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10話 大福ちゃん
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「……ところで、そっちで寝ておるのは一体なんじゃ?」
壁に吹っ飛ばされて瓦礫に埋もれていたベリアルがスクッと立ち上がりこちらへ歩んでくる。
「寝ていたのではありませんよ。我が主である豚トロ様を気遣い、いない者として立ち振る舞っていたに過ぎません」
「主じゃと……? 貧相な肉体で、よくもまあとなりの豚トロ様を主に仰ごうと思おたことよ」
「いえいえ、先ほどの戦いを見せてもらいましたが、あなたこそ、よくそれで豚トロ様に仕えていたものですね。豚トロ様の足を引っ張ってご迷惑をおかけしていたんではありませんか?」
「はんっ! 八つ裂きにされたいんならはよう言うがよかろうて。この場で斬り刻んでやるわっ」
「そちらこそ、悪魔の業火に焼かれたいのでしたらいつでも焼いて差し上げますよ」
なぜだか二人が臨戦態勢となってしまう。
「あのさ、喧嘩しないで欲しいんだけど」
「こやつが先に喧嘩を売って来たんじゃ!」
「豚トロ様、この蜘蛛もどきは愛玩動物か何かでしょうか?」
「貴様っ! 言うに事を欠いてわらわを愛玩と申すか! わらわは歴とした戦闘特化の――」
「やっぱそう思うでしょ!!!」
「「……え?」」
私の言葉に二人が振り返って来る。
「いやぁ、大福ちゃんって私の中ではかなりの傑作なんだよねぇ。超強いのに滅茶苦茶可愛いじゃん! この蜘蛛の体とかめちゃ頑張ったんだよ! ほら見て! フワフワだよっ! 雪見大福みたいでしょ!!」
「ひぇあ!?!」
大福ちゃんの体に抱きついて、すりすりしながら顔をうずめる。
ああ、やっぱ触り心地いいなぁ。
毛布のような毛が生えててすっごくあったかい。
「ととととなりの豚トロ様!!? そそそそのようにわらわに触られるなど、お、畏れ多くて、あ、あぅぅぅ」
なんか大福ちゃんも可愛い感じになってるし。
ふふ、やっぱ喋るのっていいなぁ。
創ったPMCは拠点防衛イベントのときしか使うことができなかったし、動きも機械的なものであった。
それが今は、本当の生き物のように個として存在している。
何とも我が子ができたような気分だ。
「いいんじゃんよ。大福ちゃん超かわいいし! ……えっと、とりあえずお互い自己紹介してくれる? 言っとくけど、喧嘩したら怒るからね」
「……となりの豚トロ様がそうおっしゃるなら仕方ないの。死の象徴アラクネ種の『クモの大福』じゃ。ここ『壁に耳あり障子にメアリー』の防衛責任者を任されておる」
「仕方ありませんね。豚トロ様の御命令であれば。悪魔皇帝ベリアルと申します。偶然豚トロ様という生涯お仕えすべき神に巡り合う機会に恵まれ、今ではこうして傍仕えをさせていただいている次第となります」
「いや、いつ傍仕えになった。パーティ組むって言っただけじゃん」
「豚トロ様、どうかそう無下に扱わないで下さい。私は生涯をかけてあなた様にお仕えする所存でございます」
「知らんし……。というか悪魔が神に仕えるっていろいろおかしいでしょ」
道中何度もパーティーメンバーと言ったのだが、この悪魔ときたらその話だけはまったく聞くつもりがないらしい。
「うーんと、そしたらハムちゃんのとこ連れてってよ。会いたいんだけど。そのあとは拠点再建かな」
「それなのじゃが、ハムスター亜種は現在遺跡の近隣で素材採集を進めておる。少量ではあるが、魔力結晶が採掘できるんじゃ」
「へぇー、じゃあちょっと行ってくるから待っててよ」
「わ、わらわも連れて行ってほしいんじゃっ!!」
大福ちゃんが裾を掴んでくる。
その瞳には涙が浮かんでいた。
「あっ! も、申し訳ないのじゃ……。その、また、となりの豚トロ様がいなくなってしまのではと不安に思おてしもおて……」
不安な表情を浮かべる大福ちゃんの顔を優しく抱いて、おでこをくっつけ合う。
「ごめんね、寂しい想いをさせて。大丈夫、私はもういなくならないわ。ここを守ってて。あなたがいつも守ってくれていると信じられるから、私は安心して外に出られるの」
「……わかったのじゃ。必ず帰って来てたも」
「ええ。それじゃあまたあとでね」
そう述べて、私とベリアルは外へと向かうのだった。
壁に吹っ飛ばされて瓦礫に埋もれていたベリアルがスクッと立ち上がりこちらへ歩んでくる。
「寝ていたのではありませんよ。我が主である豚トロ様を気遣い、いない者として立ち振る舞っていたに過ぎません」
「主じゃと……? 貧相な肉体で、よくもまあとなりの豚トロ様を主に仰ごうと思おたことよ」
「いえいえ、先ほどの戦いを見せてもらいましたが、あなたこそ、よくそれで豚トロ様に仕えていたものですね。豚トロ様の足を引っ張ってご迷惑をおかけしていたんではありませんか?」
「はんっ! 八つ裂きにされたいんならはよう言うがよかろうて。この場で斬り刻んでやるわっ」
「そちらこそ、悪魔の業火に焼かれたいのでしたらいつでも焼いて差し上げますよ」
なぜだか二人が臨戦態勢となってしまう。
「あのさ、喧嘩しないで欲しいんだけど」
「こやつが先に喧嘩を売って来たんじゃ!」
「豚トロ様、この蜘蛛もどきは愛玩動物か何かでしょうか?」
「貴様っ! 言うに事を欠いてわらわを愛玩と申すか! わらわは歴とした戦闘特化の――」
「やっぱそう思うでしょ!!!」
「「……え?」」
私の言葉に二人が振り返って来る。
「いやぁ、大福ちゃんって私の中ではかなりの傑作なんだよねぇ。超強いのに滅茶苦茶可愛いじゃん! この蜘蛛の体とかめちゃ頑張ったんだよ! ほら見て! フワフワだよっ! 雪見大福みたいでしょ!!」
「ひぇあ!?!」
大福ちゃんの体に抱きついて、すりすりしながら顔をうずめる。
ああ、やっぱ触り心地いいなぁ。
毛布のような毛が生えててすっごくあったかい。
「ととととなりの豚トロ様!!? そそそそのようにわらわに触られるなど、お、畏れ多くて、あ、あぅぅぅ」
なんか大福ちゃんも可愛い感じになってるし。
ふふ、やっぱ喋るのっていいなぁ。
創ったPMCは拠点防衛イベントのときしか使うことができなかったし、動きも機械的なものであった。
それが今は、本当の生き物のように個として存在している。
何とも我が子ができたような気分だ。
「いいんじゃんよ。大福ちゃん超かわいいし! ……えっと、とりあえずお互い自己紹介してくれる? 言っとくけど、喧嘩したら怒るからね」
「……となりの豚トロ様がそうおっしゃるなら仕方ないの。死の象徴アラクネ種の『クモの大福』じゃ。ここ『壁に耳あり障子にメアリー』の防衛責任者を任されておる」
「仕方ありませんね。豚トロ様の御命令であれば。悪魔皇帝ベリアルと申します。偶然豚トロ様という生涯お仕えすべき神に巡り合う機会に恵まれ、今ではこうして傍仕えをさせていただいている次第となります」
「いや、いつ傍仕えになった。パーティ組むって言っただけじゃん」
「豚トロ様、どうかそう無下に扱わないで下さい。私は生涯をかけてあなた様にお仕えする所存でございます」
「知らんし……。というか悪魔が神に仕えるっていろいろおかしいでしょ」
道中何度もパーティーメンバーと言ったのだが、この悪魔ときたらその話だけはまったく聞くつもりがないらしい。
「うーんと、そしたらハムちゃんのとこ連れてってよ。会いたいんだけど。そのあとは拠点再建かな」
「それなのじゃが、ハムスター亜種は現在遺跡の近隣で素材採集を進めておる。少量ではあるが、魔力結晶が採掘できるんじゃ」
「へぇー、じゃあちょっと行ってくるから待っててよ」
「わ、わらわも連れて行ってほしいんじゃっ!!」
大福ちゃんが裾を掴んでくる。
その瞳には涙が浮かんでいた。
「あっ! も、申し訳ないのじゃ……。その、また、となりの豚トロ様がいなくなってしまのではと不安に思おてしもおて……」
不安な表情を浮かべる大福ちゃんの顔を優しく抱いて、おでこをくっつけ合う。
「ごめんね、寂しい想いをさせて。大丈夫、私はもういなくならないわ。ここを守ってて。あなたがいつも守ってくれていると信じられるから、私は安心して外に出られるの」
「……わかったのじゃ。必ず帰って来てたも」
「ええ。それじゃあまたあとでね」
そう述べて、私とベリアルは外へと向かうのだった。
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