イケメン武将は恋してる

月夜

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第十幕 快楽を忘れたくて

二 快楽を忘れたくて

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「幸村です。よろしいでしょうか」



 襖越しに声をかけられ返事をすると、幸村が部屋へと入ってくる。

 一体どうしたのだろうかと思っていると、才蔵がいない間、幸村が葉流の傍についていることになったようだ。



「顔が赤いようですが大丈夫ですか?すぐに横になられた方のがよろしいのでは」

「ッ……!!」



 触れられた肩に痺れが走り、漏れてしまった声に抑えが効かなくなってしまうと、葉流は幸村に抱きついていた。



「どうなされたのですか!?」

「ダメ……もう、我慢できないん、です」



 下から見上げるように幸村へと視線を向けると、次第に近づく距離に唇が重なり、体は布団の上へと押し倒された。

 そのまま深く口付けられると、首筋へと唇が落とされ、信長とは違う甘い痺れに体は更に疼き出す。

 帯をほどかれ畳の上に落とされると、はだけた着物から隠れていた肌が露になり、その透き通るような肌を幸村は優しく指で撫で、その手が下へと伸ばされ秘部へと触れられると、水音が響く。

 指を動かされる度にはしたない音が鳴り続け、優しい愛撫に蕩けてしまいそうになる。

 そして甘い痺れを感じながら、この夜葉流は幸村の愛撫で達してしまった。



「すみません。このようなことを……」

「いいんです。私もしてほしかったのですから」



 この日、葉流は罪を犯した。

 愛もなくしてしまったことへの罪悪感が胸に残る。



「もうじき才蔵も戻ると思いますので、俺はこれで失礼致します」



 幸村がいなくなった部屋では、優しく痺れるような感覚、そして胸には罪悪感だけが残った。

 信長とは違う、優しく甘い痺れを感じる自分の体を強く抱きしめ、もう快楽を求めてはいけないと言い聞かせる。


 それから翌日のお昼、いつものように運ばれてきた料理を食べていると、突然体が熱くなり、箸の動きが止まる。



「どうかしたのか?」

「いえ、何でもありません」



 才蔵に心配をかけないようにと、再び箸を動かし料理を食べる。

 だが食べ終わった後も葉流の体の疼きは収まらず、昨日のようなことを繰り返さないためにも、別のことに集中しようと才蔵に情報は何か得られたか尋ねる。



「まだ確証はないが、大体のことはわかってきた」

「そうですか……」

「そんな顔をするな。情報の入手先がわかれば、尾張の者をここへ置く必要はなくなる」



 葉流を安心させるかのように才蔵が言ったその日の夜。
 再び才蔵は任務の為城から離れると、葉流は部屋で一人となった。

 今日はすでにお風呂も夕食も済ませたため、部屋から出る心配もなく布団へと入る。
 すると、襖越しに声をかけられ閉じかけた瞼を開く。



「葉流様、遅くに失礼致します。信玄様がお呼びです」

「わかりました」



 女中は信玄の部屋の前まで案内すると、葉流に一礼し去ってしまう。

 廊下に残された葉流は、襖に向き直ると声をかけ中へと入る。



「遅くに呼び出してすまなかったな」

「いえ、どうかなされたのですか?」

「いやな、今日は幸村も才蔵も猿飛も皆情報を集めに行っておるんだが、最近、葉流の様子がおかしいと女中から聞いてな」

「そうだったのですか……。ご心配お掛けしてしまって申し訳ありません」



 きっと女中というのは葉流のお世話を色々しているあの人だと思い、女中にまで心配をかけてしまっていたのだと気づく。

 そんなことを考え視線を落としてしまう葉流の耳に、信玄の声が届き顔を上げた。



「まぁ、それは口実に過ぎんがな。本当は、葉流とこうして共にいたかったのだ」



 腰に手が回され抱き寄せられると、葉流の鼓動が音をたてる。

 信玄の体温が着物越しにもわかってしまい、その微かな熱は葉流の体を熱くさせていく。

 また昨日のような過ちを繰り返さないためにも、葉流はこの高鳴りと熱を落ちつかせようと、信玄の胸の中で深く息を吸い、そっと信玄の胸を押し距離をとる。



「からかわないでください」

「からかってなどおらぬ」



 真っ直ぐに真剣な視線を向けられ、何故信玄がこんな目で自分を見るのかわからない。



「まだわからぬようだな。それなら」



 突然畳へと押し倒されると、噛みつくような口付けを首筋へとされ痛みを感じる。
 だが、やはり自分の体は可笑しくなってしまったようだ。
 それさえも快楽に感じてしまうのだから。

 首筋から鎖骨へと舌を這わされ、背筋がぞくりと震える。



「愛らしい反応だな」

「ッ……このようなことはお止めください」

「我の気持ちに気付かぬお主が悪いのだぞ」

「武田さんのお気持ちとは一体__」



 尋ねようとしたその時、いつの間にか帯はほどかれ露になった胸に舌を這わされ、声が漏れてしまう。

 吐息混じりの声を漏れ始めると、信玄の指は秘部へと埋め込まれていく。

 下は簡単に信玄の指を呑み込むと、奥から蜜を溢れさせ感じていることを知らせる。



「葉流がこれほどまでに淫らであったとはな」

「ち、違います!!指を、指を抜いてください」

「熟した果実のように顔を赤くするお主をもっと見ていたいが、今日はここまでにするとしよう」



 何とかそれ以上はされずにすんだが、何故か寂しさを感じてしまう。

 それから体の疼きを抑えながら自室へと戻る途中、葉流は先程のことを思い出していた。

 信玄に触られたとき、甘い痺れや優しさを感じたのだが、それは幸村と似たものであった。
 だが、二人と信長とでは全く違う感覚だったのだ。

 二人と信長の違いを考えたところでわかることはなく、その間に自室へと着いてしまい襖を開けると、月が雲で隠れてしまっているのか、部屋は真っ暗になっており、何も見えないまま歩みを進める。
 すると、突然腕を勢いよく引かれ、布団へと倒れてしまった。

 一体何がおきたのかわからないが、誰かが自分の上に乗っているのがわかる。

 月を隠していた雲が流れると、暗くて見えなかった視界が少しずつ見え始めた。
 すると、眉を寄せ、悲しそうな表情を浮かべる人物が瞳に映る。

 そこにいたのは佐助であり、何時もと様子が違う。



「何してんだよ……。信玄と何してたんだよッ!!」



 大きな声を上げ悲しみを含んだ声が耳に届く。

 その様子に、信玄とのことを見られていたのだと気づき、一気に恥ずかしくなると同時に、愛がないのに拒むことができなかった罪悪感が胸を締め付ける。
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