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第四章 言い掛かりを止めるには?

#13:殺害予告

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「しかし一年前に来た殺害予告は、いつもとは状況が違いました」

「状況が違う?」

「ええ。一年後に殺す。そう予告されていました。差出人は不明でした。去年300万人達成のファンミーティングを開いた際に回収したファンレターの中に紛れ込んでいたんです。誰が入れたのか会場の防犯カメラでは特定には至りませんでしたから」

 ファンミーティング。との言葉を聞いて、ピンときた。

 灘広は、100万人単位で登録者数を突破するたびに、ファンミーティングを定期的に開いている。どこかの大きいホールを借りて、サインに撮影会、リスナーらとのお喋りに興じるイベントである。

 灘広と最も一番距離が短くなるタイミングなのだが、屈強な肉体を持つSPみたいな人物を雇い灘広のそばに立たせている。そんな会場内の様子を撮影した写真がSNSに流れてきたのを目にしたことがある。

「なんで一年前に予告するんだ?」

 事前に予告なんてしたら次なるファンミーティングは開かれない可能性だってある。

「悔い改めろって意味だと思う」

 先輩が間に割って入った。

「え。悔い改める?」

「灘リスが指摘してたことだ。開示請求を受けた人は結構いるらしいからな。訴えられて極貧生活を更に強いられた元リスナーもいるって、鉈リスの間でも有名になってるからな。そういう元リスナーが過去に起こした嫌がらせを、灘広さんがメン限で振り返り、脅迫状の件を含めて雑談会議をしたんだ。そのとき流れていたコメントの内の一つに『開示請求で怒ったアンチリスナーが悔い改めろってことじゃね?』って書き込んだんだ」

 待て待て待て。なんで灘広の裏配信を先輩は知ってるんだ?

「え。先輩、灘広のメン限見てたんすか?」

 小さく「あ…」と先輩は言葉を漏らしたが、

「いや見てない。悪い。又聞きで得た話になる。混乱させてすまない」

 頭を掻いた。

「又聞きかぁ。なあんだ。びっくりしたぁ! 先輩が灘リスなのかと思いましたよ!」

 ハハハと俺はカラ笑いしてみたが、先輩は笑ってくれなかった。ピクリとも表情を変えないで、気まずそうに口を開いた。

「少し前までは灘チャンネルを見てたからな。否定はしない」

 おいおいおい。嘘でも否定してくれよ!

 俺はちょっとだけ灘広に嫉妬しそうになった。

「まぁ、個人的な意見になりますが、悔い改めろとするご指摘は、あながち間違ってはいないと思います」

 志多刑事が静かに指摘した。

「え。そうなんですか?」と驚いた表情を浮かべて先輩が訊ねた。

「署内でも、そのように見立てた署員は何人もいます。脅迫状には配信上で謝罪しろという文言もありましたが、一体誰からなのかは不明。つまり逆に誰から送られたものなのかを灘広さん自身が特定して、自分のしたことを悔いて公式に謝罪を促すために一年間の猶予とした」

「それって灘広が、そういう謝罪配信をするまでの制限時間ってことですか?」と俺。

「それもありますが、一年後。つまり、10月下旬に灘広さんと過去に何かがあったリスナーである可能性がありました」

 なるほど。その時期、過去に揉めた相手か!

「リスナーじゃなくても、リスナーの親族が灘広さんと揉めた可能性もありますよね?」

 再び先輩が訊ねた。

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