イケメン武将は恋してる

月夜

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第九幕 悪夢

一 悪夢

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しばらくすると足音が聞こえ、襖越しに信玄、幸村、佐助の声が聞こえてくる。



「失礼するぞ」

「どうかしたのか?」

「俺は幸村様が俺を呼んでいると聞き向かったが、幸村様は呼んでいないそうだ」



 何とかここにいることを知らせようと体を動かすと、微かに襖に脚がぶつかり音が鳴る。



「今、何か聞こえませんでしたか?」

「我には何も聞こえんかったが」

「ここにはいねぇみてぇだし、別のとこ探してみようぜ」



 3人は気付かないまま部屋を去ってしまい、足音が遠ざかっていくと襖が開かれた。



「残念でしたね。音は聞こえなかったようです」

「ッ……」

「フフ、申し遅れました。私は信長様に仕える家臣の一人、明智 光秀と申します」



 歴史上では、明智 光秀は織田 信長を裏切る存在だが、まさか甲斐に来たのが信長だけではなかったのだと知り、一人でこの二人から逃れることは難しい。

 葉流は押し入れから引きずり出されると、畳の上に転がされた。



「これであいつらも、ここへは来ぬだろう。天下を取る前に、いつか戦となる虎の女を俺の物にするのも悪くはない」



 恐怖を感じさせる笑みが向けられるが、ただ目に涙を浮かべることしかできず、伸ばされる手は葉流の頬を撫で更に恐怖を与えていく。



「恐怖で抵抗すらできぬようだな。光秀、足と口の縄を解いてやれ」

「御意」



 拘束が解かれたものの、足はすくみ、立ち上がることができずにいると、頬を滑り落ちるように撫でていく手に、顎を掴まれ唇を奪われてしまった。

 逃れようとすると後頭部に手が回され、拒むことさえできない。

 助けを呼ぼうと口を開くと、その隙間から舌が侵入し、舌は絡めとられ唾液が混ざり合う激しい口づけに頭がくらくらとしてしまう。
 視界の端ではその光景を見て笑みを浮かべる光秀の姿があり、見られている恥ずかしさで顔が熱を持つ。



「いい顔だな。口付けだけでその様子だと、お前の体はもたぬかもしれんな」



 唇が離されると上体を起こされ、今度は首筋へと舌が這い、下から上に舐め上げられると、背筋がぞくりと震え、手は胸を揉み、着物の上からだというのに突起を攻められていく。

 そんな姿を二人の前で晒しているのだと思うと耐えられない気持ちになるが、どうすることもできず、ただされるがままになるしかない。



「最後はここだな」

「イヤッ!もうやめてくださ、んッ!?」



 唇で口を塞がれ、手が下へと伸ばされると、着物をはだけさせられてしまう。

 心で助けを叫んだそのとき、襖が思い切り開かれ、姿を現したのは才蔵だった。

 はだけた着物に唾液で濡れる唇。
 首筋を目にした才蔵は、その光景に目を見張る。



「まさか、戻って来るとはな」

「その方に何をしている」

「ただ可愛がっていただけだ。それとも、この女は甲斐にとって価値のある存在だったのか?」



 挑発するように信長が言うと、才蔵は表情一つ崩さずに葉流を姫抱きにし、そのまま部屋から連れ出し葉流の自室へと連れていく。

 お互いに言葉を交わさないまま才蔵は葉流の手を拘束する縄をほどいてくれたが、あんな姿を見られては、まともに才蔵を見ることができず目を合わせることができない。

 才蔵は先程も今も何も言ってはくれず、簡単に捕まってしまった自分に怒っているのだろうかと反省する。



「すみません……。捕まってしまって」



 まだ恐怖で震えてしまう声で言うと、暖かな温もりが葉流の体を力強く抱き締めた。

 突然のことにどうしたらいいのかわからずにいると、才蔵の声が聞こえてくる。



「謝るのは俺の方だ。貴女を一人にし、怖い思いをさせてしまった」



 抱き締める腕に力が込められ、その声は、少し震えているように聞こえる。



「違います、霧隠さんは悪くありません。それに、ちゃんと助けに来てくれました」

「貴女は本当に優しいな。皆が惹かれる理由がわかった気がする」

「え……?」



 最後がよく聞き取れなかったため聞き返すが、なんと言ったのか教えてくれることはなかった。

 そのあと才蔵は、葉流が見つかったことや尾張の者に捕まっていたことを信玄と幸村に話してくれたが、葉流がされたことについては話さないでくれた。



「貴女が無事でよかったです」

「申し訳ありません、幸村様。今回の件、俺が目を離したために起こったこと」

「違います、真田さん!!霧隠さんは悪くありません」



 幸村に頭を下げる才蔵の姿を見て、葉流は自分が悪かったことを伝えると、幸村は怒るでもなく、よくこのお方を救ってくれたなと才蔵に声をかけた。



「しかし厄介なことになったものだ。尾張の者に、葉流が甲斐にとってただの女ではないということを知られてしまったな。まぁ、葉流に声をかけたということは、最初から気づいていたのだろうがな」

「才蔵がへましなくても、遅かれ早かれこうなってたってことだな」



 あの光秀という人が葉流に声をかけたとき、葉流とはお前かと聞いてきた。

 顔は知られていなかったようだが、少なからず名前は知られていたのだ。
 だとしたら、事前に情報を掴んでいたということになるわけなのだが、一体それはどこからなのか、信玄達もわからないようだ。



「お館様、一刻も早く尾張の者を甲斐から追い出しましょう」

「それはできぬ」

「何故ですか!?あのような者達を城に置いていては、また何をするかわかったものではありません!!」

「そんなことは我もわかっておる。だが、葉流の名をどこで知ったのか、元を断たねばなるまい」



 そのあと皆は話し合うらしく、葉流は才蔵が戻るまで自室からでないようにと言われ、一人部屋へと戻る。

 用心のためにと、いつも入浴の時間や葉流のお世話をしてくれている女中を見張り役として置いてくれることとなった。



「葉流様、先程のこともありますし、お体を綺麗にされたいのではないですか?」



 部屋へと戻る途中、女中に声をかけられ、正直触れられた感触がまだ残っており、お風呂に入りたいと思っていた葉流だが、部屋から出ないようにと信玄達から言われたため、才蔵が戻るのを待った方がいいのではないかと迷ってしまう。
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