1話完結の短編集

月夜

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白マス王子vs黒マス王子/テーマ:負けられない戦い

2 白マス王子vs黒マス王子

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「キミにこの子のよさはわからないだろうね」

「アンタにこの子のよさはわからないだろうな」



 これは止めた方がいいだろうと思い、二人の間に入り喧嘩の理由を尋ねると、それは女の子を巡っての話だった。

 白マス王子には好きな人がおり、その彼女の写真をスマホで黒マス王子に見せたところ「ボクの好きな人のが素敵だ」と言ったことで喧嘩になったらしい。
 だが、まさか二人の王子に好きな人がいたとは、ファンが悲しむだろうなぁと思っていたとき、机に置かれた二人のスマホが目に入る。



「えーと、二人とも、好きな人ってまさか」

「香織ちゃんです」

「ダークアイネだ」



 スマホ画面に映っていたままの画像でなんとなく予想はついたものの、まさかの二人ともアニメの登場キャラクター。
 私も二次元に恋したことがあるからわからなくはないが、好みの問題だから好きなタイプが違うのは仕方がないんじゃないかと思うが、二人とも話すうちに相手の好きなキャラを悪く言ってしまったらしく怒りが収まらない。

 正直なところ、面倒なので帰ってもいいですかという感じだが、流石にこの状況を放置というわけにもいかず、二人とも謝って仲直りでいいんじゃないかと提案する。
 その提案が更なる悪化を招くとは思いもせず。



「私は謝りませんよ。私の愛する人の悪口を言ったのですから」

「それはボクのセリフだ」



 そこで決着は、私がどちらを可愛いと思うかという方法になったのだが、もう喧嘩の内容と関係のない方向に向かっていた。

 スマホ画面の女の子を見せてくる二人、迫られる二択。
 どっちでもいいんだが、片方を選べはもう片方に恨まれそうで答えが出ず、こんなことで悩む私は何をしているんだろうかと思えてくる。

 そして私はあることを思いついた、二人にお互いのアニメを見てもらうという考え。
 お互いにお互いの好きなキャラが出てくるアニメを見れば良さがわかるかもしれない。


 その提案に納得した二人は部活後に家でお互いのアニメを見ることにしたらしいのだが、翌日の部室ではまたも睨み合う二人の姿があった。
 アニメを見ても駄目だったのだろうかと思っていると、昨日と少し会話の内容が違っていた。

 あの後お互いのアニメを見た二人はそのアニメにもハマったらしく、どうやら同じアニメの共通の話題ができたことから語り合っていたため真剣な表情をしていたようだ。



「まぁ、一見落着かな」



 この日の部活は喧嘩はなかったものの、二人のアニメやキャラの会話に私も付き合わされる羽目になってしまった。

 それから翌日。
 とうとうあの王子二人が私と同じ部活だということを知ったファンクラブの女子達が私を呼び出した。

 連れて行かれた先には、白マス王子と黒マス王子のファンクラブのトップ二人の姿。
 それもトップ会員だけあって上級生だ。
 一体何を言われるのかと思っていると、何やらトップ二人は王子について語り始めた。

 白マス王子。
 いつも白いマスクをつけ、時々スマホを見ては頬を染め、笑みを浮かべている。
 そんな姿が可愛らしいと、イケメンと可愛らしさを合わせ持つ王子。

 黒マス王子。
 いつも黒いマスクをつけ、時々スマホを見ては、白マス王子と同じく頬を染め笑みを浮かべる姿に心を撃ち抜かれる女子が現在も進行形で急増中。
 時々意味のわからないことをいうところがミステリアスで素敵と人気。

 この説明で思ったのは、二人の王子はスマホ画面の好きな女性キャラを見ていたんだろうなと。
 黒マス王子のミステリアスについては、ただの冒険ファンタジーにのめり込んで拗らせただけだということは直ぐに想像がついたが言うのはやめておこう。



「でも、そんな王子について深く知る者はいないの」

「そうなのよ。だから、鈴鳴さんに頼みたいの」



 こうして渡されたのは、二人の王子に聞いてほしいリスト。
 白マス王子ファンと黒マス王子ファンの意見を纏めた結果のリストらしいが、全く面倒なことを頼まれたものだ。

 自分達で聞いたらいいのではないかと言ってみたが、王子に話し掛けるなんて恐れ多いらしい。
 中身を知ったらそうは思はないだろうけど。


 部室へ行くとすでに二人の姿がある。
 先程のリストに書かれた質問をささっと終わらせるべく、二人に直接質問していくことにした。

 先ず一つ目の質問が「好きな人はいますか」だが、私の思った通り二人はアニメキャラを答えた。
 王子ファンのイメージを壊さないように、そのキャラ達の性格を書いておく。
 二つ目は「何故いつもマスクをしているのか」だが、これは私も気になる。



「マスクしてると落ち着くんだよね」

「ボクは前世の名残だ。前世でのボクは口元を布で覆っていたんだが、それは自分の素性を知られないためで──」

「はーい、長くなりそうなのでそこまででいいでーす」



 その後もリスト全ての質問を聞き出したが、答えは全てこんな感じ。
 私なりに、この二人のファンがガッカリしない様な内容に書き換えておく。
 二人の答えを言い換えただけなので嘘ではない。

 本当に知れば知るほど残念なイケメンではあるが、この二人、少し似ているような気がする。
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