81 / 101
約束なんていらない/テーマ:初めての○○ ※別サイトにて優秀作品
しおりを挟む
中学三年になっても、私は未だ恋というものをしたことがなく、周りの恋愛話はいつも聞き役。
そんな私が夏休みに恋をするなんて、自分自身信じられない今現在。
彼の事を思い出すだけで胸が高鳴り顔が熱くなる。
初めての感情に戸惑ったけど、友達の話や漫画で恋した人の感覚にこんなのがあった。
これは間違いなく恋と呼ばれるもの。
でも、もしかしたら違っているかもしれない。
恋をするとそうなるといっても、鼓動が高鳴ったり顔に熱が集まることなんてそれ以外でもあり得ること。
例えば、走ったとき。
例えば、貧血な私が長湯をしたとき。
そう、これを恋と断言するにはまだ早い。
先ずは確かめる必要がある。
翌日。
私は彼と会った図書館を訪れた。
昨日いたからといって今日もいるとは限らないけど、名前も連絡先も知らないんじゃこれしか方法がない。
取り敢えず歩き回って探すが、昨日いた場所にも、他の棚の列にもその姿はない。
時間も昨日会ったくらいに合わせたんだけど、そんな簡単にはやっぱり会えないみたい。
肩を落とし、今日は諦めて明日また来てみようと思い、折角なので自分の読みたい本を探す。
向かったのは恋愛小説がズラっと並ぶ棚。
気になったのを一冊手にして椅子に座る。
今まで恋愛を少しでも理解しようと思い、恋愛漫画や恋愛小説を何度か読んできたけど、ときめいた事は一度もない。
友達に「これ、めっちゃキュンキュンするよ」と勧められた小説も、恋を知らない私には何のときめきも与えなかった。
なのに、今読んでいるこの小説に私の胸はときめいている。
先が気になってどんどん捲られるページ。
読み終えた時には何とも言えない満足感が心を満たし、他のも読んで見ようと先程の棚に行く。
手にしたのは恋愛小説二冊。
いつになく熱中して読んでいると、あっという間に二冊読み終え、外が暗くなり始めていることに気づく。
そろそろ帰らないとと、二冊の本を手に持ったとき、一瞬目の前の椅子に座っている人物が瞳に映る。
見間違いかと思いながらゆっくり視線を上げると、微笑みを浮かべ、顔の横で片手を振る男の人の姿。
その人物は、まさに今日探していた人。
何故か身体が固まる。
こういうとき、手を振り返せばいいのか。
でも、昨日少しだけ話しただけの人相手にそんな風にして馴れ馴れしくないだろうか。
そんな格闘が脳内で繰り広げられていると、男の人は立ち上がり私の方へ来た。
「昨日ぶりだね。今日も恋愛小説かな」
「は、はい……」
昨日も私は恋愛小説を読みにここへ訪れていた。
たまには、棚の上にあるのも読んでみようとしたが、つま先立ちしても手は本に届かず。
踏み台がないかと、周りをキョロキョロとしても見当たらず困っていたら「はい」と言う声がして振り返った。
そこにいたのは、私と同い年くらいの男の人。
差し出された本は今私が取ろうとしていた恋愛小説。
「キミが取りたかったの、これで合ってるかな?」
「はい、ありがとうございます」
お礼を伝え受け取ると、男の人は「どういたしまして」と笑みを浮かべその場を去った。
その柔らかな笑みが私の脳内に残り、気づけば恋なんじゃないかという今に至る。
でもまさか、こんなに直ぐに会えるなんて思わなかった。
探しには来たものの、そう簡単に会えるわけないし、会ったところで何て声をかければいいのかすらわかっていなかったから。
あんな些細なことを相手が覚えているかもわからなかったのに、まさかその相手から声をかけてもらえるなんて。
今の私の心臓は、今までにないくらい高鳴っていた。
「その手に持っている二冊、よかったら僕にも貸してもらえないかな」
突然の言葉に上手く声が出ず、無言で二冊の本を両手で差し出すと、男の人はそれを受け取り「ありがとう」と笑みを浮かべた。
「今日はこの二冊を借りていくことにするよ。次に会った時に感想教えるね」
そう言って受付に行ってしまう男性。
名前も連絡先も聞けなかった。
でも「次に会ったときに」と言った男の人の言葉が、また会えるという意味に思えて、私は口元を緩める。
約束をしたわけでもないのに。
やっぱり、私のこの気持ちは初めての恋なんだと実感した瞬間だった。
《完》
そんな私が夏休みに恋をするなんて、自分自身信じられない今現在。
彼の事を思い出すだけで胸が高鳴り顔が熱くなる。
初めての感情に戸惑ったけど、友達の話や漫画で恋した人の感覚にこんなのがあった。
これは間違いなく恋と呼ばれるもの。
でも、もしかしたら違っているかもしれない。
恋をするとそうなるといっても、鼓動が高鳴ったり顔に熱が集まることなんてそれ以外でもあり得ること。
例えば、走ったとき。
例えば、貧血な私が長湯をしたとき。
そう、これを恋と断言するにはまだ早い。
先ずは確かめる必要がある。
翌日。
私は彼と会った図書館を訪れた。
昨日いたからといって今日もいるとは限らないけど、名前も連絡先も知らないんじゃこれしか方法がない。
取り敢えず歩き回って探すが、昨日いた場所にも、他の棚の列にもその姿はない。
時間も昨日会ったくらいに合わせたんだけど、そんな簡単にはやっぱり会えないみたい。
肩を落とし、今日は諦めて明日また来てみようと思い、折角なので自分の読みたい本を探す。
向かったのは恋愛小説がズラっと並ぶ棚。
気になったのを一冊手にして椅子に座る。
今まで恋愛を少しでも理解しようと思い、恋愛漫画や恋愛小説を何度か読んできたけど、ときめいた事は一度もない。
友達に「これ、めっちゃキュンキュンするよ」と勧められた小説も、恋を知らない私には何のときめきも与えなかった。
なのに、今読んでいるこの小説に私の胸はときめいている。
先が気になってどんどん捲られるページ。
読み終えた時には何とも言えない満足感が心を満たし、他のも読んで見ようと先程の棚に行く。
手にしたのは恋愛小説二冊。
いつになく熱中して読んでいると、あっという間に二冊読み終え、外が暗くなり始めていることに気づく。
そろそろ帰らないとと、二冊の本を手に持ったとき、一瞬目の前の椅子に座っている人物が瞳に映る。
見間違いかと思いながらゆっくり視線を上げると、微笑みを浮かべ、顔の横で片手を振る男の人の姿。
その人物は、まさに今日探していた人。
何故か身体が固まる。
こういうとき、手を振り返せばいいのか。
でも、昨日少しだけ話しただけの人相手にそんな風にして馴れ馴れしくないだろうか。
そんな格闘が脳内で繰り広げられていると、男の人は立ち上がり私の方へ来た。
「昨日ぶりだね。今日も恋愛小説かな」
「は、はい……」
昨日も私は恋愛小説を読みにここへ訪れていた。
たまには、棚の上にあるのも読んでみようとしたが、つま先立ちしても手は本に届かず。
踏み台がないかと、周りをキョロキョロとしても見当たらず困っていたら「はい」と言う声がして振り返った。
そこにいたのは、私と同い年くらいの男の人。
差し出された本は今私が取ろうとしていた恋愛小説。
「キミが取りたかったの、これで合ってるかな?」
「はい、ありがとうございます」
お礼を伝え受け取ると、男の人は「どういたしまして」と笑みを浮かべその場を去った。
その柔らかな笑みが私の脳内に残り、気づけば恋なんじゃないかという今に至る。
でもまさか、こんなに直ぐに会えるなんて思わなかった。
探しには来たものの、そう簡単に会えるわけないし、会ったところで何て声をかければいいのかすらわかっていなかったから。
あんな些細なことを相手が覚えているかもわからなかったのに、まさかその相手から声をかけてもらえるなんて。
今の私の心臓は、今までにないくらい高鳴っていた。
「その手に持っている二冊、よかったら僕にも貸してもらえないかな」
突然の言葉に上手く声が出ず、無言で二冊の本を両手で差し出すと、男の人はそれを受け取り「ありがとう」と笑みを浮かべた。
「今日はこの二冊を借りていくことにするよ。次に会った時に感想教えるね」
そう言って受付に行ってしまう男性。
名前も連絡先も聞けなかった。
でも「次に会ったときに」と言った男の人の言葉が、また会えるという意味に思えて、私は口元を緩める。
約束をしたわけでもないのに。
やっぱり、私のこの気持ちは初めての恋なんだと実感した瞬間だった。
《完》
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる