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望んでいること
#156:お腹が痛くて - side 誉史
しおりを挟む正直、1カ月休みを取るという選択は本当に良かったと思う。
朝起きて、動画を取らなくちゃいけないとか、編集をして予約投稿を掛けておかなければいけないとか、アップした動画がきちんと閲覧できるようになっているか確認しなきゃいけないという行動を、しなくて良いというのは天国だ。
俺の腕の中で眠る彼を見る。ゲームに疲れて眠ってしまった子を起こすのは忍びないから、そっと持ち上げてベッドに運んだのだ。
規則正しい呼吸を耳にしながら、ほんの少しだけ腕に力を込めて引き寄せた。
白いうなじに鼻を寄せると、良い匂いがした。俺と同じボディソープを使い入浴させたのに、いつもの香りだけでなく、どこか甘い。
こんなに甘い匂いだったかと、もう少し彼の首元に鼻を寄せたときだ。
「ん……ばん、さん…」
「ごめん。起こした?」
身を捩り、こちらに体ごと向き直る彼は俺と向かい合わせで、目が合うと少し顔を歪ませて口を開いた。
「おなか…いたい…」
「え。お腹が痛いの?」
浅く頷いた彼に「ごめん。ちょっと触るね?」と断りを入れてから、Tシャツの裾を少し捲り上げてお腹をゆっくり擦った。
「あ…」
「ごめん。違った? 時生くん。ここ?」
場所が分からないので、お腹の真ん中に手を置いて擦ってみる。
「あ…ちが…もっと、上…」
「もっと上?」
鳩尾くらいかと思い少し上に引き上げて、手を当ててみた。
「ここかな?」
ふわふわの頭が左右に揺れて「違う」と小さな声で抗議されてしまった。
「どこが痛いの?」
「その…もうちょっと上で…」
更にゆっくり肌の上を滑るようにスライドさせると「その左…あ、そこ…です…」指示通りに着いた場所は、少し硬さを帯びていた。
思わず息を飲んだ。
「ここ、撫でればいいの?」
もうそこが、お腹などではないことは分かっている。
どういうつもりなのかを問うべきなのに、そんなことはできなかった。
「そこ…撫でて…」
ゆっくりと撫でる。
「…ぁ…ん…」
息を詰めて彼は耐えているようだった。痛さに、というよりも、出てしまう声を出さないように我慢しているようだった。
「本当に、こんなところが痛いの?」
明らかにピンと張りつめた固さをもった小さなソレに指の腹で円を描くように優しく撫でた。もぞもぞと彼の体が捩るように動いて、小さな息が洩れた。
「…はぁ…だって…痛いん、だもん…んあ!」
摘まみ上げて少し引っ張ると、彼の体がびくりと跳ねた。
「他に痛いところはある?」
息の荒くなった彼に問うと小さな声で返してくれたが、あまりの小ささで聞き返すしかなかった。
「ごめん。よく聞こえなかった。どこだって?」
「…はあ…し、た…したの…ほう…」
彼の肌の上を滑るように、するすると掌を下へ忍ばせた。Tシャツの生地の中で腕を伸ばして、ゴムで閉じられた臍の下まで辿り着く。
「下の方が痛いっていうのはズボンの中?」
ふわふわの頭がこくこく頷いた。
「我慢できない痛み?」
「…でき、ない…」
「どうすれば痛みは治まるの?」
「…あ…えっと…」
「言ってくれなきゃ分からないよ?」
「…さっき…指で、した…みたいなこと…」
「指先で撫でれば良い?」
「ちが…う」
「違うの?」
「痛いとこ…擦って…ほし…あっ!」
彼の目線が下に向いていた。
こんな状況なのだ。彼の喘ぎに反応して、俺の下半身が何も反応しないわけがない。
「ごめん。生理現象だから」
「…おっきい…の、やだ!」
急に押し返されて彼が俺の腕の中から、するりと抜けた。
「あっ、待って時生くん!?」
「やだ怖い! 来ないで! 離して!」
真後ろから抱き寄せたが、手足をバタバタとさせて彼は抵抗を繰り返した。
「ごめんね。時生くん! 怖がらせるつもりはなくて!」
「嫌い嫌い! 盤さん大嫌い! あっち行って! 僕の前から消えて!」
大きな声を上げられた。激しい抵抗だった。悪夢のような罵詈雑言に、目の前が真っ暗になった。
何で手を出してしまったのか。誘惑に勝てなかった自分に、背中から急激に冷たくなるのを感じた。
「ごめん時生くん! 本当にごめん!」
腕を強く叩かれた。何度も叩かれて、彼が俺の名を何度も叫んだ。
「…さん、盤さん! ちょっと盤さんってば!」
強い言葉に、ハッと目を見開いた。
「盤さん起きて! もう大丈夫? 汗びっしょりだよ!」
首を捻って彼と目が合った。
「え…今の…夢…なのか?」
「もう。どうしたんですか…てか、良い加減に離して欲しいんですけど?」
ぎゅっと後ろから抱きしめたままだ。迷惑そうにこちらを見上げて、困った表情を浮かべている。
「すまない」
腕を解くと、彼はゆっくり起き上がった。
「あの…何度も僕の名前…呼んでたんですけど」
「え…言ってた?」
「言ってたよ。なんか…謝られたんですけど。夢の中で僕、何かした?」
何かしたというか、仕掛けられたというか。言えるわけがない。
「うーんと、覚えてない」
「僕が出てきて、うなされて、なんか謝ってた…けど…それに…」
「それに?」
彼は下を向いてしまった。
「あ、僕…喉乾いたんで、先に顔洗って、あっちでジュースいただきますね」
ベッドから降りて寝室から出て行った。
ほんの少し顔が赤くみえたように思えたが、ベッドの布団から俺も這い出したとき、意味が分かった。
「嘘だろ。マジかよ…」
俺の下半身は、ガン勃ちだったのだ。
殆ど体を密着させていたのだから、彼も気づいていただろう。
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