10 -第三部-

ヒツジ

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泣き虫

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「ねぇ、今ちょっとだけ時間ある?」
「レオナさん? どうかされたんですか?」

 昨日のお風呂の中でリディアちゃんに話した、冒険者にアクセサリーを貸す話について、早速実行に移してみた。
 最初に声を掛けたのは、一番下のF級からB級まで、たったの二年で駆け上がってきた、私が目を掛けているパーティの一つだ。
 その中で、パーティの要とも言える薬師の少女に声を掛け、ギルドの個室へ招き入れた。

「この個室って、依頼者がギルド職員へ依頼の相談をする部屋ですよね? 私、初めて入りましたよ」
「まぁ、依頼を受ける側の冒険者は、あまり入る機会は無いわよね。でも、依頼者の個人情報や、報酬の話なんかを大っぴらな場所でやる訳にもいかないから、防音魔法が施されたこの部屋で……って、脱線したわね。本題へ入りましょう」
「は、はい。あの、私たちのパーティが、何かやらかしたのでしょうか?」
「逆よ。優秀で、かつ信頼出来るからこそ声を掛けたの。もちろん、悪い話ではないわ。ちょーっと協力して欲しいのよ」

 目の前の少女が小さく頷いたので、今朝リディアちゃんから借りてきた、木の葉をモチーフにしたブローチを取り出す。
 リディアちゃんの説明によると、これは身体や精神の異常に耐性を持つ事が出来る効果があるのだとか。
 薬師は、その名の通り薬を用いてパーティメンバーの怪我を治したり、麻痺や幻覚状態を解いたり、逆に毒草などを用いて相手を撹乱したりと、魔物と戦いながらも冷静な判断力が求められる。

「……という訳で、このブローチをつけているだけで、パーティの危険度が大きく減るのよ」
「例えば、毒アゲハが使ってくる鱗粉攻撃で、パーティ全員が麻痺させられて全滅……なんて話があるけれど、これを身につけていれば麻痺が防げて、仲間を治療することが出来るって事ですか?」
「そういう事よ。毒アゲハの鱗粉は、風に乗って全員一気にやられちゃう事があるからね。とはいえ、絶対防御って訳ではなくて、効きにくいって思ってくれれば良いわ」
「えっと、そのブローチを買わないかっていうお話ですか?」
「いいえ。試行として使って欲しいの。もちろん料金なんてかからないわ。ただ、後で返してくれれば良いだけよ。その時、ちょっと感想とかを聞かせてもらうかもしれないけど」
「はぁ……まぁそれくらいでしたら」

 半信半疑って感じだけど、一先ず一つ目のアクセサリーを渡し、次の冒険者を探す。
 今度は魔力が上がるアクセサリーを渡し、次は敏捷性。あとは、スタミナを増やすとか。
 いずれも信頼出来る子にしか渡していないし、きっといけるはずっ!
 だってリディアちゃんのアクセサリーは、本当に凄いから!
 きっと、ギルドのため、冒険者のため、そして依頼者のためになるはずよっ!
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