【完結】今後の鉈枠は、

最終章 想いを告げるにはどうすれば？

あとがき

Ｒ指定の基準はどこから、どこまでになるだろうか。というのを常々考えていた。

Ｒ指定のライン（Ｒ１５もしくはＲ１８）というのは既に明確にあれど、全然Ｒ指定じゃない場合、現代文学や大衆娯楽に分類したとき読者が恐らく混乱してしまうため、内容の質からＢＬという枠に分類することにしたが、そもそもＲ指定を挟まないＢＬ小説というのを自分の中で明確にしたいという気持ちもあった。

ここから先は、ネタバレの話になるので、ご注意を。

タイトルにもある通り、本作は鉈枠という名称を使っている。

この「枠」というのは、配信の「枠」を意味する。配信サイトによっては、配信ができる時間制限が設けられていることがある。例えばTwitchツイッチは最長48時間、YouTubeは時間制限がないものの12時間以上の配信はアーカイブが残せない。残す場合には１２時間以下、それより長くなる場合には、再度改めて配信を立てる必要がある。

なお配信者が配信を始めると、視聴者（リスナー）からのコメントで、よく「わこつ」という言葉が流れているのをコメント欄で目にすることがある。「わこつ」とは、配信主に向けて視聴者が「（配信の）枠取り」を、ありがとう、又は、お疲れ様という御礼を述べる言葉である。

令和の今でも、どこかの配信で「わこつ」は使われている配信冒頭の挨拶になるのだが、本作では配信主の求宮宗武が、活動名「鉈」ときに「鉈ちゃん」として、配信の枠を取って配信活動を開始すると、視聴者から「おつ鉈」などの挨拶がコメント欄を賑わせる。

とまぁ、まさに配信者、求宮宗武の物語を紡いでいくことになるが、実際には宗武の視点を通して、もう一人の男、近江大にフォーカスした物語である。

この近江大という男は、顔が良くて、美味しいスイーツを作れるだけじゃなくて、美味しいご飯を作れる腕を持つスペックの良さが、序盤から印象に残るかもしれない。しかし何が本当で、何が事実でないか。過去、発言したことの半分以上が嘘で塗り固められている。それが、やがて明らかとなり、実は誠実さに欠けているキャラクターであることに気付く。

近江大の背景が本当に垣間見れるのは最終章の機内に乗り込んでからの話になるのだが、機体が飛び立ちフランスに渡ってからの話こそが本番となり、この先の二人、特に近江大の物語に読者が興味を湧くかどうかが大事なところで、タイトルにある「今後の鉈枠は、」→「近江大の話」へ繋げるために、それまでに至る導入部を描いたのが、実際のところ本作となる。

作中で登場した映画の元ネタは、以下の通りである。
・「アメリア」→『アメリ』
・「哀愁と悲しみの果てに」→『愛と哀しみの果て』
・「麗しきサブリミナル」→『麗しのサブリナ』

構成・ストーリーの詰め：
２０２４年８月２１日～８月３１日

執筆と脱稿：
２０２４年９月１日～１０月２２日

連載期間は、アルファポリス・各エピソードのタイムスタンプの通り。

今回、活用した配信のモデルケースについて。
作中に登場した「視聴チケ発行」という言葉は、Twitchのサブスクギフト及び、Youtubeのメンバーシップギフト（通称：メンギフ）のような制度をモデルにしている。利用内容は各配信サイトにて多少異なるが、自分以外のユーザーに視聴権限を1ヶ月無料体験できるような仕組みである。

配信サイトでは、よくある制度ではあるが、今回事件に巻き込まれた配信主のためにリスナーたちが、過去の鉈枠のアーカイブ配信から問題となる荒らし行為と認められる箇所を洗い出してもらう際に、大いに活躍をみせる。配信ならではの小ネタではあるものの、刑事がリスナーとして含まれているという点も、一つ特殊な話ではあった。

第一章～第三章にみられるような凸者からの相談エピソードは、７つくらいのエピソードを本来、用意していた。しかし実際には３つのみの採用に至る。第三章の連載時には既に８万文字へ到達し、大きく事態が変わる展開と、ちりばめた伏線等の回収だけでも１０万文字に届くことが予想されたため、残り４つのエピソードは採用しなかった。

今回の作品において、もっとも特徴的なのは、視聴者（リスナー）のコメントの登場回数かもしれない。
配信者自身の目線で、しょっちゅうコメント欄を見ているわけではなく、凸者からの悩みや相談事に耳を傾けるのが優先されるため、流れるコメントには必要なときに応じて見るという行動に留めている。

前作に執筆した「僕らの配信は――」においては、配信者とリスナーの距離感を描くことも重要な点だった。他視点も大いに活用し、ゲーム配信者ｘゲーム配信者の究極の愛を目指して描き切るのが焦点であった。

今回は、主人公の求宮宗武（鉈ちゃん）がＸデーに狙われることを、水面下で鉈リスと近江大が見張るというのが実際の軸となり、他視点（近江視点や、灘広の配信など）はネタバレになるため活用しなかった。主人公１視点のみである。

ちなみにフランスという国には、2020年度より前に３回ほど行っており、パリ市内からノルマンディー地方のモンサンミッシェルまで筆者は足を伸ばしたことがある。南フランスの話が作中に登場するのは、筆者が行きたいからである。南仏プロヴァンス地方に想いを馳せつつ、果たして行けるのか分からない近年の最悪な体調不良で飛行機にすら乗れない今、この作品に筆を走らせた。

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