で宇宙人がしばかれる可能性も浮上。
 教室の窓際の席の私は、左上に視線を向ける。
 雲一つない青い空が広がっていて、ここまで妨げるものがないと宇宙船も見えそうだ。



「アンタが変なこと言い出すのはいつもの事だけど、そんなんじゃ友達できないよ」

夏帆なほがいる」



 視線を空から正面に向ければ、夏帆が溜息を吐いている。
 宇宙人とか未確認生物への興味は持つくせに、こういう話をするヤツは変人扱いで話しかけてすら来ない。
 冗談やテレビでの話ならいいけど、本気での語りは避けられるって納得いかない。

 こんな私と幼稚園の頃から一緒の夏帆だけは、中学二年生となった今でも私と友達でいてくれて話してくれる。
 他の子達は、私がこんな話ばかりすることを知ったら誰も声をかけてこなくなったけど、その方がゆっくり宇宙人のことを考えられるというもの。



「私達って、運命で出会った二人なのかも」

「唐突に今度は何?」



 幼稚園から一緒で中学生になっても友達で、クラスが今まで別になったことがないなんて何か見えない物が働いているとしか思えない確率。
 小学校は六年間あるんだから、少なくてもそこの何処かでほぼ全員クラスが分かれる。
 それがなかったから、今もこうして話していられるのかもしれないと思うと、やっぱり私と夏帆は運命の二人。



「私達は運命の宇宙人」

「せめて人間にして」



 再び窓の外に視線を向け青空を見詰める。
 今私が見ているこの広い青空は、宇宙からしたら無いも同然で、地球から見ても小さな点のようなもの。
 それでも、その小さな点を見詰めてる人はいる。



「夏帆は、ここから見える空を広いと思う?」

「私達からしたら広いけど、宇宙からしたらそうでもないでしょ」



 考えてることが同じ二人。
 こういうところが運命だって思うんだよ。
 この空を見て同じことを言う人が他にいるだろうか。
 もしかしたら夏帆は私と仲良くなりたいと思った宇宙人だったりするのかもしれない。



「アンタ、今失礼なこと考えてるでしょ」

「なんで?」

「嫌な笑み浮かべてるから」



 全てお見通しの宇宙人恐るべし。
 広い宇宙の未確認生物もいいけど、身近にいるこの人間こそ今の私の興味の中心。
 私は夏帆と友達になりたくて今もこの場所にいる。
 青くてキレイなまあるい星。
 そこにアナタがいてくれてよかった。



「これからも観察させてね」



 小さく呟いた言葉は夏帆の耳を掠め「何か言った?」と聞かれたけど首を振る。
 さて、宇宙人はどっちだろう。


《完》
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