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第四章 言い掛かりを止めるには?

#03:言い掛かりと勘違い

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 話しかけられて顔をゆっくりと上げてみた。

 黒いフードだ。顔が良く見えない。俺より背は小さいようには見える。細い声からして男ではないと思うが、世の中わからない。

 上半身を覆う黒いフードは雨合羽のようだが、腰までしか届いてない。黒いズボンに黒いスニーカーで揃えているところ、きっと雨合羽の下は黒いトレーナーなのだろう。

「お前がやったのか?」

 何者なのか分からないが、こいつは俺の熱狂的なストーカーなる鉈リスなのか。

 俺はチラっと部屋の景色をみた。コンクリートの部屋だ。どこかの建物らしいが、薄暗くて全く見当が付かなかった。

 続けてさっと腹と手、足に視線を走らせると、拘束するものが白いコードのようなものでグルグル巻きにされているようだった。

 きつく縛られていて、俺の今のチカラでは引きちぎることはできそうには思えなかった。

 ジンジンと頭も痛む。出血しているから、俺が気を失う前に殴打されて運ばれたのだろう。

「…るさい」

「え?」

「うるさい!」

 また叩かれた。頬が痛い。だが一つ分かったことがある。叩かれる直前に見えた手首が細かった。指も細い。声も幾分高めだ。明らかに、こいつは女性だ。

 黒いフードの女は、小さな声でブツブツと喋っている。あまりの小ささで、よく聞こえない。俺のことを好きなら、叩かないものだと思うが暴力が好きな奴でも普通は喜ぶんじゃないだろうか。

 拉致して配管に俺を縛って括りつけて、痛めつけるというのは怨んでないとできないことだ。物凄く恨まれている。

「まさか過去の配信で…」

 パンっと頬を思い切り叩かれた。

「お前の所為だ! お前の所為だ! お前の所為だ! お前がやったことは絶対に許さない!」

 酷い言いがかりだ。凄い剣幕で激昂していて、金切り声を上げながら罵声の連続である。

 また一つわかったことがある。こいつが誰なのかは、サッパリ分からないが、明確に、ピンときた。

「待て待て待て待て待て! 俺は灘広じゃない! 違う! 鉈チャンネルの鉈だって!」

「嘘を付くな! 嘘を付いてもムダだ! お前は絶対に許さないからな!」

 俺のことを、登録者数300万人超え人気の暴露系配信者『灘広』と完全に勘違いしている。

 そう考えるのが自然だった。

 悲しいかな。女は頭に血が上っていて、全然まともに取り合ってくれそうにない。

 散々、俺のことを叩いて殴った女は、はぁはぁと息を切らして後ろに後ずさった。暴力が止んだのは良いが、頭の次に両頬がジンジンして物凄く痛い。

 何を言えば誤解を解いてもらえるだろうか。チャンネルのアカウントを見せれば俺のことを信じてもらえるのだろうか。

 ぐるぐる考えている内に、カタンっと何かの音が鳴り薄暗い視界に目を凝らしてみた。

 女が地面に転がる角材を手にしていた。

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