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第四章 言い掛かりを止めるには?

#16:匂わせ発言

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 すぐに言葉が出てこなかった。俺の言動や行動を自分の配信内でダブらせる、いわゆる匂わせ発言をしていたなんて想像したくなかった。

「それじゃ…まるで…俺と灘広が同棲してるみたいな発言じゃんか!」

 刑事が、ちょっと噴き出した。

「いやそうじゃなくて、カップルの匂わせじゃない。むしろ灘広さんは、お前。宗武自身さ。つまり灘チャンネルも、鉈チャンネルも中の人は同じ人っていうことを演じていたんだと思う」

「はぁぁああああ?」

 先輩の話は、突飛とっぴすぎて想像を絶する指摘だった。

「いやいやいや。意味が分からないって。普通に分かるでしょ!」

「普通に分かるって何が?」

「だから俺と灘広だよ! いや鉈リスも、灘リスも流石に間違えるほど馬鹿じゃないだろ!」

「アンチリスナーは、間違って入ってきたじゃないか。灘チャンネルだと思って荒らしに来ることがあるって、さっき刑事さんに自分で言ったよな?」

 俺は、ハッとした。自分で言った発言を、すっかり忘れていた。

「た、確かに…なんか…最近やたらと荒らしが来るなとは思ってたけど」

「多分、灘広さんが混乱を招くような配信をしてたからだよ。殆どの人は間違えないと思うし、荒らし行為は訴訟沙汰になるからな。下手に攻撃なんて普通の人はしない。でも開示請求を受けた人や親族なんかは、灘広さんを酷く恨んでいるだろうな。訴訟問題は弁護士に全部任せているって、灘広さんはメン限で話してた。いちいち訴える相手には一切会わないこともあるらしい」

「だからって灘広は顔出しどころか体系も映してるし、皆が知ってるじゃん。俺と全然体系も違うし!」

「警察は今、取調べをしてるから、この先で分かることかもしれないけど。もし灘広さんが、兼ねてより灘広を演じてる別の人で、本命が求宮宗武という人物が灘チャンネルを動かしていると錯覚させることができれば、殺害予告を出した相手を欺くことは可能だと思う」

「可能…ありえない…な、なんでそうなる?」

「だって灘チャンネルが本家で、鉈チャンネルは分家。本家は暴露系、分家は軽い相談系。一人の人間が実のところ全部運営・監修してる、チャンネルを分けた運営も世の中にはある。宗武という男が本当は灘広という配信者だと思い込んでくれれば、灘広さんにとって都合が良いと思わないか?」

 急に恐ろしく感じた。配信活動をしているだけなのに、見ず知らずの人に殺されるかもしれない条件が日に日に整っていたかと思うと、俺が死ぬ運命もまたあったかもしれないのだ。

「ここ半年、灘チャンネルに並ぶ動画の画像だって、鉈チャンネルの動画の画像を真似て作られている。いきなり真似したらリスナーが騒ぐから、少しずつまばらに増やしてる。というか一部の鉈リスは気づいてたけど。宗武は知ってたか?」

 俺は真横に首を振った。というか灘広のチャンネルを、まじまじとは見ない。

「てか、日増しに灘広だと仕立て上げられてたなんて、キモすぎて気分悪くなってきた」

「そんな状況に置かれてるお前のことを知って、何かできることはないかと思ったんだ。でも俺はSNS内で、推しに何かあったら怖いとする鉈リスの人たちの呟きを見てるだけしかできなくて」

「先輩…」

「だけど本人に直接伝えることができれば、まだ何とかできるかもしれないって発言を見たから、俺は名乗り出ることにした」

「名乗り出る…それじゃ、そのために帰国したっていうの?」

「したよ。というかまず俺はお前の居場所を、どうやって探すかが問題だった。同学年で卒業したわけじゃないから、学校に問い合わせてもムダだろうし、前に住んでる場所にも行ってみたけど、商業施設になってた。だから鉈リスの人たちとオフ会して、まぁ集まったところで何ができるか、どう対策できるかまではわからなかったけど、お前のリスナーの中には恐ろしいくらい優秀な人がいた」

「優秀な…あ、それで追跡できるアプリかよ!」

「ああ、でもアプリだけじゃない。既に宗武の居場所は特定されてた。住んでる場所さ。だから店を出す前から俺は知ってたんだ。すまない」

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