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第一章 ソシャゲの課金を止めるには?
#24:お腹は満たされたけど
しおりを挟む「あーお腹いっぱいだー!」
店を出た。ちょうど良い感じに満腹中枢が働いて少し眠い。膨らんだ腹をさすりながら振り返った。
「毎回思うけど色んな人の相談とか悩みを聞いてて、凄いな宗武は。結構、配信も長いのに大変じゃないか?」
「そうっすかね?」
「そうだよ。人の話なんて俺はいちいち聞いてられないから基本相槌くらいしか打てないし」
「先輩こそ、カウンター席からのお客さんと近いじゃないですか。毎回、喋りながら作るんじゃないんですか?」
「いや。俺は殆ど無言だよ?」
「へぇ、そうなんすか?」
「マスク付けながら調理するし皿を出してから、ちょっと話すくらいだ」
意外だ。甘い物を目当てに満席の店内を遠くから眺めた限りでは、楽しそうに客と話していたようにも見えたのに。話してる時間は意外と短いのだろうか。
「ともかく先輩。今日は本当にありがとうございました! 急なスペース貸しにも応じていただいて本当に助かりました!」
「別にいいよ。面白かったから。良かったらまた使ってくれ」
「え。良いんすか!」
「配信って週1~2回だろ? 毎日じゃないなら閉店後に来てもらえればテーブルの一角くらい貸してやる」
なんて良い先輩なのだろう。俺の急な頼みを聞いてくれて、今後のことも協力してくれるだなんて。
「そう言ってくれると助かります。家で出来ないときは町のレンタル会議室とか借りるときもあるんですけど今日は配信直前でトラブルが起きちゃったから」
「あぁ、アレな?」
田茂晋也と内海智景のおせっせのことである。
「隣人も配信者なんすけど。旅系配信者で、旅行先から帰ってくると同居人と毎回イチャイチャしてるもんで五月蝿くて!」
特に喘ぎ声が。
「毎回か。それは大変だな。まぁ困ったときは言ってくれ」
「そうします。あ、先輩も、もし何か悩みとか相談あったら、俺、乗りますよ?」
ほんの一瞬だった。ノリで返した言葉だったが、先輩がじっと俺の顔を見た。何かあるのだろうかと思ったが、ふわりと柔らかく笑った。
「じゃあ、そのときが来たら鉈チャンネルに悩みを投稿しておくよ」
「お待ちしてます!」
互いに手を上げて別れを告げた。シェアキッチンの店に先輩は戻っていく。
正直、まだ話していたかった。しかし長居をしては迷惑になるだろう。また店に来れば良い。
後ろ髪を引かれる思いで俺は自分の住まいに引き返した。配信と飲み食いして、長めのお喋りまでして既に夜11時過ぎ。流石に、隣人との交わりは静かになっているはずである。
マンションに戻ると、ルームシェアする部屋の同居人、智景が両手を合わせた。
「本当にごめん!」
申し訳なさそうに眉を下げて、何度も頭を下げた。
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