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第四章 言い掛かりを止めるには?

#22:守る会のリーダーたち

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「ごめんなさい! 写メを送ったのは少しでも回りを警戒してほしいなって思って。でも結局連れ去られるなんて思ってもみなくて…なんか凄く恥ずかしいです。ストーキングまがいなDM送って本当にすみませんでした!」

 制服姿の女の子が深々と頭を下げた。この近くでは見かけない。胸元に付いた校章のバッチが有名な偏差値の高い女子高だと直ぐにわかった。

「部屋に忍び込んでスマホに位置情報を仕込んだのは、俺です。まさか部屋が近いとは思わなくて。ずっと見てて、いや遠くからですけど、こ、今度からはきちんと挨拶しますね! あ、えっと、そうじゃないか…あの、ともかく勝手な侵入と追跡をして、本当に申し訳ありません」

 少し肩幅のある中肉中背の男も深々と頭を下げた。サラリーマンだ。このあと仕事なのかスーツ姿だった。俺が住んでるマンションと同じで、しかも同じ階だから、遠くから見てたと言うが信用はできない。直ぐ近くから見ていたんじゃないかと喉まで出かかったが寸でのところで、俺はなんとか言葉を飲み込んだ。

「めっちゃいっぱい盗撮したのは、私です。写真が趣味なので。基本、眺めてるだけで良かったんですけど、よく撮れたから仲間にも見せたくて。ここにいる人たちだけですけど、勝手に撮影してすみませんでした」

 お子さんがいるという専業主婦の女性もまた深々と腰を折り曲げて謝罪した。恐らくは自身の子供の思い出を残すために、カメラを始めたのだろうが、俺にレンズの矛先を向けるとはいただけない。いや、一言断りを貰えればいくらでも応じたのだが。

「追跡して位置を特定したのは私です。というか昔ハッキングで学校のテスト問題を盗んで警察沙汰になったけど。今回の件、見逃してくれてありがとうございました。やっぱ鉈ちゃんは神ですね!」

 廃墟に連れていかれた俺のことを、スマホの追跡装置から居場所を特定したのは、いかにもな人物だった。唇にピアス、耳にもピアス、両手の指の関節にはタトゥーのような文字が刻まれており、赤と黒のネイルで染まる爪を持つ少年、いや少女のようだった。ついでに頭はショキングピンクで、毛先になるほど黄色いグラデーションで染まっている。

 他の三人は全員黒髪で、ごく普通の女子高生、サラリーマン、主婦なのに、最後に謝罪した少女の眉は青いアイシャドウに黒い唇というパンクな装いだ。警察沙汰になったという話をされても、納得してしまうというか風貌で人を判断してはいけないのだけど。

「皆んな俺のために色々尽くしてくれたんだよね。守る会まで結成してさ。でもね。君たちにも何かがあったら親御さんに顔向けできなくなるよ俺は。だから今後、危ないことには首を突っ込んじゃダメだぞ?」

 まるで学校の先生みたいな言い回しになったが、4人全員、目をうるうるとさせた。いや、その内の男が目をウルウルさせても、正直可愛くはない。

 彼らは、もうしないと誓ってくれた。

 3人の姿は駅の方角へ、1人の男はマンションへ向かって行く。

 確か先輩の店には、あと一人いた筈だ。

 遠くからでは顔が見えなかったが、あと一人、俺のことを調べて、お悩みフォームから灘広が何か企んでいると送ってくれた人物がいる。4人が教えてくれたのだ。

「てか。店内にいたのは女性客だけじゃなくて、男もいたとはなぁ」

 俺は思い込んでいた。遠くから見た景色は女性ばかりだったから。まさか俺と同じマンションに住むサラリーマンが店の奥に居たなんて。

「すみません。遅れました!」

 どうやら5人目が来たようだ。

 振り返ると、そこにいたのは見知った顔だった。

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