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34話 ランクアップ
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メアリーで何日か休憩して、私はリラぁッくまことクマちゃん(見た目人間バージョン)を連れてセザンヌの街へと戻って来た。
気のせいか多くの冒険者が私たちを見ている気がするが、気にせず受付まで行くと、受付嬢の方から声をかけられたのである。
「トロポーク様!!」
「おわぁ!? え? な、なに? いきなりどしたんですか?」
「やっとギルドへ来てくださったんですね! ずっと探しておりました! 今すぐこちらへと来てくださいっ!」
「え、あっ、は、はぁ」
何か悪いことをしたであろうかと思案を巡らせてみるも思い当たる節がない。
いったい何の呼び出しであろうか。
通された部屋は冒険者ギルドの最上階にある豪華な部屋であった。
その奥には明らかに偉い風のおじさんが座っており、私たちが入室するなり彼は腰を上げて丁寧な態度で応対してきたのである。
……というかこのおじさんはこの前見た気がする。
たしか、ギルドマスターだったっけ?
「おお! トロポーク君か! 突然すまない。よくぞ来てくれた! さあ、座ってくれたまえ!」
「は、はぁ」
「ギルドマスターのトーグナー・ミルベイルだ。この度は本当によく働いてくれた」
「は、はたいて……?」
「ああ。君のおかげでカルパティア王国に巣食う悪はほぼ排除できたも同然だ。冒険者ギルドを代表してお礼申し上げる」
そう述べて彼は受付嬢と共に頭を下げてきた。
……が、
「あー……。えっと?? 何のことでしょうか?」
「ふっ、そう謙遜するな。君のおかげでポッピン教の首魁となる聖女を討ち取ることができ、四天王たちもすべて討伐することができた。今は残った教団関係者を追わせているが、中心人物たちがいなくなったことで、もはや烏合の衆も同然と言えよう」
「???」
討ち取った??
いやいや、マナちゃんは今も普通にメアリーで活動している。
どゆこと?
なんて具合にクエスチョンマークを浮かべていると、クマちゃんが私にこっそりと耳打ちしてくれる。
「おそらく、阿修羅マナは自身をトロポーク様の手によって討ち取ったことに偽装したのでしょう」
「えぇ!? なんで!?」
「すべての手柄をあなた様のものにするためではないでしょうか」
「はぁ!?」
思わず大きな声を上げてしまい、ギルドマスターのトーグナ―さんがキョトンとする。
「ん? どうしたんだ?」
「あっ……い、いえ、別に……」
「本件の功績を称え、君は既にSランク冒険者となることが内定している」
「えぇ!?」
「ふむ。不満か。たしかに、内容を鑑みればSSランク冒険者に十分相当すると考えている。だが、冒険者ギルドにはなかなか頭の硬い奴らもいてな」
いや、逆だからっ!
というかなんでそんなことになってんのっ!
思わず頭を抱えてしまう。
でもまだ間に合う。
ここでちゃんとランクアップを辞退しておけば――
「ああ。その顔、冒険者ギルドに登録したばかりの自分が認めてもらえるものかと不安に思っているな。安心したまえ。本件はすでにカルパティア王国中の冒険者ギルドに通達済みだ」
はいダメでしたー。
もはや逃げ道がなくなってしまい、苦い顔を浮かべてしまう。
考えようによっては冒険者としての知名度が稼げたのでメリットもあるが、なんだかズルしてランクアップした気分だ。
「それで、そんな君に解決してほしい国の重要案件が多数あるんだ」
「じゅ、重要案件……?」
「君は地獄の入り口について知っていることはあるかね?」
すぐさまこの重要案件とやらが手を出してはならないものだと察知する。
「あーっと、私ちょっと今すぐ行かなきゃいけない用事があるんでっ! じゃあこれでっ!」
「あっ! ちょ、ちょっと待ちたまえ! トロポーク君っ!!」
彼の呼び止める声を無視して、私はそのまま冒険者ギルドを後にするのだった。
どうせ彼の依頼内容はメアリーの攻略かあるいは調査であろう。
ここはいったん逃げて、しばらく時間が経つのを待った方がいい。
「はぁ……。まったく、困ったものね……」
「なぜでしょうか? 壁に耳あり障子にメアリーの攻略であればいくらでも功績をでっち上げることができます。ここからさらに高ランクの冒険者となれば、豚トロ様の主なる目的となる世界征服にもまた一歩近づくこととなりましょう」
なんだその主なる目的って。
私にそんな目的ねーっつーの!
「目的とかないからね」
「はい。わかっておりますよ」
「絶対わかってないでしょ?」
「むろんのこと、愚鈍なる私などでは豚トロ様のお考えなど一端を読み解くのも一苦労となります。ご指摘の通り、そのお考えのごく一部を理解できたに過ぎません」
いや、一ミリも理解できてないと思う。
「はぁ……。まあいいや。セザンヌに来るのはしばらくやめとくことにするわ。一旦メアリーに戻りましょう。次はどこにまったり旅行へ行こっかなぁ」
「次なる征服地がどちらとなるか、しかとその目で見させていただきます」
「私の話を聞けや!!」
気のせいか多くの冒険者が私たちを見ている気がするが、気にせず受付まで行くと、受付嬢の方から声をかけられたのである。
「トロポーク様!!」
「おわぁ!? え? な、なに? いきなりどしたんですか?」
「やっとギルドへ来てくださったんですね! ずっと探しておりました! 今すぐこちらへと来てくださいっ!」
「え、あっ、は、はぁ」
何か悪いことをしたであろうかと思案を巡らせてみるも思い当たる節がない。
いったい何の呼び出しであろうか。
通された部屋は冒険者ギルドの最上階にある豪華な部屋であった。
その奥には明らかに偉い風のおじさんが座っており、私たちが入室するなり彼は腰を上げて丁寧な態度で応対してきたのである。
……というかこのおじさんはこの前見た気がする。
たしか、ギルドマスターだったっけ?
「おお! トロポーク君か! 突然すまない。よくぞ来てくれた! さあ、座ってくれたまえ!」
「は、はぁ」
「ギルドマスターのトーグナー・ミルベイルだ。この度は本当によく働いてくれた」
「は、はたいて……?」
「ああ。君のおかげでカルパティア王国に巣食う悪はほぼ排除できたも同然だ。冒険者ギルドを代表してお礼申し上げる」
そう述べて彼は受付嬢と共に頭を下げてきた。
……が、
「あー……。えっと?? 何のことでしょうか?」
「ふっ、そう謙遜するな。君のおかげでポッピン教の首魁となる聖女を討ち取ることができ、四天王たちもすべて討伐することができた。今は残った教団関係者を追わせているが、中心人物たちがいなくなったことで、もはや烏合の衆も同然と言えよう」
「???」
討ち取った??
いやいや、マナちゃんは今も普通にメアリーで活動している。
どゆこと?
なんて具合にクエスチョンマークを浮かべていると、クマちゃんが私にこっそりと耳打ちしてくれる。
「おそらく、阿修羅マナは自身をトロポーク様の手によって討ち取ったことに偽装したのでしょう」
「えぇ!? なんで!?」
「すべての手柄をあなた様のものにするためではないでしょうか」
「はぁ!?」
思わず大きな声を上げてしまい、ギルドマスターのトーグナ―さんがキョトンとする。
「ん? どうしたんだ?」
「あっ……い、いえ、別に……」
「本件の功績を称え、君は既にSランク冒険者となることが内定している」
「えぇ!?」
「ふむ。不満か。たしかに、内容を鑑みればSSランク冒険者に十分相当すると考えている。だが、冒険者ギルドにはなかなか頭の硬い奴らもいてな」
いや、逆だからっ!
というかなんでそんなことになってんのっ!
思わず頭を抱えてしまう。
でもまだ間に合う。
ここでちゃんとランクアップを辞退しておけば――
「ああ。その顔、冒険者ギルドに登録したばかりの自分が認めてもらえるものかと不安に思っているな。安心したまえ。本件はすでにカルパティア王国中の冒険者ギルドに通達済みだ」
はいダメでしたー。
もはや逃げ道がなくなってしまい、苦い顔を浮かべてしまう。
考えようによっては冒険者としての知名度が稼げたのでメリットもあるが、なんだかズルしてランクアップした気分だ。
「それで、そんな君に解決してほしい国の重要案件が多数あるんだ」
「じゅ、重要案件……?」
「君は地獄の入り口について知っていることはあるかね?」
すぐさまこの重要案件とやらが手を出してはならないものだと察知する。
「あーっと、私ちょっと今すぐ行かなきゃいけない用事があるんでっ! じゃあこれでっ!」
「あっ! ちょ、ちょっと待ちたまえ! トロポーク君っ!!」
彼の呼び止める声を無視して、私はそのまま冒険者ギルドを後にするのだった。
どうせ彼の依頼内容はメアリーの攻略かあるいは調査であろう。
ここはいったん逃げて、しばらく時間が経つのを待った方がいい。
「はぁ……。まったく、困ったものね……」
「なぜでしょうか? 壁に耳あり障子にメアリーの攻略であればいくらでも功績をでっち上げることができます。ここからさらに高ランクの冒険者となれば、豚トロ様の主なる目的となる世界征服にもまた一歩近づくこととなりましょう」
なんだその主なる目的って。
私にそんな目的ねーっつーの!
「目的とかないからね」
「はい。わかっておりますよ」
「絶対わかってないでしょ?」
「むろんのこと、愚鈍なる私などでは豚トロ様のお考えなど一端を読み解くのも一苦労となります。ご指摘の通り、そのお考えのごく一部を理解できたに過ぎません」
いや、一ミリも理解できてないと思う。
「はぁ……。まあいいや。セザンヌに来るのはしばらくやめとくことにするわ。一旦メアリーに戻りましょう。次はどこにまったり旅行へ行こっかなぁ」
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