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全ては寒さのせい/テーマ:降りつもる
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私は寒さで目を覚した。
目覚まし時計を見たら、いつも遅刻ギリギリの私にが余裕で間に合う時間。
まだ寝ていたいけど、寒くて眠るどころではない。
家には暖房がリビングにしかないから、今この瞬間の寒さに耐えて素早く制服に着替えると、一階へとダッシュで降りていく。
キッチンではすでにお母さんが朝食の準備を済ませていて、暖房も付いている。
でもそれだけじゃこの寒さは凌げず、私はこたつの電源を入れて温まる。
「いくら寒いからってこたつに入ってないで、こっちに来て朝食を食べちゃいなさい」
「そっちはいや。こたつで食べるよ」
フローリングになんて行ったら寒いし、やっぱりこたつが一番。
なんて思っていると、お母さんにこたつの電源を切られて追い出された。
渋々椅子に座り、用意された朝食を食べていると、二階から足音が近づいてくる。
「ゲッ! 姉ちゃんが起きてる。もしかして遅刻!?」
「失礼だな。私だってたまには早く起きるよ」
私を見た瞬間に遅刻だと思うこのイヤな弟。
普段自分が早起きで、私が遅刻ギリギリだからって本当に憎たらしい弟だ。
まあ、この寒さのせいとはいえ早く起きれたから、今日はゆっくり温まってから学校な行ける。
なんて思っていたのに、起きてきたお父さんの一言で私と弟は、朝食後直ぐに学校へ向かうことになった。
玄関の扉を開けると、お父さんの言った通り銀世界。
それも結構積もってて歩きにくい。
どうやら夜中にかなりの雪が降って積もったようだ。
「姉ちゃんが早起きするから」
「別に私が早起きしたから雪が降ったわけじゃないでしょ!」
弟とは途中で別れて、私は中学校、弟とは小学校へと向かう。
折角早起きしてゆっくりできると思ったのに、こんなに積もってたんじゃ早く家を出ないと学校に遅刻しちゃうに決まってるよ。
マフラーと学校指定のコートだけじゃ寒過ぎて動きが鈍くなっていると、後ろから私の名が呼ばれたので振り返る。
「あははっ! 何だよそのロボットみてーな振り向き方は」
「寒いんだから仕方ないでしょ」
確かにカクカクとした動きではあるけど、ロボット呼ばわりとは失礼な奴だ。
まあ、コイツはいつもこんな感じだから気にしてもしょうがないけど。
「この時間にお前が登校してるなんて珍しいな。もしかしてこの雪お前が降らせたんじゃね?」
「それ、弟にも言われた」
二度目にもなると、もうツッコんだりはすまい。
兎に角今はこの寒さに耐えて早く学校へ行き、ストーブで温まりたい。
「深夜から降り出してこんだけ積もるんだからすげーよな」
「迷惑でしかないけどね。動きにくいし、寒いし」
何で朝からコイツと話しながら登校してるんだか。
同じ学校で同じ教室だから嫌でもここからは一緒。
スタスタ歩ければ先に行ってしまうのに、この雪ではそうも行かない。
足首より上まで雪が積もってるんだから、学校が休みになってしまえばいいのに、この程度で学校は休みにはならない。
今は憎らしいほどの青空でお日様も出てるから、今より少しは帰りのが楽になるだろう。
早起きは三文の徳とか聞いたことあるけど、寒さで早起きしてこんな雪道を歩いてたんじゃ、徳どころか損だ。
そもそも三文って今だといくらくらいなんだろうとか、私は寒さを意識しないように頭を働かせる。
「お前、ずっと無言だけど寒さにやられたか?」
「寒いとかの言葉は言わないで。脳内に逃げてるんだから」
私の言葉に笑う声が聞こえるけど、今は無視。
寒さは私にとって天的なんだから。
「おーい」
「何?」
「あ、聞こえてんだ」
用もないのに呼ばれて、脳内世界から戻さないでほしい。
呼ばれても今度は完璧無視をし続けていると、真っ白だった視界がグレーに変わる。
気がつけば学校の下駄箱。
私は履いていた靴を上履きに履き替えて、少し腹足で教室へ向かう。
「俺ら一番乗りだな」
そんな声が聞こえたが、私は自分の机に鞄を置くと、黒板前に置かれたストーブの電源を入れて温まるのを待つ。
「さみー! 俺も俺も」
そう言いながら温まろうと、向かい側に来る。
静かな教室には、ストーブの機械音のみが聞こえ、二人の白く吐き出された息がスーと消えていく。
しばらくして廊下から聞こえてきた足音。
他の生徒達が来たんだろうと思っていたら、扉が開かれ現れたのは担任教師。
先生へと視線を向ける私とコイツ。
私とコイツを確認した先生。
「お前ら、今日は休みだぞ」
その言葉で思考が停止したが、すぐに私は「そんな連絡来てませんよ」と言う。
そんな先生が最後に残した言葉は「今はまだ冬休みだ」という一言のみ。
私とコイツは勘違いしていた。
今日から学校が始まると。
ついでに言えば弟も。
似た者兄弟といった感じだ。
今来た道をすぐに帰る気にもなれず、ストーブで温まりながら雪が溶けるのを待つ。
その間、コイツがいるお陰で会話相手がいるのは助かった。
こうして私は、貴重な冬休みを無駄にすることになり、冬休みが終って初の登校は、遅刻ギリギリでいつも通りのスタートで始まる事になるのを、今の私は想像できた。
《完》
目覚まし時計を見たら、いつも遅刻ギリギリの私にが余裕で間に合う時間。
まだ寝ていたいけど、寒くて眠るどころではない。
家には暖房がリビングにしかないから、今この瞬間の寒さに耐えて素早く制服に着替えると、一階へとダッシュで降りていく。
キッチンではすでにお母さんが朝食の準備を済ませていて、暖房も付いている。
でもそれだけじゃこの寒さは凌げず、私はこたつの電源を入れて温まる。
「いくら寒いからってこたつに入ってないで、こっちに来て朝食を食べちゃいなさい」
「そっちはいや。こたつで食べるよ」
フローリングになんて行ったら寒いし、やっぱりこたつが一番。
なんて思っていると、お母さんにこたつの電源を切られて追い出された。
渋々椅子に座り、用意された朝食を食べていると、二階から足音が近づいてくる。
「ゲッ! 姉ちゃんが起きてる。もしかして遅刻!?」
「失礼だな。私だってたまには早く起きるよ」
私を見た瞬間に遅刻だと思うこのイヤな弟。
普段自分が早起きで、私が遅刻ギリギリだからって本当に憎たらしい弟だ。
まあ、この寒さのせいとはいえ早く起きれたから、今日はゆっくり温まってから学校な行ける。
なんて思っていたのに、起きてきたお父さんの一言で私と弟は、朝食後直ぐに学校へ向かうことになった。
玄関の扉を開けると、お父さんの言った通り銀世界。
それも結構積もってて歩きにくい。
どうやら夜中にかなりの雪が降って積もったようだ。
「姉ちゃんが早起きするから」
「別に私が早起きしたから雪が降ったわけじゃないでしょ!」
弟とは途中で別れて、私は中学校、弟とは小学校へと向かう。
折角早起きしてゆっくりできると思ったのに、こんなに積もってたんじゃ早く家を出ないと学校に遅刻しちゃうに決まってるよ。
マフラーと学校指定のコートだけじゃ寒過ぎて動きが鈍くなっていると、後ろから私の名が呼ばれたので振り返る。
「あははっ! 何だよそのロボットみてーな振り向き方は」
「寒いんだから仕方ないでしょ」
確かにカクカクとした動きではあるけど、ロボット呼ばわりとは失礼な奴だ。
まあ、コイツはいつもこんな感じだから気にしてもしょうがないけど。
「この時間にお前が登校してるなんて珍しいな。もしかしてこの雪お前が降らせたんじゃね?」
「それ、弟にも言われた」
二度目にもなると、もうツッコんだりはすまい。
兎に角今はこの寒さに耐えて早く学校へ行き、ストーブで温まりたい。
「深夜から降り出してこんだけ積もるんだからすげーよな」
「迷惑でしかないけどね。動きにくいし、寒いし」
何で朝からコイツと話しながら登校してるんだか。
同じ学校で同じ教室だから嫌でもここからは一緒。
スタスタ歩ければ先に行ってしまうのに、この雪ではそうも行かない。
足首より上まで雪が積もってるんだから、学校が休みになってしまえばいいのに、この程度で学校は休みにはならない。
今は憎らしいほどの青空でお日様も出てるから、今より少しは帰りのが楽になるだろう。
早起きは三文の徳とか聞いたことあるけど、寒さで早起きしてこんな雪道を歩いてたんじゃ、徳どころか損だ。
そもそも三文って今だといくらくらいなんだろうとか、私は寒さを意識しないように頭を働かせる。
「お前、ずっと無言だけど寒さにやられたか?」
「寒いとかの言葉は言わないで。脳内に逃げてるんだから」
私の言葉に笑う声が聞こえるけど、今は無視。
寒さは私にとって天的なんだから。
「おーい」
「何?」
「あ、聞こえてんだ」
用もないのに呼ばれて、脳内世界から戻さないでほしい。
呼ばれても今度は完璧無視をし続けていると、真っ白だった視界がグレーに変わる。
気がつけば学校の下駄箱。
私は履いていた靴を上履きに履き替えて、少し腹足で教室へ向かう。
「俺ら一番乗りだな」
そんな声が聞こえたが、私は自分の机に鞄を置くと、黒板前に置かれたストーブの電源を入れて温まるのを待つ。
「さみー! 俺も俺も」
そう言いながら温まろうと、向かい側に来る。
静かな教室には、ストーブの機械音のみが聞こえ、二人の白く吐き出された息がスーと消えていく。
しばらくして廊下から聞こえてきた足音。
他の生徒達が来たんだろうと思っていたら、扉が開かれ現れたのは担任教師。
先生へと視線を向ける私とコイツ。
私とコイツを確認した先生。
「お前ら、今日は休みだぞ」
その言葉で思考が停止したが、すぐに私は「そんな連絡来てませんよ」と言う。
そんな先生が最後に残した言葉は「今はまだ冬休みだ」という一言のみ。
私とコイツは勘違いしていた。
今日から学校が始まると。
ついでに言えば弟も。
似た者兄弟といった感じだ。
今来た道をすぐに帰る気にもなれず、ストーブで温まりながら雪が溶けるのを待つ。
その間、コイツがいるお陰で会話相手がいるのは助かった。
こうして私は、貴重な冬休みを無駄にすることになり、冬休みが終って初の登校は、遅刻ギリギリでいつも通りのスタートで始まる事になるのを、今の私は想像できた。
《完》
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