43 / 43
この10年をともに
しおりを挟む
地上での目的を果たし、俺たちは無事に地下に帰って来た。
今回のためにたくさんの人が力を貸してくれた。俺とトーカはお礼と無事戻ったことを伝えにみんなの所をまわった。
ラボのみんなは地上に上がる箱がきちんと機能したことを喜び、プティさんが更に改良版を作ろうと目を輝かせるのをサリさんが止めていた。
ノーマには武器を整備してもらいながら今回のことをずっと話していたら「うるさい!」と部屋を追い出された。
みんな相変わらずだ。
フォーラは念の為サカドに危険が及ばないか、しばらく地上で過ごして見張らせると言ってくれた。
お礼を伝えると「このことをぜひグライ様に話してくださいね」と言われた。ちゃっかりしている。
そのグライさんは俺のことが気に入ったらしく、自分の部隊にこないかと誘われた。けどトーカとグリーズが全力で反対してこの話は無しになった。
マイトはあの任務の後うちの協力者になったらしい。ミリッサやマイトと一緒に仕事ができる日がくればいいな。
ベリアとアルアは連絡をとりあうようになったらしく、時々会って食事したりしているそうだ。
ハイルは少しずつ心を取り戻しているらしい。最近は時々、育った孤児院に行って子供達の相手をしているそうだ。
この話をするロウさんは嬉しそうだった。
ジンは仲間たちと人助けの道を探って色々動いているらしい。うちの組織との関係も良好だ。
赤い玉を返しそびれたので、時々連絡をとってジンとたわいもない話をしている。
クキはすっかり隠れ家に定住してしまったらしい。アジトに帰ると言うと寂しがられた。
「寂しい!寂しいよ~。帰らないでよ~」
「お前、ずっと一緒にいたんだから少しは我慢しろ。また仕事で会えるだろ」
「絶対だよ。絶対また来てよ!」
「大丈夫だよ。絶対また来るから。色々ありがとう」
「美味しいお店探しとくから一緒に行こうね!約束だよ!」
「いや、仕事をしてくれ」
あまりに寂しがるので可哀想になったが、アジトに帰らないわけにもいかない。お店探しといてねと約束すると、ぎゅーっと抱きしめて「元気でね!」と言ってくれた。
ああ、クキのこうゆう所にずっと助けられてきたんだな。
そして、アジトに帰った俺にはもう一つ嬉しいことがあった。
「コトラ⁉︎」
「久しぶりだね、ヒスイ」
アジトに帰るとなぜかコトラがいた。
「トリ家の後片付けが済んだら市民街で静かに暮らそうと思っていたんだけどね。トーカから学校の先生のアシスタントをしないかと誘われて」
トーカをキッと睨む。いつものニヤニヤ笑いがあった。
「なんで言わないんだよ!」
「地上に行く前にアジトに行かないかって言ったのに、ジンのことを気にして断っただろう。あの時に言おうとしたんだよ」
残念~とわざとらしい顔をされて、ますますイライラする。
「コトラ君が来てくれて助かっているよ。子供達も彼に懐いているし」
「コトラ兄ちゃんやさし~よ~」
ソアラと子供達が嬉しそうだ。たしかにコトラは穏やかだし教えるのもうまそうだ。
「そうそう。コトラは何でも知ってるから俺達も喜んでるんだぜ」
「一緒に遊んでくれるしね~」
聞き慣れた声がする。嬉しくて声の方に駆け出した。
「イッカ!ウノ!」
思いっきり2人に抱きつく。
2人は全力で抱きしめてくれた。
「やっと帰って来たな!」
「ずっと待ってたんだよ~」
ごめんと謝ると「心配かけた罰だぁ」と2人に髪をクシャクシャにされた。
「よし!気もすんだし、まずはこれをしないとな」
「ほらほら、みんなも一緒に」
みんなで俺とトーカを取り囲む。イッカが「せーの!」と言うとみんなで一斉に声をだした。
「おかえり!」
「……ただいま」
俺は今、たくさんの笑顔に囲まれている。それはとても幸せなことだった。
その日の夜、アジトの外に出て夜空を眺めていた。
地上の空は綺麗だったけど、俺はみんなと過ごすこの空のほうが好きだ。
「………ナズ。守ってくれてありがとう」
空に向かって話しかける。返事はない。それでもどこかで聞いてる気がして話を続けた。
「なあ、ナズ。俺はこれからもお前が守って良かったと思える世界にできるように頑張っていくよ。見ていてくれ。そしてもし……」
言葉に詰まる。でもこの先は絶対に言わないといけないことだ。
「………もし俺がお前に守られていることに驕って、世界を、お前を傷つけるようなことをしたら………その時は俺を殺してくれ」
「じゃあ、相棒の俺も連帯責任だねぇ」
後ろから急に声がする。振り返るとトーカがヨッと手を上げて立っていた。
「いつのまに!」
「ん~。ありがとうくらいからかな」
「最初からじゃねぇか!」
まあまあと笑いながらトーカが横に並ぶ。見上げた顔はなんだかいつもより晴れやかだ。
「水臭いじゃない。1人で全部背負おうとするなんて」
「それは……」
「間違ったら2人で償えばいいって言ってくれたのはお前だよ。今更俺だけ置いてくなんて、まだ俺は信用ないのかな」
「わかったよ。悪かったよ」
わかればよろしいとトーカは笑顔になる。
「なあ………」
「なんだい?」
「………あの時、連れ出してくれてありがとう」
あの日、トーカと一緒に廊下から飛び出して世界が変わった。世界がこんなにも優しさで満ちてるなんて知らなかった。
「どういたしまして。じゃあ俺は、信じてついてきてくれてありがとう。だな」
トーカがニッと笑う。隠し事もごまかしも何もない、心の底からの嬉しそうな顔だ。
「………どういたしまして」
笑い声は2人分。夜空に溶けていった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
今回のためにたくさんの人が力を貸してくれた。俺とトーカはお礼と無事戻ったことを伝えにみんなの所をまわった。
ラボのみんなは地上に上がる箱がきちんと機能したことを喜び、プティさんが更に改良版を作ろうと目を輝かせるのをサリさんが止めていた。
ノーマには武器を整備してもらいながら今回のことをずっと話していたら「うるさい!」と部屋を追い出された。
みんな相変わらずだ。
フォーラは念の為サカドに危険が及ばないか、しばらく地上で過ごして見張らせると言ってくれた。
お礼を伝えると「このことをぜひグライ様に話してくださいね」と言われた。ちゃっかりしている。
そのグライさんは俺のことが気に入ったらしく、自分の部隊にこないかと誘われた。けどトーカとグリーズが全力で反対してこの話は無しになった。
マイトはあの任務の後うちの協力者になったらしい。ミリッサやマイトと一緒に仕事ができる日がくればいいな。
ベリアとアルアは連絡をとりあうようになったらしく、時々会って食事したりしているそうだ。
ハイルは少しずつ心を取り戻しているらしい。最近は時々、育った孤児院に行って子供達の相手をしているそうだ。
この話をするロウさんは嬉しそうだった。
ジンは仲間たちと人助けの道を探って色々動いているらしい。うちの組織との関係も良好だ。
赤い玉を返しそびれたので、時々連絡をとってジンとたわいもない話をしている。
クキはすっかり隠れ家に定住してしまったらしい。アジトに帰ると言うと寂しがられた。
「寂しい!寂しいよ~。帰らないでよ~」
「お前、ずっと一緒にいたんだから少しは我慢しろ。また仕事で会えるだろ」
「絶対だよ。絶対また来てよ!」
「大丈夫だよ。絶対また来るから。色々ありがとう」
「美味しいお店探しとくから一緒に行こうね!約束だよ!」
「いや、仕事をしてくれ」
あまりに寂しがるので可哀想になったが、アジトに帰らないわけにもいかない。お店探しといてねと約束すると、ぎゅーっと抱きしめて「元気でね!」と言ってくれた。
ああ、クキのこうゆう所にずっと助けられてきたんだな。
そして、アジトに帰った俺にはもう一つ嬉しいことがあった。
「コトラ⁉︎」
「久しぶりだね、ヒスイ」
アジトに帰るとなぜかコトラがいた。
「トリ家の後片付けが済んだら市民街で静かに暮らそうと思っていたんだけどね。トーカから学校の先生のアシスタントをしないかと誘われて」
トーカをキッと睨む。いつものニヤニヤ笑いがあった。
「なんで言わないんだよ!」
「地上に行く前にアジトに行かないかって言ったのに、ジンのことを気にして断っただろう。あの時に言おうとしたんだよ」
残念~とわざとらしい顔をされて、ますますイライラする。
「コトラ君が来てくれて助かっているよ。子供達も彼に懐いているし」
「コトラ兄ちゃんやさし~よ~」
ソアラと子供達が嬉しそうだ。たしかにコトラは穏やかだし教えるのもうまそうだ。
「そうそう。コトラは何でも知ってるから俺達も喜んでるんだぜ」
「一緒に遊んでくれるしね~」
聞き慣れた声がする。嬉しくて声の方に駆け出した。
「イッカ!ウノ!」
思いっきり2人に抱きつく。
2人は全力で抱きしめてくれた。
「やっと帰って来たな!」
「ずっと待ってたんだよ~」
ごめんと謝ると「心配かけた罰だぁ」と2人に髪をクシャクシャにされた。
「よし!気もすんだし、まずはこれをしないとな」
「ほらほら、みんなも一緒に」
みんなで俺とトーカを取り囲む。イッカが「せーの!」と言うとみんなで一斉に声をだした。
「おかえり!」
「……ただいま」
俺は今、たくさんの笑顔に囲まれている。それはとても幸せなことだった。
その日の夜、アジトの外に出て夜空を眺めていた。
地上の空は綺麗だったけど、俺はみんなと過ごすこの空のほうが好きだ。
「………ナズ。守ってくれてありがとう」
空に向かって話しかける。返事はない。それでもどこかで聞いてる気がして話を続けた。
「なあ、ナズ。俺はこれからもお前が守って良かったと思える世界にできるように頑張っていくよ。見ていてくれ。そしてもし……」
言葉に詰まる。でもこの先は絶対に言わないといけないことだ。
「………もし俺がお前に守られていることに驕って、世界を、お前を傷つけるようなことをしたら………その時は俺を殺してくれ」
「じゃあ、相棒の俺も連帯責任だねぇ」
後ろから急に声がする。振り返るとトーカがヨッと手を上げて立っていた。
「いつのまに!」
「ん~。ありがとうくらいからかな」
「最初からじゃねぇか!」
まあまあと笑いながらトーカが横に並ぶ。見上げた顔はなんだかいつもより晴れやかだ。
「水臭いじゃない。1人で全部背負おうとするなんて」
「それは……」
「間違ったら2人で償えばいいって言ってくれたのはお前だよ。今更俺だけ置いてくなんて、まだ俺は信用ないのかな」
「わかったよ。悪かったよ」
わかればよろしいとトーカは笑顔になる。
「なあ………」
「なんだい?」
「………あの時、連れ出してくれてありがとう」
あの日、トーカと一緒に廊下から飛び出して世界が変わった。世界がこんなにも優しさで満ちてるなんて知らなかった。
「どういたしまして。じゃあ俺は、信じてついてきてくれてありがとう。だな」
トーカがニッと笑う。隠し事もごまかしも何もない、心の底からの嬉しそうな顔だ。
「………どういたしまして」
笑い声は2人分。夜空に溶けていった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
10
お気に入りに追加
2
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる