転生生活をまったり過ごしたいのに、自作キャラたちが私に世界征服を進めてくる件について

ihana

文字の大きさ
上 下
10 / 48

10話 大福ちゃん

しおりを挟む
「……ところで、そっちで寝ておるのは一体なんじゃ?」

 壁に吹っ飛ばされて瓦礫に埋もれていたベリアルがスクッと立ち上がりこちらへ歩んでくる。

「寝ていたのではありませんよ。我が主である豚トロ様を気遣い、いない者として立ち振る舞っていたに過ぎません」
「主じゃと……? 貧相な肉体で、よくもまあとなりの豚トロ様を主に仰ごうと思おたことよ」
「いえいえ、先ほどの戦いを見せてもらいましたが、あなたこそ、よくそれで豚トロ様に仕えていたものですね。豚トロ様の足を引っ張ってご迷惑をおかけしていたんではありませんか?」
「はんっ! 八つ裂きにされたいんならはよう言うがよかろうて。この場で斬り刻んでやるわっ」
「そちらこそ、悪魔の業火に焼かれたいのでしたらいつでも焼いて差し上げますよ」

 なぜだか二人が臨戦態勢となってしまう。

「あのさ、喧嘩しないで欲しいんだけど」
「こやつが先に喧嘩を売って来たんじゃ!」
「豚トロ様、この蜘蛛もどきは愛玩動物か何かでしょうか?」
「貴様っ! 言うに事を欠いてわらわを愛玩と申すか! わらわは歴とした戦闘特化の――」


「やっぱそう思うでしょ!!!」


「「……え?」」

 私の言葉に二人が振り返って来る。

「いやぁ、大福ちゃんって私の中ではかなりの傑作なんだよねぇ。超強いのに滅茶苦茶可愛いじゃん! この蜘蛛の体とかめちゃ頑張ったんだよ! ほら見て! フワフワだよっ! 雪見大福みたいでしょ!!」
「ひぇあ!?!」

 大福ちゃんの体に抱きついて、すりすりしながら顔をうずめる。
 ああ、やっぱ触り心地いいなぁ。
 毛布のような毛が生えててすっごくあったかい。

「ととととなりの豚トロ様!!? そそそそのようにわらわに触られるなど、お、畏れ多くて、あ、あぅぅぅ」

 なんか大福ちゃんも可愛い感じになってるし。
 ふふ、やっぱ喋るのっていいなぁ。
 創ったPMCは拠点防衛イベントのときしか使うことができなかったし、動きも機械的なものであった。
 それが今は、本当の生き物のように個として存在している。
 何とも我が子ができたような気分だ。

「いいんじゃんよ。大福ちゃん超かわいいし! ……えっと、とりあえずお互い自己紹介してくれる? 言っとくけど、喧嘩したら怒るからね」
「……となりの豚トロ様がそうおっしゃるなら仕方ないの。死の象徴アラクネ種の『クモの大福』じゃ。ここ『壁に耳あり障子にメアリー』の防衛責任者を任されておる」
「仕方ありませんね。豚トロ様の御命令であれば。悪魔皇帝ベリアルと申します。偶然豚トロ様という生涯お仕えすべき神に巡り合う機会に恵まれ、今ではこうして傍仕えをさせていただいている次第となります」
「いや、いつ傍仕えになった。パーティ組むって言っただけじゃん」
「豚トロ様、どうかそう無下に扱わないで下さい。私は生涯をかけてあなた様にお仕えする所存でございます」
「知らんし……。というか悪魔が神に仕えるっていろいろおかしいでしょ」

 道中何度もパーティーメンバーと言ったのだが、この悪魔ときたらその話だけはまったく聞くつもりがないらしい。

「うーんと、そしたらハムちゃんのとこ連れてってよ。会いたいんだけど。そのあとは拠点再建かな」
「それなのじゃが、ハムスター亜種は現在遺跡の近隣で素材採集を進めておる。少量ではあるが、魔力結晶が採掘できるんじゃ」
「へぇー、じゃあちょっと行ってくるから待っててよ」
「わ、わらわも連れて行ってほしいんじゃっ!!」

 大福ちゃんが裾を掴んでくる。
 その瞳には涙が浮かんでいた。

「あっ! も、申し訳ないのじゃ……。その、また、となりの豚トロ様がいなくなってしまのではと不安に思おてしもおて……」

 不安な表情を浮かべる大福ちゃんの顔を優しく抱いて、おでこをくっつけ合う。

「ごめんね、寂しい想いをさせて。大丈夫、私はもういなくならないわ。ここを守ってて。あなたがいつも守ってくれていると信じられるから、私は安心して外に出られるの」
「……わかったのじゃ。必ず帰って来てたも」
「ええ。それじゃあまたあとでね」

 そう述べて、私とベリアルは外へと向かうのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?

青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。 そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。 そんなユヅキの逆ハーレムのお話。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

処理中です...