14 / 101
運命の腐れ縁
しおりを挟む
もしも好きの気持ちを伝えたら、今の関係は崩れてしまうかもしれない。
それでも、伝えない後悔より伝えた方のがいいと思うから、今日こそ伝えようと手に力を込めて「おはよう」といつものように挨拶を交わす相手は、私が思いを寄せる人物であり、家がお隣同士の幼馴染み、馬殊。
いつもの時間に家を出て、馬殊と一緒に学校へ行く。
この関係をずっと続けてきたけれど、今日でそれも最後にする。
脱、幼馴染となるために。
「あのさ」
「あのさ」
二人の声が重なり「馬殊からいいよ」というと、馬殊は頬を掻き口を開く。
内容は、告白したい相手がいるというものであり、私は思いを伝えていないにも関わらず恋が終わった。
それでも笑みを浮かべながら馬殊の相談にのるけれど、きっと今の自分は上手く笑えていないだろう。
泣きたくなる気持ちをぐっと押さえ込み話を聞くが、何を話したのか全く覚えていない。
失恋のショックを受けたまま学校に着くと、それでも何時ものように隣には馬殊の姿。
席が隣同士で最初は嬉しかったのに、今は離れたくて仕方がない。
結局その日はずっと上の空で、どう過ごしていたのかさえ覚えていない。
放課後、いつものように一緒に帰ろうと声をかけてくる馬殊に、今日は用事があるからと嘘を吐く。
疑うことなく馬殊が頷き教室を出ていったあと、しばらくして私も教室を出た。
帰り道、一人になった瞬間一気に辛い感情が込み上げてきて、その場で立ち止まり涙を拭っていると、目の前に誰かが立っているのを歪む視界で捉える。
慌てて涙を拭い顔を上げると、そこにいたのは馬殊。
先に帰ったはずの馬殊が目の前にいる。
これは夢なのだろうかと固まってしまうと、手が頭に乗せられた。
「お前は昔からそうだよな。辛いことや嫌なことがあると一人で帰る癖」
「べつに、馬殊には関係ないでしょ」
「関係あるだろ。俺達は昔っから一緒の腐れ縁だろ」
ニッと笑う馬殊。
いつもそうだった。
私に辛いことや悲しいことがあると、馬殊は気づいて慰めてくれる。
それでも今日ばかりは、馬殊にはどうすることもできない。
何故なら、今悲しくて辛いのは馬殊のせいだから。
何故泣いているのか尋ねられても、答えることなどできるはずもない。
顔を伏せたままでいると、両頬を手で挟まれ馬殊へと向かされた。
瞳に溜まった涙が頬を伝い、こんな姿見られたくないのに、馬殊の手は離れてくれない。
「話したくないなら話さなくていい。でも、お前が泣いてると俺が嫌なんだよ」
「何よそれ。意味わかんな──」
言葉は唇に触れたものにより遮られ、目の前には馬殊の顔。
何が起きたのか理解したとたん、頬に熱が集まり、訳がわからなくて驚きの表情を浮かべ馬殊を見詰める。
「昔っから一緒で、家も隣同士。腐れ縁なんて言ったけどさ、俺はこれを運命だと思ってる」
続けて言われた「好きだ」という言葉に、先程とは違う涙が流れる。
そんな私の涙を馬殊は指先で掬い取ると「もう泣くな」と笑みを浮かべた。
でも、馬殊には好きな人がいたはずではと思い尋ねると「本当に鈍いよな」と笑われてしまう。
「俺が好きなのは、昔も今もお前だけだ」
腐れ縁でいつも一緒だった二人。
これを運命だという馬殊の言葉に、春美もそうなのかもしれないと笑みを浮かべる。
《完》
それでも、伝えない後悔より伝えた方のがいいと思うから、今日こそ伝えようと手に力を込めて「おはよう」といつものように挨拶を交わす相手は、私が思いを寄せる人物であり、家がお隣同士の幼馴染み、馬殊。
いつもの時間に家を出て、馬殊と一緒に学校へ行く。
この関係をずっと続けてきたけれど、今日でそれも最後にする。
脱、幼馴染となるために。
「あのさ」
「あのさ」
二人の声が重なり「馬殊からいいよ」というと、馬殊は頬を掻き口を開く。
内容は、告白したい相手がいるというものであり、私は思いを伝えていないにも関わらず恋が終わった。
それでも笑みを浮かべながら馬殊の相談にのるけれど、きっと今の自分は上手く笑えていないだろう。
泣きたくなる気持ちをぐっと押さえ込み話を聞くが、何を話したのか全く覚えていない。
失恋のショックを受けたまま学校に着くと、それでも何時ものように隣には馬殊の姿。
席が隣同士で最初は嬉しかったのに、今は離れたくて仕方がない。
結局その日はずっと上の空で、どう過ごしていたのかさえ覚えていない。
放課後、いつものように一緒に帰ろうと声をかけてくる馬殊に、今日は用事があるからと嘘を吐く。
疑うことなく馬殊が頷き教室を出ていったあと、しばらくして私も教室を出た。
帰り道、一人になった瞬間一気に辛い感情が込み上げてきて、その場で立ち止まり涙を拭っていると、目の前に誰かが立っているのを歪む視界で捉える。
慌てて涙を拭い顔を上げると、そこにいたのは馬殊。
先に帰ったはずの馬殊が目の前にいる。
これは夢なのだろうかと固まってしまうと、手が頭に乗せられた。
「お前は昔からそうだよな。辛いことや嫌なことがあると一人で帰る癖」
「べつに、馬殊には関係ないでしょ」
「関係あるだろ。俺達は昔っから一緒の腐れ縁だろ」
ニッと笑う馬殊。
いつもそうだった。
私に辛いことや悲しいことがあると、馬殊は気づいて慰めてくれる。
それでも今日ばかりは、馬殊にはどうすることもできない。
何故なら、今悲しくて辛いのは馬殊のせいだから。
何故泣いているのか尋ねられても、答えることなどできるはずもない。
顔を伏せたままでいると、両頬を手で挟まれ馬殊へと向かされた。
瞳に溜まった涙が頬を伝い、こんな姿見られたくないのに、馬殊の手は離れてくれない。
「話したくないなら話さなくていい。でも、お前が泣いてると俺が嫌なんだよ」
「何よそれ。意味わかんな──」
言葉は唇に触れたものにより遮られ、目の前には馬殊の顔。
何が起きたのか理解したとたん、頬に熱が集まり、訳がわからなくて驚きの表情を浮かべ馬殊を見詰める。
「昔っから一緒で、家も隣同士。腐れ縁なんて言ったけどさ、俺はこれを運命だと思ってる」
続けて言われた「好きだ」という言葉に、先程とは違う涙が流れる。
そんな私の涙を馬殊は指先で掬い取ると「もう泣くな」と笑みを浮かべた。
でも、馬殊には好きな人がいたはずではと思い尋ねると「本当に鈍いよな」と笑われてしまう。
「俺が好きなのは、昔も今もお前だけだ」
腐れ縁でいつも一緒だった二人。
これを運命だという馬殊の言葉に、春美もそうなのかもしれないと笑みを浮かべる。
《完》
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
1話完結のSS集Ⅱ
月夜
恋愛
前作の「1話完結のSS集」が100話となりましたので、新たに作成いたしました!
別作品『1話完結の短編集』より短いお話の詰め合わせです。
ちょっとした時間のお供にでもお読みくださいませ。
多ジャンルではありますが、恋愛のお話が多めになると思うので、カテゴリは恋愛にしております。
[各話の表記]
・テーマ(コンテスト用に書いた作品にのみ)
・他サイト含むコンテスト(受賞、優秀作品を頂いた作品のみ記載有り)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる