転生生活をまったり過ごしたいのに、自作キャラたちが私に世界征服を進めてくる件について

ihana

文字の大きさ
上 下
20 / 48

20話 Aランク冒険者

しおりを挟む
 何もない空間からいきなりくまちゃんが現れたことに、フランソワとカイオンは驚愕の表情を浮かべる。

「なっ! てめっ、どこから湧き出やがった!」
「どこから? そんなことはどうでもいいことでしょう? 行方不明になっている領主の娘フランソワとAランク冒険者のカイオンですね。先ほどの話はしかと聞かせていただきました。弁明の余地はございませんよ」
「チィ! 聞かれたか! だが、こっちだって手札がないわけじゃねぇぞ! おい、お前ら!」

 そう呼びかけると、洞窟の外にいたであろう仲間たちがぞろぞろと入り込んできた。
 テイマー職の者がいるからか、手懐けられた魔物たちも肩を並べている。
 その中には、私が受注した討伐クエの対象であるモストタイガーやハウルベアーも含まれていた。

「聞かれちまった以上ただで帰すわけにはいかねぇな。俺はセザンヌ最高の冒険者カイオンだ。んまっ、俺一人でも何とかなるだろうが、俺の気配探知スキルを掻い潜れるような野郎だ。警戒しておくに越したことはない」
「何とかなる? 笑わせたものですね。地を這いずる虫ごときが自分を強いと思っていようとは」
「はんっ! すかしてんじゃねぇよ! お前ら! わからせてやれ!」

 その言葉と共に、テイムされている魔物たちが前へと躍り出た。
 おまけに前衛中衛後衛とちゃんと役割分担がなされており、連携攻撃を繰り広げている。

「どうだっ! テイマーを使った魔物軍団の攻撃! 普段知恵をもたねぇ魔物どもに連携されりゃ、さすがにただじゃいられねぇだろう! ポッピン教の聖女様より伝授頂いた必勝の策よ!」
「あなたたちではただでいられないのかもしれませんが、一緒にしないでいただきたいですね」

 魔物たちの攻撃を敢えて避けなかったくまちゃんからそんな言葉が漏れ出て、カイオンたちから余裕の色が失われていった。
 なぜなら、魔物の鋭い爪はくまちゃんの肌を一切傷つけることができていなかったからだ。

「なっ! なんで生きてやがる!?」
「世間を知らないとは怖いですね。あなた方のすぐそばに神にも等しい御方がいらっしゃるというのに」
「てめぇ! 自分のことを神だとでも言いてぇのか!?」
「いえいえ、そんな畏れ多い。私などはあの御方からすれば、あなた方同様、地を這いずる虫に過ぎませんよ」
「訳の分からんことを!」

 必死に強がってはいるが、彼らが浮足立っているのは言うまでもない。
 第一、モストタイガーやハウルベアーなんぞがくまちゃんに敵うわけがない。
 くまちゃんの実力はゲーム後半の裏ボスレベルだ。
 序盤の中ボス風情が徒党を組んだところで焼け石に水であろう。

「し、しかしカイオン様、我々はどうすれば」
「くぅっ、ならば切り札を使う! 我らにはポッピン教の聖女様よりお借りしたこれがある!」

 そう述べて取り出したのは召喚の角笛であった。
 しかもあの柄はっ――!?

 図太い角笛の音が響いて、巨大な召喚陣が出現。
 ややもしてそこから現れたのは神秘の光をまとうヒョウ型の魔物であった。

「フハハハハハ! 人の身では決して到達することのできない限界を超えた存在、魔獣ケットシーだっ! 絶望に溺れながら死ぬがいぃっ!」
「はぁ……。この程度が切り札ですか……。一瞬でも警戒してしまった自分が愚かでなりませんね。豚トロ様、この者どもは掃除してしまえばよろしいですよね?」
「ダメ」

 冷たい声を発することで隠蔽魔法が自動解除され、角笛を持った男の目の前に私は姿を現わす。
 彼はそれに驚いて尻餅をついていた。

「なっ!!? どこから現れやがった!?」
「ねぇ、その角笛、どこで手に入れたの?」
「くそっ、仲間だな!? やれぇ!!」

 召喚されたケットシーが私の肩口に噛みついて来るも、ステータス差が大きすぎて一切にダメージとなっていない。
 目障りだったので適当にはたくと、それだけでケットシーは壁にめり込んでHPが全損していた。

「うひぇえ!? て、て、っめ??! 素手、でっ??」
「もう一回聞くね。これ、どこで手に入れたの? この笛ね、白亜の角笛っていうの。課金ガチャの外れアイテムだけど、プレイヤーしか持っていないはずなんだ。だからさっ――」

 無詠唱分解魔法により岩石を塵に変えてみせる。

「心して答えてね」
「ひぃぅ……!? そ、そんなっ! こんなのおかしいっ! だってケットシーは限界突破した魔物なんだぞ! 人では決して到達できない場所にいる!」
「質問に答えないの?」
「スキル【バレットアタック】」

 避けずにすべて受けていく。
 どうせ1のダメージにもならないであろう。

「なっ! なんで効かない!?」
「終わり?」
「ま、待ってくれ! わかった! 答える! 答えるから、頼むから殺さないでくれっ!」

 そう述べる彼を無視してくまちゃんの方へと視線をやる。

「くまちゃん、話してくれるみたいだから後のことはお願いしていい?」
「はい、もちろんでございます」

 ニンマリとした笑みを浮かべながら、この後どんな絶望を与えてやろうかと楽しみにしているようだ。

「いーい? 絶対に殺しちゃダメだからね? 最後はちゃんと警備隊に引き渡して法的な処分を下すのよ? わかった?」
「はい、そのように致します」

「ま、待ってくれ! 俺だけでも――」
「【マスホールドクラスト】」

 くまちゃんの拘束魔法で彼らは全員拘束されるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

スキル【アイテムコピー】を駆使して金貨のお風呂に入りたい

兎屋亀吉
ファンタジー
異世界転生にあたって、神様から提示されたスキルは4つ。1.【剣術】2.【火魔法】3.【アイテムボックス】4.【アイテムコピー】。これらのスキルの中から、選ぶことのできるスキルは一つだけ。さて、僕は何を選ぶべきか。タイトルで答え出てた。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?

青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。 そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。 そんなユヅキの逆ハーレムのお話。

処理中です...