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雨の神の末裔/テーマ:雨よ降れ
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雨乞い部とは、その名の通り雨乞いをする部活。
依頼があったその日を雨にするという、いかにも効かなそうに思える内容だが、現在までの依頼は全て達成。
噂は広がり今では雨を降らしてほしいという依頼が殺到なわけだが、それを全て受けたらどうなるか。
「毎日雨になるわ!」
「まあ、そうだよねー」
部室には、私と奈留だけ。
二人しかいない部だから当然なんだけど、最近では先生に目をつけられて「即刻雨乞い部など辞めなさい」と言われている。
そもそも部員二人の部活なんて認められるはずがなく、適当に空き教室を使ってやってるだけのなんちゃって部だから正式な部ではない。
先生達からしたら、雨乞いで雨が降るなんて馬鹿らしいと思ってるみたいだけど、皆が嫌がる体育の時に必ず雨が降るものだから、先生達からは嫌われてる。
信じてないとか言って信じてるじゃんと言いたくなるし、私だって好きで雨乞いをしてるわけじゃなかった。
発端は、私が雨の神の末裔ということ。
小さい頃から私が願うと雨が降り、周りに頼まれるといつも引き受けていた。
それが問題になって親に叱られてからは雨を願わなくなったんだけど、その日から雨が降らなくなったことでニュースになるほどの騒ぎとなり「こほんっ、たまにならいいでしょう」と親からの許しを得て以降はタイミングを見て雨を降らせていた。
そんな私が中学生となって数日が経ったある日、何処から聞きつけてきたのか同じクラスの女子が「雨降らせるって本当?」と言って話しかけてきた。
その女子こそ奈留。
初めて話す相手によくズケズケと来れるなあと思いながら「出来るけど、降らせてほしいってことならしないから」とキッパリ断る。
成長して私も、あの頃言われた両親の言葉の意味も理解している。
雨の神の末裔だからって、好き勝手な都合で天気を変えていいはずがない。
なのに奈留は「じゃあ、降らせるとき見せて」なんて言ってきて、ただの興味本位なら見せれば終わるだろうと甘く考え了承した。
奈留は私が雨を降らせるのを見ると凄く興奮して「その力、みんなのために使おうよ」と言い出した。
自分勝手な理由で天気を変えられないと伝えれば「自分勝手な理由じゃなきゃいいんだね」なんてニヤリと笑った奈留に首を傾げたけど、後日その意味を知る事になった。
雨を個人の勝手で降らせるんじゃなく、人助けに使うと言ってきたときは「は?」と間抜けな声が出たのを覚えてる。
その後は雨乞い部なんて勝手に決めて依頼を集め、その中から人助けのものだけをチョイスして奈留は勝手に受けた。
引っ張り出された私は、小さい頃以来に誰かの頼みで雨を降らせた。
また怒られるのかなとか思っていた翌日、依頼者がやって来てお礼を言われた。
雨を降らせてこんな風に感謝されたのは初めてのことだ。
昔は「運動会嫌だから雨降らせて」なんて頼んできた子のお願い聞いて雨降らせたりしたけど、その時とは喜ばれ方が違う。
「あの子の両親、つい最近亡くなったんだって」
「え?」
依頼者の両親は、事故でこの世を去った。
それから雨を見る度、両親の事故のことを思い出して泣いていたらしい。
「なら、雨なんて見たくないんじゃないの?」
「そうなんだけどさ。あの子には雨の日に両親との思い出もあるんだよ」
まだ依頼者が小学生だった頃、初めて家族三人で出かけた先が遊園地。
両親共に仕事が忙しく、家族で出かけたのはその一度きり。
観覧車に乗ったとき雨が降り出し、キラキラと光る景色が凄く綺麗で、優しい雨は幼い少女の思い出となった。
奈留に頼まれたとき「優しい雨ってできる」なんて聞かれた時はいきなりなんでと思ったけど、今ならわかる。
でもこれって個人の勝手で降らせた雨と同じなんじゃないかと口にしたら「そうだね」と奈留は笑った。
自分勝手な雨は降らせてはいけないってわかってるけど、依頼者の晴れやかな笑みを思い出しながら思う。
こういう雨ならいいのかもしれないと。
そんな切っ掛けでこの部の活動が正式に開始されたわけだけど、いくらなんでも依頼の量が多すぎる。
くだらない理由ばかりの内容に見てて頭が痛くなるけど、奈留は気にする様子もなく依頼用紙に目を通すと一枚の紙を私に見せた。
「この依頼にしよ」
「了解。あとは断るの?」
「うん。だって、自分勝手な理由は駄目なんでしょ」
奈留は最初からわかっていた。
自分勝手な理由とそうじゃないものを。
正しいのかはわからないけど、依頼者の笑顔を見ると間違っていてもそうしたいと思ってしまう。
雨の神は、どんな時に雨を降らせていたんだろう。
もしかしたら、人の強い祈りを叶えていたのかもしれない。
末裔である私がその祈りを代わりに天に伝えよう。
雨よ降れと願うその願いと思いを。
《完》
依頼があったその日を雨にするという、いかにも効かなそうに思える内容だが、現在までの依頼は全て達成。
噂は広がり今では雨を降らしてほしいという依頼が殺到なわけだが、それを全て受けたらどうなるか。
「毎日雨になるわ!」
「まあ、そうだよねー」
部室には、私と奈留だけ。
二人しかいない部だから当然なんだけど、最近では先生に目をつけられて「即刻雨乞い部など辞めなさい」と言われている。
そもそも部員二人の部活なんて認められるはずがなく、適当に空き教室を使ってやってるだけのなんちゃって部だから正式な部ではない。
先生達からしたら、雨乞いで雨が降るなんて馬鹿らしいと思ってるみたいだけど、皆が嫌がる体育の時に必ず雨が降るものだから、先生達からは嫌われてる。
信じてないとか言って信じてるじゃんと言いたくなるし、私だって好きで雨乞いをしてるわけじゃなかった。
発端は、私が雨の神の末裔ということ。
小さい頃から私が願うと雨が降り、周りに頼まれるといつも引き受けていた。
それが問題になって親に叱られてからは雨を願わなくなったんだけど、その日から雨が降らなくなったことでニュースになるほどの騒ぎとなり「こほんっ、たまにならいいでしょう」と親からの許しを得て以降はタイミングを見て雨を降らせていた。
そんな私が中学生となって数日が経ったある日、何処から聞きつけてきたのか同じクラスの女子が「雨降らせるって本当?」と言って話しかけてきた。
その女子こそ奈留。
初めて話す相手によくズケズケと来れるなあと思いながら「出来るけど、降らせてほしいってことならしないから」とキッパリ断る。
成長して私も、あの頃言われた両親の言葉の意味も理解している。
雨の神の末裔だからって、好き勝手な都合で天気を変えていいはずがない。
なのに奈留は「じゃあ、降らせるとき見せて」なんて言ってきて、ただの興味本位なら見せれば終わるだろうと甘く考え了承した。
奈留は私が雨を降らせるのを見ると凄く興奮して「その力、みんなのために使おうよ」と言い出した。
自分勝手な理由で天気を変えられないと伝えれば「自分勝手な理由じゃなきゃいいんだね」なんてニヤリと笑った奈留に首を傾げたけど、後日その意味を知る事になった。
雨を個人の勝手で降らせるんじゃなく、人助けに使うと言ってきたときは「は?」と間抜けな声が出たのを覚えてる。
その後は雨乞い部なんて勝手に決めて依頼を集め、その中から人助けのものだけをチョイスして奈留は勝手に受けた。
引っ張り出された私は、小さい頃以来に誰かの頼みで雨を降らせた。
また怒られるのかなとか思っていた翌日、依頼者がやって来てお礼を言われた。
雨を降らせてこんな風に感謝されたのは初めてのことだ。
昔は「運動会嫌だから雨降らせて」なんて頼んできた子のお願い聞いて雨降らせたりしたけど、その時とは喜ばれ方が違う。
「あの子の両親、つい最近亡くなったんだって」
「え?」
依頼者の両親は、事故でこの世を去った。
それから雨を見る度、両親の事故のことを思い出して泣いていたらしい。
「なら、雨なんて見たくないんじゃないの?」
「そうなんだけどさ。あの子には雨の日に両親との思い出もあるんだよ」
まだ依頼者が小学生だった頃、初めて家族三人で出かけた先が遊園地。
両親共に仕事が忙しく、家族で出かけたのはその一度きり。
観覧車に乗ったとき雨が降り出し、キラキラと光る景色が凄く綺麗で、優しい雨は幼い少女の思い出となった。
奈留に頼まれたとき「優しい雨ってできる」なんて聞かれた時はいきなりなんでと思ったけど、今ならわかる。
でもこれって個人の勝手で降らせた雨と同じなんじゃないかと口にしたら「そうだね」と奈留は笑った。
自分勝手な雨は降らせてはいけないってわかってるけど、依頼者の晴れやかな笑みを思い出しながら思う。
こういう雨ならいいのかもしれないと。
そんな切っ掛けでこの部の活動が正式に開始されたわけだけど、いくらなんでも依頼の量が多すぎる。
くだらない理由ばかりの内容に見てて頭が痛くなるけど、奈留は気にする様子もなく依頼用紙に目を通すと一枚の紙を私に見せた。
「この依頼にしよ」
「了解。あとは断るの?」
「うん。だって、自分勝手な理由は駄目なんでしょ」
奈留は最初からわかっていた。
自分勝手な理由とそうじゃないものを。
正しいのかはわからないけど、依頼者の笑顔を見ると間違っていてもそうしたいと思ってしまう。
雨の神は、どんな時に雨を降らせていたんだろう。
もしかしたら、人の強い祈りを叶えていたのかもしれない。
末裔である私がその祈りを代わりに天に伝えよう。
雨よ降れと願うその願いと思いを。
《完》
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