上 下
23 / 44

23話 ミラ山のクエスト

しおりを挟む
 山のクエストというのはセザンヌ近辺にあるセザ山中腹にある洞窟の探索だ。
 この洞窟はなんてことはない普通のダンジョンなのだが、最奥部の一歩手前に隠し通路が用意されていて、その先へ進むと割と大きめの地下神殿に行くことができる。
 その最深部では、なんと有用な消費アイテムが定期的にスポーンするようになっているのだ。

 壁に耳あり障子にメアリーは現在深刻な物資不足に陥っており、ここを占拠してアイテムを回収できるようにすれば拠点増強につながるであろう。
 くまちゃんはポッピン教の拠点がうんぬんかんぬんとか言っていたが、そちらは無視だな。

 目的の洞窟へと到着する。

「こちらですね。人の足跡があります。おそらくは内部に何者かがいるのでしょう」
「マジかぁ。まあ五百年も経ってるから、誰かが占拠しててもおかしくないよね。その人らには悪いけど、ここの神殿はメアリーのものにしたいかな。資源拠点の取り合いはよくやってたし」
「わかりました。では私が掃除を」
「いや、私も行く。くまちゃんが行くとやり過ぎるでしょ。いーい? 絶対に殺したりしちゃダメよ? 傷つけるのも最低限! わかった?!」
「なるほど、そういうことですか。承知しました。可能な限り恐怖を与えて、今後この地に寄り着かないように致します」
「ちげーわ! 普通に撃退すればいいだけだからっ!」
「はい、わかっておりますよ」

 絶対わかってないだろ……。

「……。まあいいわ。とりあえず中を進むわよ」

 内部では案の定、魔物ではなく人が配置されており、その人らを倒していきながら最奥部を目指していく。
 隠し通路に入る前に最奥部も一応確認したのだが、少し良さげのアイテムが入った宝箱が置かれていた。

「なるほど、考えてるわね。普通の探索者はこのアイテムで満足して帰っちゃうってわけか」
「普通の、ということはまだ先があるというわけですね」
「うん。こっちに隠し通路があるの」

 そう述べて隠し通路の方へと進んでいく。

「よくこのようなところをご存知でしたね」
「もう何度もやったことあったからね。しっかし、内部のつくりがだいぶ変わってるなぁ。前はもっと壁とか床がボロボロな感じだったけど、だいぶ綺麗になってるね」
「やはりここをポッピン教の者たちが拠点化していたというわけですね。豚トロ様はそれが分かった上で来られたと。その御慧眼、見事なものにございます」
「ホントにそうなりそうで怖えぇわ」

 隠し通路の先へ進んでいくと、そこは結構ちゃんとした拠点となっていた。

「もとはダンジョンなはずなのに、改築したみたいだね」
「そのようですね。ここの隠し通路の入り口はかなりわかりづらいものとなっておりました。私もスキルによる構造探知を行っておりましたが、それにも引っ掛かりませんでした。恐らくは魔法的な隠蔽もなされているのでしょう」

 ややも進んでいくと、中の者に発見され戦闘となる。
 が、私たちに敵う者なんておらず、むしろ死なないように手加減をするのに手こずるレベルであった。

「弱いですね。豚トロ様はなぜこのような虫けら同然の生き物に慈悲をかけられるのでしょうか?」
「いや、普通だからね。くまちゃんが異常なんだからね」
「??」

 本気でわからないという具合に眉を寄せている。
 悪魔種と言うのをよくは知らないが、こんなものなのだろうか。
 ここら辺は今後しっかり教育しておかないと。

 アイテムスポーン場所のある最奥部へ到着すると、そこには恐らくこの拠点を守る責任者と思われる者が待ち構えていた。

「貴様らか、侵入者というのは。俺らの末端の末端を潰している二人組だな? だが、残念ながらそいつらは雑魚の雑魚。この拠点は聖女様より預かりし重要な場所だ。ゆえに、ポッピン教の主力が置かれているというわけだ」

 ……。
 マジでポッピン教関係してたぁ……。

 既にくまちゃんが鼻息を荒くしていることに、私は頭を抱えてしまう。

「はんっ、俺の威圧だけで頭を抱えるほどに恐怖したか? ならばその感覚は正しい。俺こそがポッピン教の主力。ポッピン教四天王、烈火のザクエルとは俺のことよ」

 恐る恐るくまちゃんの方を見てみる。
 すると、くまちゃんは主の偉大さに顔がにやけてしまうのを隠し切れずいるのであった。

「やはり……っ! やはり豚トロ様はすべてを分かった上でこちらに来られたというわけですねっ!」
「うん、違うね」

 でもそう捉えられてもおかしくない。
 偶然がだいぶ重なっちゃってるし……。

「やはり豚トロ様は神にも等しい御方。すべてを見通しておられる」
「違うね」
「なるほど、大変失礼いたしました。神そのものですね」
「違うかな」

「無視すんなや!!」

 私たちが下らない雑談をしていると、ザクエルとか言う奴が剣を掲げながら怒鳴って来た。

「あーごめんごめん。えっと、一応確認なんだけど、あなたたちはこの拠点を不法占拠してるだけだよね? 別に土地の所有者とか、ここの占有権を法的に与えていたりするわけじゃないよね」
「はんっ! この期に及んで何を聞いてくるかと思えば、寝言は寝て言えや。んなもん俺らにゃ関係ねぇ! お前らはこの烈火のザクエルに焼かれて死ぬがいい! 【アトミックファイヤー】!!」

 ザクエルの獄炎魔法が私たちを襲う。
 だが――、

「うーん。レベル900くらい?」
「人族の一般人の平均レベルは100にも満たないものですので、人族の中では強い方なのでしょう。ですが、我々からすれば春風のごとき涼しさですね」

 なんて具合に二人して肩をすくめてしまう。

「んなっ! なんで効かない!? くそっ! 炎の絶対耐性保持者か! ならばっ! 俺の絶技で――」
「あっ、そういうのもういいよー。ありがとうー。【ヘルズリバー】」
「ぎゃあああああああああ!!!」

 私の魔法により地獄な濁流を浴びせられたザクエルは、ショック状態に陥り気絶してしまうのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双

たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。 ゲームの知識を活かして成り上がります。 圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。

異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。

みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・

異世界転生漫遊記

しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は 体を壊し亡くなってしまった。 それを哀れんだ神の手によって 主人公は異世界に転生することに 前世の失敗を繰り返さないように 今度は自由に楽しく生きていこうと 決める 主人公が転生した世界は 魔物が闊歩する世界! それを知った主人公は幼い頃から 努力し続け、剣と魔法を習得する! 初めての作品です! よろしくお願いします! 感想よろしくお願いします!

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...