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乗り切れ私!/テーマ:もう少しだけ
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もう少しだけ。
人はこの言葉を何回も思ったりする。
そして私もその一人。
今現在、私は帰宅するクラスメイトや部活に向かうクラスメイト達が次々と教室を出ていく中、とある人物と一つの机を挟んで向かい合っていた。
その人物とは、何かと喧嘩ばかりする相手である行波。
そんな奴と何故向かい合っているのかというと、それは机に置かれた教科書とノートに関係している。
英語が大の苦手である私は先生に呼び出され、次のテストで赤点だったら冬休みの間も学校に来てもらうと言われた。
折角の休みに学校に来るのも嫌だけど、こんな寒い季節に外になんて出たくない。
そこで私は気が進まないながらも、学年で英語の成績が一番の行波に教わるため頭を下げた。
めちゃくちゃ馬鹿にされて屈辱だったけど、冬休みがかかっているため何とか耐えて頼み込み、帰る前ならということで見てもらえることになった。
「何でこんな簡単なところで躓いてんだよ!」
「仕方ないじゃん。そもそもわからないから見てもらってるんだし」
あからさまに溜息をついて呆れているのを見るとイラッとするけど、ここは我慢だ。
今回ばかりは教えてもらってる身だから強く言い返せない。
「じゃあまず試しに、これ読んでみろ」
「えっと……い、ん、さと、す。っ、イッたー!」
ノートで頭を叩かれムッとした表情を浮かべていると「Insatsuだ。お前、一から英語習い直してこい」なんて言われて口を尖らす。
だって私にはそうとしか読めなかったんだから仕方がない。
その後も遠慮なく頭をノートで叩かれ続け、とうとう日も暮れ始めて下校する生徒の声が聞こえてくる。
「ほら、帰るぞ」
「まだ覚えてないよ。このままじゃ私の冬休みなくなる……。お願い、もう少しだけ!」
手を合わせてお願いするが、鞄を持って立ち上がり、行波は教室を出ていこうとする。
人がこんなに頼んでるのにと拗ねていると、扉の前で顔だけ振り向いた行波が「続きは帰りながらだ」と言い、私は「うん」と笑みを浮かべ机に広げていたノートや教科書を鞄に仕舞うと行波の後を追いかける。
普段嫌な奴だけど、結構いいところあるじゃないかと思ったのも束の間。
帰路を歩きながら問題を出され、間違える度に鉄拳が頭上に落とされた。
少しでもコイツを良い奴かもなんて思ったのが間違いだった。
でも、なんだかんだ付き合ってくれるんだから、そこまで嫌な奴ってわけじゃないのかも。
「イたっ! 何さいきなり」
「顔がニヤついてて気持ち悪かった」
前言撤回。
やっぱりコイツは嫌な奴で、テストが終わった後はノートで叩かれたことや鉄拳の恨みを晴らしてやろうと企んでいると「悪巧みしてただろう」って再び鉄拳が落とされた。
《完》
人はこの言葉を何回も思ったりする。
そして私もその一人。
今現在、私は帰宅するクラスメイトや部活に向かうクラスメイト達が次々と教室を出ていく中、とある人物と一つの机を挟んで向かい合っていた。
その人物とは、何かと喧嘩ばかりする相手である行波。
そんな奴と何故向かい合っているのかというと、それは机に置かれた教科書とノートに関係している。
英語が大の苦手である私は先生に呼び出され、次のテストで赤点だったら冬休みの間も学校に来てもらうと言われた。
折角の休みに学校に来るのも嫌だけど、こんな寒い季節に外になんて出たくない。
そこで私は気が進まないながらも、学年で英語の成績が一番の行波に教わるため頭を下げた。
めちゃくちゃ馬鹿にされて屈辱だったけど、冬休みがかかっているため何とか耐えて頼み込み、帰る前ならということで見てもらえることになった。
「何でこんな簡単なところで躓いてんだよ!」
「仕方ないじゃん。そもそもわからないから見てもらってるんだし」
あからさまに溜息をついて呆れているのを見るとイラッとするけど、ここは我慢だ。
今回ばかりは教えてもらってる身だから強く言い返せない。
「じゃあまず試しに、これ読んでみろ」
「えっと……い、ん、さと、す。っ、イッたー!」
ノートで頭を叩かれムッとした表情を浮かべていると「Insatsuだ。お前、一から英語習い直してこい」なんて言われて口を尖らす。
だって私にはそうとしか読めなかったんだから仕方がない。
その後も遠慮なく頭をノートで叩かれ続け、とうとう日も暮れ始めて下校する生徒の声が聞こえてくる。
「ほら、帰るぞ」
「まだ覚えてないよ。このままじゃ私の冬休みなくなる……。お願い、もう少しだけ!」
手を合わせてお願いするが、鞄を持って立ち上がり、行波は教室を出ていこうとする。
人がこんなに頼んでるのにと拗ねていると、扉の前で顔だけ振り向いた行波が「続きは帰りながらだ」と言い、私は「うん」と笑みを浮かべ机に広げていたノートや教科書を鞄に仕舞うと行波の後を追いかける。
普段嫌な奴だけど、結構いいところあるじゃないかと思ったのも束の間。
帰路を歩きながら問題を出され、間違える度に鉄拳が頭上に落とされた。
少しでもコイツを良い奴かもなんて思ったのが間違いだった。
でも、なんだかんだ付き合ってくれるんだから、そこまで嫌な奴ってわけじゃないのかも。
「イたっ! 何さいきなり」
「顔がニヤついてて気持ち悪かった」
前言撤回。
やっぱりコイツは嫌な奴で、テストが終わった後はノートで叩かれたことや鉄拳の恨みを晴らしてやろうと企んでいると「悪巧みしてただろう」って再び鉄拳が落とされた。
《完》
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