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Episode4 土下座するんでもう勘弁
1 土下座するんでもう勘弁
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あれから数週間が過ぎ、研究所のバイトにも慣れ始めた頃、やってきたのは夏休み。
必要なものをリュックに入れて向かうのは、勿論研究所。
迷わずに行けるようになったお陰で五番が駆けつけてくることもなくなり、森まで行けば一時間で研究所に着けるようになった。
帰りや買い出しには時間がかかるという理由から、五番に担がれるわけだが。
家で朝飯を済ませてから研究所に到着したのは、お昼になる一時間前。
早速自室に荷物を置くと、一番さんから順番に挨拶をしに向かう。
夏休みの間ここにいるわけだし、いくら慣れたとはいえ挨拶はしとかないとな。
ノックをすれば少しして扉が開く。
もう慣れてしまったが、この前五番に話したら「一番が毎回出る!?」と驚いていた。
一緒にいた二番まで驚いてるんだから、余程珍しいことなんだろう。
ただ不思議なのは「俺達の時は一回も出た事ねーんだけだな」という二番の言葉。
出てきたら奇跡とまで言っていたが、なんで俺のときだけ出てくれるんだろうか。
まあ、そのお陰で冷めないうちに食事も届けられるし、こっちとしては有り難い。
「なんだ」
「今日から大学が夏休みに入るんで、住み込みでバイトをする報告に来ました」
一番さんや二番には許可を取ってるから知ってるだろうけど。
「話は終わりか。なら俺は読書に戻る」
そう言って扉を閉める一番さんだけど、最近では少し口を利いてくれることが増えた気がする。
本当に少しだけど。
次の挨拶は二番。
まあ、二番も一番さん同様に許可を取ってるから知ってるんだが。
「おう、佳! そういや今日からだったな大学の夏休み」
「ああ。だから一応挨拶に来たんだ」
そこから二番と漫画の話で盛り上がり、つい話し込んでしまった。
最初からフレンドリーなヤツだったけど、俺がバイトを始めた初日の夜、研究所の外で話したあの日以来、更に親しくなった気がする。
友達になれるのかなんて聞かれたときは驚いたし、同時に照れくさかったが嬉しかった。
きっとあの時から、俺と二番は友達なんだ。
俺のおすすめの漫画持ってきたらハマりやがるし、結構気は合うんだよな。
好みが合うというか。
だから会う度につい話し込んでしまう。
「悪い、俺他の人にも挨拶しねーとだから」
「そうか。まあ、夏休みの間いるんだし、いつでも話せるからな」
嬉しそうに言う二番の姿を見て、俺もニッと笑い「ああ」と答えた。
少し時間は経ってしまったが、次に向かうのは三番さんの部屋。
ノックをすればいつもの優しい声音が聞こえる。
中に入れば珈琲を飲むいつもの光景。
俺は大学が夏休みに入ったからその間ここで住み込みでバイトをすることを伝えた。
一番さんや二番には前から許可を取っていたことを伝えると「あの二人が許可したんですね。こちらとしても助かるのでよろしくお願いします」と手を差し伸べられ、俺はその手を握る。
この数週間の間で三番さんの事も少しだがわかるようになった。
珈琲はブラックが好きなこと、恋愛小説を愛読し、一番さんや二番の決定には基本的に従う。
俺は皆と仲良くなれたわけじゃないけど、少しでもここにいる人達の力になれたら、なんて思ってしまう。
何のチカラも持たないただの人間の俺に、何かできるはずないのに。
「それじゃあ、他の皆にも挨拶に行くんで失礼します」
「あ、佳くん」
呼び止められたことより、初めて三番さんに名前を呼ばれたことに驚き、その場で立ち止まると振り返る。
「あまり無理をしてはいけませんよ」
優しい声音だ。
俺のことを気遣ってくれているんだろう。
嬉しくてニッと笑みを浮かべ「はい」と答えると、四番の部屋へと向かう。
未だに謎が多い四番。
ほとんど部屋に閉じこもってるし、俺が声をかけても基本的に返事はない。
ただ扉を開けて飯や洗濯を受け取るくらいだ。
最初は困ってる時に助けてくれたり、一言二言くらいは話してくれたのに、今では無言。
真っ暗でモニターの明かりしかない部屋で顔を伏せてる姿を見るのには慣れたが、こんな調子だからあの時の礼すら未だ言えてない。
今日こそは一言でも声を出させてやると意気込みながら扉をノックしようとすると、その前に扉が開く。
もう慣れて驚かなくなったが。
「今日から大学が夏休みに入るんで、その間ここで住み込みする事になったからよろしくな。一番さんと二番には許可取ってるから」
ニッと笑って明るく言うが反応なし。
これでは会話が終わると思い、今まで言えなかった礼を言おうとすると扉が閉められた。
毎度毎度俺が礼を言おうとする度に扉が閉まるなんて、礼を言うなって事なのか。
いや、世話になったんだし礼は伝えるべきだよな。
なかなか言える機会がないけど、夏休みは長いしそんな機会いくらでも出来るだろう。
そして、挨拶をしてないのはあと一人だけなわけだが、正直会いたくない。
俺の勘が言っている、会うのは危険だと。
まあわざわざアイツに挨拶に行かなくても夏休みの間いることは知ってるわけだし問題ないだろう。
なんて思っていたら「佳っチー!」という大きさ叫びとともに俺の背中は衝撃を受け前にぶっ倒れた。
あんな呼び方でこんな馬鹿力に突っ込んでくる奴は俺が知る限り一人だけ。
痛む背中を擦りながら立ち上がり振り返ると、そこには笑顔を浮かべている五番の姿。
人をぶっ飛ばしといてこの笑顔、恐怖以外の何物でもない。
「お前な、俺は普通の人間なんだから加減しろ!」
「え? 加減したよ?」
人差し指を下唇に当てながら言う仕草はわざとらしくも思えるが、残念ながらコイツは純粋なアホ。
そんな奴に嘘なんかつけるはずもなく、言ってることは事実なんだろう。
確かに本気でぶつかられてたら、前に少し吹っ飛んで倒れるだけじゃすまなかっただろうから一応加減はしたようだ。
それでもこっちは背中がズキズキして重症だがな。
コイツのする事にも大分慣れてはきたが、予想できない行動には毎度驚かされる。
よりによってなんで避けようとしていた相手が現れるのか。
まさか特殊な電波でもキャッチしてるんじゃないだろうな。
五番なら有り得そうと本気で疑いたくなる。
「で、一体なんのようだ。まさか体当たりするためだけに呼んだんじゃないんだろ」
「よきぞ聞いてくれた。ジャジャーン! これを見よ」
俺の目の前に突きつけられた紙の一番上には、デカデカと夏休みの計画と書かれている。
すっかり忘れていたがコイツ、話も聞かずに夏休みの計画立てるとか言い出したから放置してたんだよな。
夏休みといっても、俺はバイトでここに来てるわけで、それ以外の時間は大学で出された宿題があるからそれをやらなくてはいけない。
つまり、コイツと遊んでる時間なんてないってわけだ。
なのに人の話も聞かずに計画なんて立ててるコイツが悪い。
少し可哀想な気もするが、現実を突きつける必要がある。
「悪いが、夏休みの間はここのバイトと大学の宿題でお前と遊ぶ時間はない」
「えー! そんなの後回しにすればいいじゃん」
こういう五番みたいな奴がきっと、夏休み最後の日に慌てだすんだろうなと思いながら再度断る。
正直に言えば、宿題は一日の研究所での仕事を終えた夜にやるから、バイトの合間になら時間はある。
だが、何故その時間を五番に使わなければいけない。
それも、こんな体力底なしの疲れ知らずに付き合えば俺の体力どころか命の危機すら感じる。
今もしつこく遊ぼうと誘ってくる五番を断り続けていると「いいこと閃いた!」なんて言い出した。
五番の閃きにまともなものがあるのかと思いながら話だけ聞いてやると、五番が俺のバイトの雑用や宿題を手伝うと言い出した。
バイトの雑用は兎も角、見るからに俺より年下なコイツに大学の宿題ができるはずないだろうと溜息を吐く。
「あまりアホな発言はするなよ。ただでさえアホなんだからな」
「アホアホ言わないでよ! 大丈夫だって。私にドンと任せなさい」
そう言いながら自分の胸を叩いて咽てる五番のどこに任せられる要素があるのか。
逆に仕事が増えなきゃいいが、なんて思いながら早速昼飯の準備をする為にキッチンへ向かう。
やる気満々で横に並んで歩く五番はまるで子供のようだ。
見た感じ十代だろうから間違いではない。
必要なものをリュックに入れて向かうのは、勿論研究所。
迷わずに行けるようになったお陰で五番が駆けつけてくることもなくなり、森まで行けば一時間で研究所に着けるようになった。
帰りや買い出しには時間がかかるという理由から、五番に担がれるわけだが。
家で朝飯を済ませてから研究所に到着したのは、お昼になる一時間前。
早速自室に荷物を置くと、一番さんから順番に挨拶をしに向かう。
夏休みの間ここにいるわけだし、いくら慣れたとはいえ挨拶はしとかないとな。
ノックをすれば少しして扉が開く。
もう慣れてしまったが、この前五番に話したら「一番が毎回出る!?」と驚いていた。
一緒にいた二番まで驚いてるんだから、余程珍しいことなんだろう。
ただ不思議なのは「俺達の時は一回も出た事ねーんだけだな」という二番の言葉。
出てきたら奇跡とまで言っていたが、なんで俺のときだけ出てくれるんだろうか。
まあ、そのお陰で冷めないうちに食事も届けられるし、こっちとしては有り難い。
「なんだ」
「今日から大学が夏休みに入るんで、住み込みでバイトをする報告に来ました」
一番さんや二番には許可を取ってるから知ってるだろうけど。
「話は終わりか。なら俺は読書に戻る」
そう言って扉を閉める一番さんだけど、最近では少し口を利いてくれることが増えた気がする。
本当に少しだけど。
次の挨拶は二番。
まあ、二番も一番さん同様に許可を取ってるから知ってるんだが。
「おう、佳! そういや今日からだったな大学の夏休み」
「ああ。だから一応挨拶に来たんだ」
そこから二番と漫画の話で盛り上がり、つい話し込んでしまった。
最初からフレンドリーなヤツだったけど、俺がバイトを始めた初日の夜、研究所の外で話したあの日以来、更に親しくなった気がする。
友達になれるのかなんて聞かれたときは驚いたし、同時に照れくさかったが嬉しかった。
きっとあの時から、俺と二番は友達なんだ。
俺のおすすめの漫画持ってきたらハマりやがるし、結構気は合うんだよな。
好みが合うというか。
だから会う度につい話し込んでしまう。
「悪い、俺他の人にも挨拶しねーとだから」
「そうか。まあ、夏休みの間いるんだし、いつでも話せるからな」
嬉しそうに言う二番の姿を見て、俺もニッと笑い「ああ」と答えた。
少し時間は経ってしまったが、次に向かうのは三番さんの部屋。
ノックをすればいつもの優しい声音が聞こえる。
中に入れば珈琲を飲むいつもの光景。
俺は大学が夏休みに入ったからその間ここで住み込みでバイトをすることを伝えた。
一番さんや二番には前から許可を取っていたことを伝えると「あの二人が許可したんですね。こちらとしても助かるのでよろしくお願いします」と手を差し伸べられ、俺はその手を握る。
この数週間の間で三番さんの事も少しだがわかるようになった。
珈琲はブラックが好きなこと、恋愛小説を愛読し、一番さんや二番の決定には基本的に従う。
俺は皆と仲良くなれたわけじゃないけど、少しでもここにいる人達の力になれたら、なんて思ってしまう。
何のチカラも持たないただの人間の俺に、何かできるはずないのに。
「それじゃあ、他の皆にも挨拶に行くんで失礼します」
「あ、佳くん」
呼び止められたことより、初めて三番さんに名前を呼ばれたことに驚き、その場で立ち止まると振り返る。
「あまり無理をしてはいけませんよ」
優しい声音だ。
俺のことを気遣ってくれているんだろう。
嬉しくてニッと笑みを浮かべ「はい」と答えると、四番の部屋へと向かう。
未だに謎が多い四番。
ほとんど部屋に閉じこもってるし、俺が声をかけても基本的に返事はない。
ただ扉を開けて飯や洗濯を受け取るくらいだ。
最初は困ってる時に助けてくれたり、一言二言くらいは話してくれたのに、今では無言。
真っ暗でモニターの明かりしかない部屋で顔を伏せてる姿を見るのには慣れたが、こんな調子だからあの時の礼すら未だ言えてない。
今日こそは一言でも声を出させてやると意気込みながら扉をノックしようとすると、その前に扉が開く。
もう慣れて驚かなくなったが。
「今日から大学が夏休みに入るんで、その間ここで住み込みする事になったからよろしくな。一番さんと二番には許可取ってるから」
ニッと笑って明るく言うが反応なし。
これでは会話が終わると思い、今まで言えなかった礼を言おうとすると扉が閉められた。
毎度毎度俺が礼を言おうとする度に扉が閉まるなんて、礼を言うなって事なのか。
いや、世話になったんだし礼は伝えるべきだよな。
なかなか言える機会がないけど、夏休みは長いしそんな機会いくらでも出来るだろう。
そして、挨拶をしてないのはあと一人だけなわけだが、正直会いたくない。
俺の勘が言っている、会うのは危険だと。
まあわざわざアイツに挨拶に行かなくても夏休みの間いることは知ってるわけだし問題ないだろう。
なんて思っていたら「佳っチー!」という大きさ叫びとともに俺の背中は衝撃を受け前にぶっ倒れた。
あんな呼び方でこんな馬鹿力に突っ込んでくる奴は俺が知る限り一人だけ。
痛む背中を擦りながら立ち上がり振り返ると、そこには笑顔を浮かべている五番の姿。
人をぶっ飛ばしといてこの笑顔、恐怖以外の何物でもない。
「お前な、俺は普通の人間なんだから加減しろ!」
「え? 加減したよ?」
人差し指を下唇に当てながら言う仕草はわざとらしくも思えるが、残念ながらコイツは純粋なアホ。
そんな奴に嘘なんかつけるはずもなく、言ってることは事実なんだろう。
確かに本気でぶつかられてたら、前に少し吹っ飛んで倒れるだけじゃすまなかっただろうから一応加減はしたようだ。
それでもこっちは背中がズキズキして重症だがな。
コイツのする事にも大分慣れてはきたが、予想できない行動には毎度驚かされる。
よりによってなんで避けようとしていた相手が現れるのか。
まさか特殊な電波でもキャッチしてるんじゃないだろうな。
五番なら有り得そうと本気で疑いたくなる。
「で、一体なんのようだ。まさか体当たりするためだけに呼んだんじゃないんだろ」
「よきぞ聞いてくれた。ジャジャーン! これを見よ」
俺の目の前に突きつけられた紙の一番上には、デカデカと夏休みの計画と書かれている。
すっかり忘れていたがコイツ、話も聞かずに夏休みの計画立てるとか言い出したから放置してたんだよな。
夏休みといっても、俺はバイトでここに来てるわけで、それ以外の時間は大学で出された宿題があるからそれをやらなくてはいけない。
つまり、コイツと遊んでる時間なんてないってわけだ。
なのに人の話も聞かずに計画なんて立ててるコイツが悪い。
少し可哀想な気もするが、現実を突きつける必要がある。
「悪いが、夏休みの間はここのバイトと大学の宿題でお前と遊ぶ時間はない」
「えー! そんなの後回しにすればいいじゃん」
こういう五番みたいな奴がきっと、夏休み最後の日に慌てだすんだろうなと思いながら再度断る。
正直に言えば、宿題は一日の研究所での仕事を終えた夜にやるから、バイトの合間になら時間はある。
だが、何故その時間を五番に使わなければいけない。
それも、こんな体力底なしの疲れ知らずに付き合えば俺の体力どころか命の危機すら感じる。
今もしつこく遊ぼうと誘ってくる五番を断り続けていると「いいこと閃いた!」なんて言い出した。
五番の閃きにまともなものがあるのかと思いながら話だけ聞いてやると、五番が俺のバイトの雑用や宿題を手伝うと言い出した。
バイトの雑用は兎も角、見るからに俺より年下なコイツに大学の宿題ができるはずないだろうと溜息を吐く。
「あまりアホな発言はするなよ。ただでさえアホなんだからな」
「アホアホ言わないでよ! 大丈夫だって。私にドンと任せなさい」
そう言いながら自分の胸を叩いて咽てる五番のどこに任せられる要素があるのか。
逆に仕事が増えなきゃいいが、なんて思いながら早速昼飯の準備をする為にキッチンへ向かう。
やる気満々で横に並んで歩く五番はまるで子供のようだ。
見た感じ十代だろうから間違いではない。
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