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第一章 ソシャゲの課金を止めるには?

#22:裏事情 - 2

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「だったら尚更どうやって出て貰ったんだ?」

「奥の手を使ったんだ」

「奥の手?」

「さっき同居人のことを話したじゃないですか」

「ああ。隣人の恋人とイチャイチャしてる子だな?」

「そう。実は、智景くんって子なんだけど、チカちゃんねるのチカちゃん本人なんだ。しかも隣人の田茂さんって人もまた旅系配信者をやっているんだ」

 先輩の目が幾分驚いてる。俺も含めて配信者が3人も集まっているから、結構珍しいのだろう。

「そうなんだ。それで奥の手というのは、その智景くん、または田茂さんから紹介してもらったとか?」

「智景くんの方です。重課金してるソシャゲのリスナーを沢山抱えてるから。メンバー限定配信を、良くやってて高額投げ銭してくるリスナーと智景くんは、オンライン飲み会もしたことある程なんで。仲が良いんです。で、ちょうど、るるんをやってるプレイヤーを内々に聞いてもらって募ったリスナーの中から鉈チャンネルに協力できそうな人を更に絞って紹介してもらったんだけど、それがマヤマヤさんだった。俺とマッチしてた人が偶然当たって!」

「なるほど。となると宗武の狙いは、るるんに重課金してるユーザーから話が聞ければ良かったのか」

「まぁね。ぶっちゃけ重課金してて、上位プレイヤーであれば誰でも良かった。職業が投資家ってのも、今さっき初めて知ったことなんですけどね」

「そこまで細かい打合せはしてないんだな?」

「してない。何もかも打合せ通りだったら、俺がワザと驚いたみたいに聞こえるからな。そこまでやったら完全にやらせだし」

「でもマヤマヤさんって人は、鉈チャンネルに出るメリットってあるのか?」

「推しに恩を売れる」

「そういうのって良いのか?」

「何が?」

「恩を売れるってさ。流行りの追っかけなんだろ?」

「ガチ恋リスナーってこと?」

「それそれ。彼女は凄い金持ちなのは分かったけど、智景くんからの何がしかの御礼を期待してるんじゃないかって思うんだけど」

 先輩は心配しているようだ。推しからの見返りを求めているから、俺のチャンネルに出演したのだと、そう言いたいのだ。

「大丈夫だよ」

「おいおい。その自信は、どっから来るんだ?」

 先輩は片眉を吊り上げて俺を見る。怪しいんだ表情を浮かべていた。

「だってマヤマヤさん。結婚してるから」

「既婚者なのか」

「それに出たいっていうのは、彼女の方から是非協力したいって言ってきたから。まぁ智景くんには今後マヤマヤさんからの投げ銭は、きちんと読み上げを優先されると思うけど」

「読み上げの優先ねぇ?」

「リスナーからの投げ銭付きコメントはさ、配信者の目に留まって読み上げられるってことこそ大きなポイントじゃん?」

「まぁ、そうだけど…読み上げの優先だけで満足するものなのかな」

「人それぞれによるとは思うけど。それに智景くんには別件、俺に貸しがあるしな」

 部屋での配信が急遽できなかった貸しである。今日の夜21時に俺の配信があることを、智景は知っている筈だ。なのに隣の住人である恋人と、配信前にアンアンおっぱじめるなんて。

「ふぅん。なら良いんだけど」

「先輩は心配してくれてるんですよね? もし智景くんのリスナーが出演したことを後悔して、怒って暴走して俺に嫌がらせして来ないかを」

「え。まぁ、お前は可愛い後輩だしな?」

「部屋中めっちゃ推し活してくれてる最高の鉈リスですもんね?」

「お前なぁ…あ、それより飯は食ったのか?」

 そう言われて、急に腹が空いてきた。先輩が出してくれた水だけで、なんとか配信を乗り切ったところだ。まだ夕飯は取っていない。

「飯、まだです」

「じゃあ、食べていくか?」

「え。飯ですよね?」

「デザートだけしか出さない店だと思ってる?」

「だって看板が」

 俺は店のドアの方向へ人差し指を向けた。

 先輩は、ふっと柔らかく笑うと「まかない飯だよ。奢ってくれって言ってただろ?」と言った。

 俺は有難く提案を受けることにした。

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