【完結】ZERO─IRREGULAR─

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Episode8 それはきっと普通の日常

2 それはきっと普通の日常

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 そもそも誰のせいで予定が狂ったのかコイツ等はわかってない。
 今やってるのは遅れた分の宿題で、これが片付いたからといって全ての宿題を終えるわけじゃない。
 それどころかまたコイツ等が部屋に来るなんてことになれば同じ事になる。
 だから俺は二番と五番、四番にお礼と一緒に「今の宿題が片付いてもお前等はもう部屋に来るなよ」と笑みを浮かべ言う。
 その表情はきっと、笑っているようで笑ってないものになっていただろう。

 とりあえずその場は皆に任せて部屋に戻り焼きそばを食べると、宿題の続きを始めた。

 それからどれくらいの時間が経ったのか、遅れていた分の宿題を終わらせた俺はスマホで時刻を確認する。
 まだ夕飯を作る三十分前でホッとした俺が視線を横に向けると、置いていたはずの皿がなくなっていることに気づく。

 机の横にある縦長の棚。
 普段は使っていないが、皿を机に置いておくと邪魔になるんでその棚の上に乗せておいたんだが、取りに来たことに全く気づかなかった。
 一番さんの読書の集中力の凄さは薬で得たチカラなんじゃないかなんて最初俺は言ってたが、これじゃあ人のことは言えないな。

 そんなことを考えて苦笑いしてると、扉をノックする音が部屋に響き、三番さんの声が聞こえたんで扉を開けた。
 これが五番だったら勝手に入ってきて、それを俺は追い返しただろう。



「宿題の方がどうなったのか気になりまして。お邪魔をしてしまったらすみません」

「いえ、お陰様で今終わったところです」



 アイツ等は不純な動機ではあったが、三番さんや他の皆の協力があって終えることができたのは事実だからな。
 元々の原因はアイツ等のせいでもあるわけだけど、一応心の中で感謝だけはしておこう。

 それにしても三番さんとはあまりじっくり話したことはないけど、こんなに気にかけてくれるなんてやっぱり親切な人だよな。
 俺の記憶が消されずに済んだのもこの人のお陰だし。
 でも、なんでこんなに親切にしてくれるんだ。
 今までのバイトの人達は秘密を知ったら記憶を消していたっていうのに。



「どうかされましたか?」

「あ、いえ。ただ、なんで三番さんは俺にこんな親切にしてくれるのかなって。ここの事を色々知った時の件もそうですが」



 俺の言葉に微笑みを浮かべると「友達だからです」と思いもしない言葉が返ってきた。
 嬉しい言葉ではあるが、それじゃあ記憶を消さなかった事についての理由にはならない。
 そう思っていた時「それに、君の事を信じていましたから」と付け足され、その真っ直ぐに俺を見つめる瞳は真剣だった。

 それ以上この話に触れるのを避けるように三番さんは俺に時間を知らせ、もうそんな時間になってたのかと俺は三番さんと別れてキッチンへ向う。


 その後、夕飯を済ませ食器を片付けた俺は、今日の分の宿題をやるべく自室へ戻ると机の上に宿題の一部を置く。

 さあやるぞと思ったとき、勢いよく扉が開いて入ってきたのは二番、四番、五番の三人。
 慣れた手つきで二番は俺のリュックから漫画を取り出し「借りるぞ」と言ってその場で座り読み始める。

 四番と五番はというと、今日の朝の件でまだ言い合いをしていて、俺に答えを求めてくる。



「お前等、俺はもう部屋に来るなって言ったはずなんだが」

「私達はそんなの認めてないもん」



 五番の言葉に二番と四番が頷き、こういうときだけ意見が一緒の三人に溜息が漏れる。
 確かに俺の言葉にコイツ等は了承の言葉を何一つ言ってはいなかったが、このままではまた宿題のペースが乱されてしまうのはわかりきっている。

 俺は三人を部屋から追い出し、この部屋も四番の部屋のように内側からの鍵にならないだろうかと思った。
 四番の部屋以外鍵がないから、簡単に誰でも入れてしまう。
 なんだか研究を隠してる割には緩すぎるような気はするが、ここには四番の監視もいて、三番さんの記憶を消せるチカラなど便利なチカラを持った奴等がいるから博士も皆も厳重にする必要はないと思ってるんだろうな。

 確かに万が一誰かに知られても、一番さんの速さで直ぐに捕まえて三番さんが記憶を消せば直ぐに解決だ。
 でも俺は切実に願う、この部屋の内側に鍵がつけられることを。


 それから更に日にちは過ぎ、気づけば夏休みもあと二日。
 あの日から部屋に来た三人は毎回追い出していたし、一番さんは流石大人で、宿題をする夜は避けて部屋を訪れてくれるようになっていたから順調に宿題は進み、夏休み終了の二日を目前として宿題を全て終わらせることができた。

 それにしても二番と四番、五番の三人は、何度追い返しても毎日夜に来てたなと苦笑い。
 一番さんの様に、夜を避けるって考えはアイツ等にないんだろうか。

 でも、折角の夏休みで皆といるわけだし、宿題が終わった今くらいはアイツ等とも遊ばないとな。
 そう思った俺は昼飯を運んだときに、三人に昼飯が済んだら俺の部屋に来てもいいことを伝えた。
 五番は「これで四番に佳っチが私を好きだってわからせられるよ」なんて言っていたが、あえてスルーした。
 まあ、あとから否定しても今否定しても五番は煩くなるだろうけどな。
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