【完結】僕らの配信は――

ほわとじゅら

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ケリのつけ方

#114:これから起こること - side 時生

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「単刀直入に言って身動きが取れないっていうのはワンダイフが本来行える筈のプロモーション活動ができなくなったら、それって損害が出ると思うんだよね。色んな調整があると思うから。となると相馬くんの立場って、多分だけど訴えられる可能性も否めない」

 それは考えたくない事だった。

「え…まさか裁判沙汰に? …って、なんとかならないんですか!」

「うーん。まぁ、そうならないように盤さんが説得したと思うんだよ。だってパニックになってた神楽くんを大人しくさせたんでしょ?」

「そうですね。なんか凄い剣幕だったけど騒がなくなって、マネージャーと帰っていきました」

「午後からの関係各所には、多分ワンダイフ側の責任者も一緒に同行して、盤さんと謝罪に回ったと思うよ。挨拶回りね。まぁ、私ならそうするね。自社で雇った人間がやらかしちゃいまして、申し訳ありませんって感じで謝ることになると思う。そこまでやれば、週明けに神楽くんがプロモに戻れば、事は収まると思うけど」

 僕が気になっていたことだ。夏河社長が話していることは想像にはすぎないが、本当のことのように思えた。

「そうなったら訴えられることはないってことですか?」

「どう転ぶかは分からないけど、相馬と昔のイザコザでパニックになったとはいえ気を取り直して神楽くんが週明けに、またプロモに戻れば済む話だから。まぁ流石にバックレることはないと思うよ。歌って結構莫大な金掛かってると思うしね」

「そっか。なら良かった」

 ほっとして、胸を撫でおろしかけたところだった。

「安心するのは早いかな。普通に考えて君のインターンも多分難しいと思うから」

「僕!?」

「だって大鳥さんっていう上司というか雇用者に帰されたわけだよね?」

「はい」

「だったら学生の雇用は見送ると思うよ。デュエットだけじゃなくて、何もやってなくても印象が悪くなっちゃったからね」

 相馬と共に辞めさせられるのは、覚悟の上だ。

「でもまさかインターン先に盤さんが関わってるとは思わなかったなぁ」

 夏河社長は自身の顔を手で撫でつけた。

「もしかして盤さんがいたことが何かまずいですか?」

「いや…君の友達がトラブルに巻き込まれたわけで実際にはさ、冬くん自身は関わってないじゃん。冬くんは普通に仕事をしてただけ。それは分かるよ。でもね。その現場に君もいたってのが、ちょっと微妙だなって思っただけ」

 微妙?

 一体、どういう意味だろうか。

 何故なのか、疑問を口にしようとした。だが僕の心を見透かしてか、先に夏河社長が口を開いた。

「デュエット企画とは関係ない話だよ。君自身のこれからの活動だよ。いずれ色々配信をすると思うけどさ、盤さんみたいな冠番組に出たりすることってデカい話じゃん。でも、過去にトラブルの起きた現場に君がいたとなると、盤さん的には君に対する印象とかどう思うかなって。まぁ。大人だから冬くんがこれから実力を付けて証明すれば…呼ばれないこともないか…うーん」

 話の終わりに出た言葉は、僕に向けられたというより経営者として、あれこれ色々と先のことを考えての発言なのだろう。

「心配お掛けして本当にすみません。インターンに行く前に言っておくべきでした」

「いや良いんだよ。別に。君がプロを目指さないでストリーマーになるって話してくれたとき、私が他に仕事でもみつけないと配信は続けられないぞって言ったからね。プロになれば会社から定期的に報酬も出るけど、ストリーマーには出る出ないムラがあるからね。大部分的に自分の実力が試されることになる。だから就職活動は自由にしていいって言ったし。私の許可も本来いらない。インターンをやるにしても、私が口出して良いことじゃないから」

 ポケットに入れていたスマホが震えた。

「え。大鳥さんからだ!」

 昼前に一度連絡を受けた。しかし再度チーフディレクターから電話が来るとは思わなかった。

「早く出た方が良いんじゃない?」

「すみません!」

 カウンターから少し離れて直ぐに出た。これはインターンをクビになる通告なのかと考えが頭に過った。

 だが予想だにしなかったことを言われて、通話を終えたとき僕は暫く言葉がでなかった。

「冬くん?」

 心配そうに夏河社長が僕の顔を覗きこんだ。

「デス…」

「え?」

「タイデス、やることになりました」

「は?」

「あの、だから神楽くんがタイデスのゲームで白黒付けたいから出ろって。相馬と決闘するため、連帯責任で僕も出なくちゃいけないみたいで!」

 断る間もなかった。大鳥経由でレクシアズからのあり得ない申し込みだった。

「はぁ。なるほど。ゲームで、昔のケリを付けるっていうのか。ふうん」

「社長?」

 バーテン夏河は棚からグラスを取り出すとウイスキーボトルを傾けて少しだけ注いだ。

「分かってると思うけど。冬くんさぁ。神楽くんに喧嘩を売られたんだよ?」

「え…でも僕は、どうすれば?」

「考えるまでもないじゃん。雑魚相手に」

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