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歪んで見えた世界(人)
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私の世界は歪んでいた。
目に見えるモノ全てが歪んでいて、その中でも人が恐ろしい。
歪んでいるのは見た目だけでなく心もで、平気で呼吸をするように嘘をつく。
「君だけを愛してる」
「ずっと友達だよ」
そんな言葉は全て嘘。
君だけを愛してると言っておきながら、結局別れたカップル。
ずっと友達だと言っておきながら、陰で悪口を言っていた友達。
全てが嘘で醜くて、歪んでいる。
心の歪みは私の世界だけじゃなく、この世界がそうなのだ。
そしてこの先も変わらない。
そう思っていたのに、私の前に現れたのは眩しいお日様だった。
「俺の名前は田中 宏。今日からよろしく」
高校生になった私は、田中くんと席が隣通しになった。
それから数日経ったが、何故か田中くんは毎日私に声をかけてくる。
朝はおはようから始まり、休み時間は読書をしていると何の本を読んでいるのかと話しかけてくる。
その明るさは誰に対してもであり、数日でクラスの中心人物になっていた。
でも私は知っている。
そんな明るい人物も、心までそうだとは限らないことを。
帰り道。
私は偶然同じ制服を着た高校生が絡まれているのを見かけた。
どうやらイジメのようだけど、私には関係ない。
それに私が出ていったところで男子3人相手では何の意味もないことはわかりきっている。
なら、わざわざ危険を犯す必要はない。
見てみぬふりをして通り過ぎようとしたその時、聞き覚えのある声に足を止めた。
「おい、何してんだよ」
視線を戻せば、イジメっ子達の前に田中くんが立っていた。
いくら男とはいえ、3人の男子相手に適うはずがない。
そもそも、あんな面倒な状況に関わろうとする人の気が知れない。
「関係ない奴はすっこんでろよ」
どんどん状況は悪化していき、田中くんが殴られそうになったとき、私は声を上げた。
「おまわりさん!! こっちです! こっちで高校生達がもめてるみたいなんです」
その声にイジメっ子達は逃げていき、イジメられていた人は田中くんにお礼を言いその場を去った。
本当に、何故私はこんなことをしたのかわからない。
こんな汚くて醜い世界も人もどうでもいいと思っていたはずなのに。
「やっぱり上田さんだったんだ」
私に気づいた田中くんは、こっちに近づいてくると笑みを浮かべ「ありがとう」と言う。
「別に私はたいしたことしてないから。それより、あのままだったら田中くん、どうなってたかわからないんだよ?」
「そうだよな。でもさ、ほっとけねーじゃん」
そう言い笑顔を向ける田中くんの姿に、私は驚き目を見開いた。
だって、人なんて結局自分が大切なんだと思っていたから。
少なくても私が見てきた人はそんな人ばかりだったのに、田中くんは違って見えた。
眩しすぎて、最初から歪みさえ見えない田中くんの心は、真っ直ぐな自分の正義を持っていた。
「田中くんって変わってるね」
「そうか? 俺が変わってるなら、助けてくれた上田さんも変わってんじゃねーか」
ニッと笑う田中くんにつられるように「そうだね」と私も口元に少しの笑みを浮かべた。
歪んだ世界も人も、まだまだ捨てたものではない。
そう思えた瞬間だった。
─end─
目に見えるモノ全てが歪んでいて、その中でも人が恐ろしい。
歪んでいるのは見た目だけでなく心もで、平気で呼吸をするように嘘をつく。
「君だけを愛してる」
「ずっと友達だよ」
そんな言葉は全て嘘。
君だけを愛してると言っておきながら、結局別れたカップル。
ずっと友達だと言っておきながら、陰で悪口を言っていた友達。
全てが嘘で醜くて、歪んでいる。
心の歪みは私の世界だけじゃなく、この世界がそうなのだ。
そしてこの先も変わらない。
そう思っていたのに、私の前に現れたのは眩しいお日様だった。
「俺の名前は田中 宏。今日からよろしく」
高校生になった私は、田中くんと席が隣通しになった。
それから数日経ったが、何故か田中くんは毎日私に声をかけてくる。
朝はおはようから始まり、休み時間は読書をしていると何の本を読んでいるのかと話しかけてくる。
その明るさは誰に対してもであり、数日でクラスの中心人物になっていた。
でも私は知っている。
そんな明るい人物も、心までそうだとは限らないことを。
帰り道。
私は偶然同じ制服を着た高校生が絡まれているのを見かけた。
どうやらイジメのようだけど、私には関係ない。
それに私が出ていったところで男子3人相手では何の意味もないことはわかりきっている。
なら、わざわざ危険を犯す必要はない。
見てみぬふりをして通り過ぎようとしたその時、聞き覚えのある声に足を止めた。
「おい、何してんだよ」
視線を戻せば、イジメっ子達の前に田中くんが立っていた。
いくら男とはいえ、3人の男子相手に適うはずがない。
そもそも、あんな面倒な状況に関わろうとする人の気が知れない。
「関係ない奴はすっこんでろよ」
どんどん状況は悪化していき、田中くんが殴られそうになったとき、私は声を上げた。
「おまわりさん!! こっちです! こっちで高校生達がもめてるみたいなんです」
その声にイジメっ子達は逃げていき、イジメられていた人は田中くんにお礼を言いその場を去った。
本当に、何故私はこんなことをしたのかわからない。
こんな汚くて醜い世界も人もどうでもいいと思っていたはずなのに。
「やっぱり上田さんだったんだ」
私に気づいた田中くんは、こっちに近づいてくると笑みを浮かべ「ありがとう」と言う。
「別に私はたいしたことしてないから。それより、あのままだったら田中くん、どうなってたかわからないんだよ?」
「そうだよな。でもさ、ほっとけねーじゃん」
そう言い笑顔を向ける田中くんの姿に、私は驚き目を見開いた。
だって、人なんて結局自分が大切なんだと思っていたから。
少なくても私が見てきた人はそんな人ばかりだったのに、田中くんは違って見えた。
眩しすぎて、最初から歪みさえ見えない田中くんの心は、真っ直ぐな自分の正義を持っていた。
「田中くんって変わってるね」
「そうか? 俺が変わってるなら、助けてくれた上田さんも変わってんじゃねーか」
ニッと笑う田中くんにつられるように「そうだね」と私も口元に少しの笑みを浮かべた。
歪んだ世界も人も、まだまだ捨てたものではない。
そう思えた瞬間だった。
─end─
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