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ケリのつけ方
#120:日曜昼下がりの同接数 - side 誉史
しおりを挟むまるで一つのエンタメショーだと思った。
レクシアズの神楽玲央主催による特別試合。しかも現役のプロを招いての試合だ。
『オレは宮田から普通に回ってきたけど、ワイズの選手が出るらしいって聞いた。多分、尾染と瀬見川ってやつじゃないかな。尾染がニトロジーで、瀬見川がレイネンって名前で活動してる。どっちも確かレクシアズのVと過去に配信でコラボしてるから仲の良いプロを呼べるなら、その二人になると思う』
VCを通して、海堂赤音がそう告げた。
『やばいな。神楽を挟んだプロが二人いるチームに対して戦うことになるのかよ』
海堂に続いて、群錠が発言した。二人とも同じ本配信を見ているのだ。
結局、見ずに過ごすことなんて俺はできなくて本配信を見守ることにしたが、軽く眩暈を起こしそうだった。
配信者の間でかなりURLが拡散されているようで、始まったばかりだというのに視聴者数が3万を超えている。
「なんでだよ。誰が出るのか明確に分からないのに皆これを、どうして日曜の昼間に見ているんだ」
俺の零した言葉に、群錠がすぐさま反応した。
『そりゃ口のうるさい神楽玲央といえど、あれでもレクシアズのトップ配信者だからな』
「そんなに偉いのかよ?」
『だって主催じゃん。しかも交友範囲だって広い。色んな企業とコラボしたりとか、プロ選手交えて限定のグッズ展開もしてるし、老若男女に人気だしな。もちろん配信歴だったら盤さんを抜くことはできないけど、確か、らふTVでも歴代フルー・サブスク記録は神楽だったよな?』
『オレは神楽って奴をよく知らないけど、レベル的にはそんな強くないだろ?』
横から海堂が口を挟んだ。
『強くはないね。真ん中ぐらいのレベルかな。だけど、過去にタイデスのオースで遊んでるのも見たことあるけど殆ど負けないね』
話している間に、視聴者数がまた跳ね上がった。4万人を超えている。滝のように本配信のコメント欄は流れていた。神楽と対峙する相手チームには一体誰がいるのか、様々な名前が挙がっていた。あり得ないことだが、群錠や俺の名前もコメント欄の中にあった。もちろんキングスの選手の名も出ていたが、海堂は直ぐ否定した。
「キングスからは本当に誰も出ないのか?」
本配信を視聴し始めたときに、群錠が既に海堂に訊ねている。俺は愚問だと思ったが聞かずにはいられなかった。
『出ない。今回の特別試合にキングスの選手は関与してない。っていうか、まぁ、俺はちょうど社長と冬くんが話してるのを聞いちまったんだ。昨日事務所で打合せがあってさ。だから丁度オースに出ることになったっていう話をしてたから』
海堂の応答に、群錠が質問を挟んだ。
『オースは3人で1チームじゃないすか。冬くんと、冬くんの友達と、あと一人はじゃあ誰なんですかね?』
『さあな。たぶん知り合いを呼ぶとは思うけど、別に誰だって良いよ。俺は、オースで暴れまわるのを見られればそれで良いし』
「暴れ回るって、冬くんが?」
『そうっすよ。盤さん。ウチの冬くんが負けるわけないじゃないすか』
―― ウチの
キングスの事務所に訪問した時も、同じ言葉を聞いた。あのときは宮田が、確か――僕らの練習に見合う腕がある――と発言していた。2人のプロに実力が認められるほどの腕前なら、もしかしたら本当に神楽のチームを負かしてしまうかもしれない。
だがこの試合、勝ってはいけないのだ。
『どうっすかね。冬くんが強かったとしても、今回の試合って、そもそもパワレコでのゴタゴタがある。負ければ神楽は盤さんと週明けにデュエット曲のプロモに出るらしいけど、負けたら多分出ない。取引相手のワンダイフのインターン生が神楽の因縁の相手だから。つまり負けないとレクシアズからの損害賠償とかの訴えを起こされるかもしれないんですよ?』
乾いた笑いと共に群錠が代弁してくれた。
『知らねぇよ。そんなもん。友達がどうであれ冬くんが負けることはねぇ。オースの試合が終わったあとにリザルト画面は絶対出るからな。ってことは、冬くんが負けると、キングスの人間だったってことが、いずれ知れ渡る。負け試合になれば、キングスは大したことないって選手界隈で舐められるわけで、そんなことは夏河社長だって許さない』
絶対に負けないという自信があるようだった。どちらの勝ち負けにしても、こんな試合などなければ良いのに――そう思う中、本配信の実況キャスターが高らかにスタート宣言を今告げた。
―『さて。選手入場です! 今回は左が赤チーム、右が青チームとなります。どちらに、誰が配置されているのか紹介は抜きに試合を開始致します!』
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