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Episode2 成功例達
1 成功例達
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「なんでここにいるんだ?」
「それはこっちのセリフだよ! 今日はバイトの日じゃないのに来るんだもん。まあ嬉しいからいいんだけどね」
そう言いながらヒョイッと俺を担ぐと、昨夜のように俺はそのまま研究所へと連れて行かれた。
こんな姿誰にも見せられねーと思っていると、研究所から二番が出て来てこっちに近付いてくる。
俺はこの状態が恥ずかしくて、直ぐ様おろしてもらうと二番に視線を向けた。
「なんでお前がいるんだ? おい五番、コイツに昨日説明したんだろうな」
「ちゃんと全部説明したって」
ぷーっと頬を膨らます五番を見て、二番の表情が険しくなる。
「お前、コイツに何話しやがった」
「だーかーらー、バイトでする事とか、博士の事とか、私達の事とか」
その言葉で二番は五番を怒鳴りつけた。
話を聞く感じだとどうやら、博士のことや研究、成功例達のことなど全ては秘密の事だったらしく、俺に二番が伝えるのはバイトの内容だけでよかったらしい。
俺もアッサリ話されたから昨日は驚いたが、確かに外部に漏れたら大変だしな。
「博士と約束しただろうが。この事は誰にも漏らすなって。お前はいつも面倒を増やしやがって」
「うう……ごめんなさい」
顔を伏せて反省する五番だが、二番のお説教は終わらない。
昨日路地裏で倒れてた人も、俺と同じ雑用係のバイトをしてたらしく、勿論詳しいことは話さずに。
だが、偶然チカラを見られてしまったことでその男は驚いて逃げ出した。
そこで、普段この研究所から出てはいけない筈の二人が、男を捕まえるはめになったんだということが五番のお説教からわかった。
というより、二番も説教しながら色々話してるけどこれはいいんだろうか。
「あれは私が悪いんじゃないよ! 二番が怒って片手でベッドなんて投げつけてきたからじゃん」
「怒らせたのは誰だよ!!」
流石にベッドを片手で持ち上げてる現場なんて見たら驚きと恐怖でバイトの人が逃げ出したのは頷ける。
「あのさ、昨日聞いたことは誰にも話してないし、誰かに話すつもりもないから安心しろよ」
「それを信じろってか?」
ギロリと鋭い視線が俺を射抜く。
でも、俺が今言ったことは事実だ。
視線を逸らさず真っ直ぐに二番を見ると、二番は溜息を吐いて「わかった。信じてやるよ」と言ってくれた。
その言葉にホッとしたのも束の間。
二番の顔が俺の目の前に近付き息を呑む。
「その言葉が嘘だったときはただじゃおかねーからな」
それだけ言い残し研究所の中へと消えていく二番。
俺は全身の力がスッと抜けた気がした。
「あの目はマジなやつだったね」
なんてニコニコしながら言ってくる五番。
今さっきまで説教くらって反省してたくせにケロッとしてやがる。
昨日はこの笑顔を可愛くも思い悲しくも思ったが、今はイラつきを感じて片手で五番の頬を引っ張る。
もとあと言えば、お前が説教されて泣きそうになってたのを助けてやったんだろうがと言いたいが、聞いたのは俺だし、話してくれたことで色々とわかって理解できたってこともあり言えない。
何も知らないままだったら、バイトの人に膝蹴りを入れてたコイツ等の事を怖がっていたに違いないからな。
「いひゃい! いひゃい!」
無言で頬を引っ張ったあと手を離すと、五番は頬を擦りながら俺にムッとした表情を向ける。
「もう、女の子は大切に扱ってよね。ところで、バイトでもない日にどうしたの?」
そういえば話してなかったことを思い出し、気になったから来たと伝える。
昨日あんな話をされたんだ、気にならないはずがない。
「ダメだよー! そんな私に惚れたからって来ちゃうなんてー」
「いや、それはない」
最初は可愛いとか思ったり、正直心を射抜かれかけたが、今はコイツがただのアホだということがなんとなくわかったんでときめくとかは一切ない。
なんかシュンとした姿が子犬のように見えて流石に正直に言い過ぎたかなと思い「よかったら研究所の中を案内してくれないか」と言えば、五番は直ぐにケロッとして研究所の中に俺を引っ張っていく。
その姿を見て、やっぱり単純でアホな奴だと再確認した。
そこからは、五番による研究所案内が始まった。
先ず最初に向かったのは、今さっき会ったばかりの二番の部屋。
コイツは説教されたばかりだということをもう忘れているんだろうか。
五番が扉をノックもせずに開けると、思った通りに眉間にシワを寄せてこちらを見る二番の姿。
昨日は二人仲がいいのかなと思ったが、ベッドを投げるような喧嘩をしたり、さっきの説教といい、二番にとって五番は避けたい対象なんだろうなと理解する。
きっと今までもいろんなトラブルの種をまいては二番を怒らせてきたんだろう。
なんか今も部屋の主無視して俺に説明始めてるし。
「あー、二番に迷惑だろうから次を案内してくれないか?」
「りょーかーい! じゃあ次は四番だー!」
そう言いながら案内相手である俺を置いていく五番に溜息を漏らすと、肩に手を置かれ横を見る。
なんか無言で眉を顰める二番の表情が全てを語っているように思えた。
五番に関わると一番面倒であるということを。
俺が二番の部屋から出ると、戻ってきた五番が俺の腕を引っ張り次の場所へと案内する。
忘れていたが、五番の体力は疲れ知らずだった。
だがこっちは今の一部屋だけで精神的に疲れた気がする。
「ほらほら、次は四番だよ」
「一応学校終わりで俺疲れてるから、もっとゆっくり頼む」
俺の言葉は五番に届いているんだろうか。
全く足を緩める様子がないから聞こえてないんだろうな。
だが、今から向かう四番。
まだどんな人物なのか、どんなチカラがあるのかも知らない。
考えてみれば五番が成功例の最後なら、その前の一から四がいるということ。
俺が会ってないのは、一番、三番、四番の三人。
一応バイトとしてコイツ等の雑用をするわけだし、先に挨拶くらいはしとかないとな。
扉の前で立ち止まった五番。
ここが四番の部屋なんだろうが、またノックもせずに入るんだろうかと思っていると、今度は扉をノックした。
「四番、昨日話した新しいバイト連れてきたよー」
五番が扉越しに声をかけるが何の反応もない。
これは留守なんじゃないかと思っていたその時、扉が開き現れたのは顔を伏せた男の子。
年齢からして十五歳くらいに思えるが、俯いているその姿からは顔が見えない。
部屋の中は暗く、何やら複数のモニターの明かりが見える。
「昨日話した新しいバイトだよ」
「知ってる」
その一言だけ口にして、四番は扉を閉めてしまった。
五番や二番みたいな感じの奴らばかりなのかと思ってたんだが、四番は何というか二人とは対称的に違うみたいだ。
五番に案内されて次に向かったのは三番の部屋。
四番を見て、ここにいる人物でも様々な奴らがいるんだなと思っていた俺に、歩きながら五番が話し出す。
元々俺についてどうするかという話し合いは、四番を除いた一番から五番で話し合って決めたらしく、その中でも四番はここでの監視役もしてるため、俺のことはすでにモニターで見て知っているらしい。
それを聞いて、さっき部屋にあったモニターを思い出し納得する。
「さっきだって佳っチのこと教えてくれたの四番なんだから」
ここに近づく者がいないかの監視役ということか。
だが、実験の成功例なら五番や二番のように特殊なチカラを持ってるはず。
その事について五番に聞くと、四番には何のチカラもないと聞かされた。
実験を受けていないということなのか更に尋ねれば、実験は受けているらしい。
ただ、何のチカラも持たなかった。
彼は実験で成功例でもないのに唯一死ななかった人間。
ただそれだけであり、それ以上の価値はなく、モニターでの監視役としてこの場所にいるらしい。
博士が興味を持つのは成功例のみ。
そうでない者には興味がなく、チカラがなくても監視役くらいなら出来るだろうと任されたようだ。
この場所から離れることが一番可能な人物なのにここにいるのは、きっと五番のように父親のような存在から離れることはできないんだろう。
たとえその父親が自分に興味がないとわかっていても。
この研究所にいる実験体にされた人達の思いを知る度に、俺は自分の事のように胸が締め付けられる。
そして、佳っチとは何なのか。
そんな呼び方するやつは俺の周りにはいないが、番号の名前しかないこいつらのことを考えれば何も言えない。
「それはこっちのセリフだよ! 今日はバイトの日じゃないのに来るんだもん。まあ嬉しいからいいんだけどね」
そう言いながらヒョイッと俺を担ぐと、昨夜のように俺はそのまま研究所へと連れて行かれた。
こんな姿誰にも見せられねーと思っていると、研究所から二番が出て来てこっちに近付いてくる。
俺はこの状態が恥ずかしくて、直ぐ様おろしてもらうと二番に視線を向けた。
「なんでお前がいるんだ? おい五番、コイツに昨日説明したんだろうな」
「ちゃんと全部説明したって」
ぷーっと頬を膨らます五番を見て、二番の表情が険しくなる。
「お前、コイツに何話しやがった」
「だーかーらー、バイトでする事とか、博士の事とか、私達の事とか」
その言葉で二番は五番を怒鳴りつけた。
話を聞く感じだとどうやら、博士のことや研究、成功例達のことなど全ては秘密の事だったらしく、俺に二番が伝えるのはバイトの内容だけでよかったらしい。
俺もアッサリ話されたから昨日は驚いたが、確かに外部に漏れたら大変だしな。
「博士と約束しただろうが。この事は誰にも漏らすなって。お前はいつも面倒を増やしやがって」
「うう……ごめんなさい」
顔を伏せて反省する五番だが、二番のお説教は終わらない。
昨日路地裏で倒れてた人も、俺と同じ雑用係のバイトをしてたらしく、勿論詳しいことは話さずに。
だが、偶然チカラを見られてしまったことでその男は驚いて逃げ出した。
そこで、普段この研究所から出てはいけない筈の二人が、男を捕まえるはめになったんだということが五番のお説教からわかった。
というより、二番も説教しながら色々話してるけどこれはいいんだろうか。
「あれは私が悪いんじゃないよ! 二番が怒って片手でベッドなんて投げつけてきたからじゃん」
「怒らせたのは誰だよ!!」
流石にベッドを片手で持ち上げてる現場なんて見たら驚きと恐怖でバイトの人が逃げ出したのは頷ける。
「あのさ、昨日聞いたことは誰にも話してないし、誰かに話すつもりもないから安心しろよ」
「それを信じろってか?」
ギロリと鋭い視線が俺を射抜く。
でも、俺が今言ったことは事実だ。
視線を逸らさず真っ直ぐに二番を見ると、二番は溜息を吐いて「わかった。信じてやるよ」と言ってくれた。
その言葉にホッとしたのも束の間。
二番の顔が俺の目の前に近付き息を呑む。
「その言葉が嘘だったときはただじゃおかねーからな」
それだけ言い残し研究所の中へと消えていく二番。
俺は全身の力がスッと抜けた気がした。
「あの目はマジなやつだったね」
なんてニコニコしながら言ってくる五番。
今さっきまで説教くらって反省してたくせにケロッとしてやがる。
昨日はこの笑顔を可愛くも思い悲しくも思ったが、今はイラつきを感じて片手で五番の頬を引っ張る。
もとあと言えば、お前が説教されて泣きそうになってたのを助けてやったんだろうがと言いたいが、聞いたのは俺だし、話してくれたことで色々とわかって理解できたってこともあり言えない。
何も知らないままだったら、バイトの人に膝蹴りを入れてたコイツ等の事を怖がっていたに違いないからな。
「いひゃい! いひゃい!」
無言で頬を引っ張ったあと手を離すと、五番は頬を擦りながら俺にムッとした表情を向ける。
「もう、女の子は大切に扱ってよね。ところで、バイトでもない日にどうしたの?」
そういえば話してなかったことを思い出し、気になったから来たと伝える。
昨日あんな話をされたんだ、気にならないはずがない。
「ダメだよー! そんな私に惚れたからって来ちゃうなんてー」
「いや、それはない」
最初は可愛いとか思ったり、正直心を射抜かれかけたが、今はコイツがただのアホだということがなんとなくわかったんでときめくとかは一切ない。
なんかシュンとした姿が子犬のように見えて流石に正直に言い過ぎたかなと思い「よかったら研究所の中を案内してくれないか」と言えば、五番は直ぐにケロッとして研究所の中に俺を引っ張っていく。
その姿を見て、やっぱり単純でアホな奴だと再確認した。
そこからは、五番による研究所案内が始まった。
先ず最初に向かったのは、今さっき会ったばかりの二番の部屋。
コイツは説教されたばかりだということをもう忘れているんだろうか。
五番が扉をノックもせずに開けると、思った通りに眉間にシワを寄せてこちらを見る二番の姿。
昨日は二人仲がいいのかなと思ったが、ベッドを投げるような喧嘩をしたり、さっきの説教といい、二番にとって五番は避けたい対象なんだろうなと理解する。
きっと今までもいろんなトラブルの種をまいては二番を怒らせてきたんだろう。
なんか今も部屋の主無視して俺に説明始めてるし。
「あー、二番に迷惑だろうから次を案内してくれないか?」
「りょーかーい! じゃあ次は四番だー!」
そう言いながら案内相手である俺を置いていく五番に溜息を漏らすと、肩に手を置かれ横を見る。
なんか無言で眉を顰める二番の表情が全てを語っているように思えた。
五番に関わると一番面倒であるということを。
俺が二番の部屋から出ると、戻ってきた五番が俺の腕を引っ張り次の場所へと案内する。
忘れていたが、五番の体力は疲れ知らずだった。
だがこっちは今の一部屋だけで精神的に疲れた気がする。
「ほらほら、次は四番だよ」
「一応学校終わりで俺疲れてるから、もっとゆっくり頼む」
俺の言葉は五番に届いているんだろうか。
全く足を緩める様子がないから聞こえてないんだろうな。
だが、今から向かう四番。
まだどんな人物なのか、どんなチカラがあるのかも知らない。
考えてみれば五番が成功例の最後なら、その前の一から四がいるということ。
俺が会ってないのは、一番、三番、四番の三人。
一応バイトとしてコイツ等の雑用をするわけだし、先に挨拶くらいはしとかないとな。
扉の前で立ち止まった五番。
ここが四番の部屋なんだろうが、またノックもせずに入るんだろうかと思っていると、今度は扉をノックした。
「四番、昨日話した新しいバイト連れてきたよー」
五番が扉越しに声をかけるが何の反応もない。
これは留守なんじゃないかと思っていたその時、扉が開き現れたのは顔を伏せた男の子。
年齢からして十五歳くらいに思えるが、俯いているその姿からは顔が見えない。
部屋の中は暗く、何やら複数のモニターの明かりが見える。
「昨日話した新しいバイトだよ」
「知ってる」
その一言だけ口にして、四番は扉を閉めてしまった。
五番や二番みたいな感じの奴らばかりなのかと思ってたんだが、四番は何というか二人とは対称的に違うみたいだ。
五番に案内されて次に向かったのは三番の部屋。
四番を見て、ここにいる人物でも様々な奴らがいるんだなと思っていた俺に、歩きながら五番が話し出す。
元々俺についてどうするかという話し合いは、四番を除いた一番から五番で話し合って決めたらしく、その中でも四番はここでの監視役もしてるため、俺のことはすでにモニターで見て知っているらしい。
それを聞いて、さっき部屋にあったモニターを思い出し納得する。
「さっきだって佳っチのこと教えてくれたの四番なんだから」
ここに近づく者がいないかの監視役ということか。
だが、実験の成功例なら五番や二番のように特殊なチカラを持ってるはず。
その事について五番に聞くと、四番には何のチカラもないと聞かされた。
実験を受けていないということなのか更に尋ねれば、実験は受けているらしい。
ただ、何のチカラも持たなかった。
彼は実験で成功例でもないのに唯一死ななかった人間。
ただそれだけであり、それ以上の価値はなく、モニターでの監視役としてこの場所にいるらしい。
博士が興味を持つのは成功例のみ。
そうでない者には興味がなく、チカラがなくても監視役くらいなら出来るだろうと任されたようだ。
この場所から離れることが一番可能な人物なのにここにいるのは、きっと五番のように父親のような存在から離れることはできないんだろう。
たとえその父親が自分に興味がないとわかっていても。
この研究所にいる実験体にされた人達の思いを知る度に、俺は自分の事のように胸が締め付けられる。
そして、佳っチとは何なのか。
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