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大手のリアルなコラボ事情
#66:1 week later はぁぁあああああああ? - side 誉史
しおりを挟む万が一、口走って約束したなら謝らなければいけないが、どう考えてみても神楽と約束した記憶はないのだが――。
「いやちょっと待てって。俺は約束した覚えないけど?」
『あ。ごめん。言い直すよ。えっと、まず本来れこ盤にゲストで出る話を聞いてたんだけど、盤さんが炎上したから逆にオレの事務所が出演を一旦取りやめたんだよ。ほとぼり冷めたら出演する方向に調整するって!』
「あのなぁ。俺は言いがかりに巻き込まれただけで炎上とかじゃ――!」
俺が言い終わらない内に、神楽は割って入った。
『だけどね。炎上といってもさぁ』
こいつ全然俺の話を聞かねぇ!
『割とすぐ鎮火したじゃん! だからオレは、逆にね、こう思ったんだよ。盤さんには今、リスナー以外の人々の注目が集まってる。だから早々にコラボをするのが一番良いと思ったんだ!』
なんだか良く分からんが、どうやら炎上騒動から注目された俺に敢えて乗っかって、神楽は数字を取るためにコラボをしたいと強く思ったようだ。一歩間違えれば炎上発言になりかねない、えげつない発想だ。
そういえば結局やさいゲーム大会は、らふTV主催公式によるSNSでの呟きで急に俺たちのチームメンバーが発表されたっけ。単純に大会日が迫る中、最後まで俺と群錠が組む相手を誰にするのか、らふTV側で話し合われているのかと勝手に思っていたが、恐らくレクシアズとの調整に走っていたのかもしれない。
「はぁ。だから、それで鉢野から大会直前に連絡があったのか。君が立候補してきて大会でチーム組んだ話に繋がるっていうね?」
『違うよ盤さん。そんな単純な話じゃねぇんだよ』
「は? 違う?」
『オレが盤さんと組みたいって言っても最初こそ事務所は難色を示してて許してくんなかったの! だーかーら、オレは更に良いことを思いついて、交渉したんだ。まず事務所には大会で良い成績残したらオレのやりたい企画を実行することを許すこと。そして鉢野さんには、大会で良い成績出したらオレの企画をね、後日れこ盤で取り上げて欲しいって言ったんだ。事前に許諾はもう取れてんだよ。意味、分かるぅ?』
頭の悪そうな意地悪い言い方だ。勿体ぶった説明に苛々しそうになったが、聞き捨てならない話だった。
「なにそれ。後日れこ盤で、企画?」
『そう。炎上騒動で、オレは盤さんの番組出演が一度、飛んでんだよ。春には出られるって聞いて、すっっっごく楽しみにしてたのに! オレのリスナーにも驚いてほしいから、出られる日まで黙ってた。なのに出られなかった! だーかーら大会コラボをまず踏み台に、良い成績を頑張って残して、メイン企画を実行に移す。盤さん。オレの企画はさ、コレ決定事項だから。さぁ、企画に出る覚悟は良いか?』
神楽が急にドスの利いた低い声を出した。
「だから、その企画って…なんだよ?」
自分の番組のことなのにMCが知らないってマジか?
ゲストから企画を聞かされるなんて普通に可笑しいではないか。
それなのに、そんなツッコミを言うタイミングすらなかった。
『盤さん。オレとデュエット曲を出してもらいまーす! 7月2日オレの誕生日リリース決定! れこ盤MC自ら2週間ガチのボイトレを密着取材敢行! はい。公式ホームページ今公開したんで、VCの個人用チャット欄にURL送りましたよん♪ オレのSNSにも、たった今呟いておいたんで皆見てねー!』
高らかに宣言すると、要件を言い終わるのと同時に、《ピロン♪》という退出音を響かせて神楽はVCルームから抜けた。
〈うあああやばwww〉〈盤さん歌手デビューだあああ!!!〉〈おめでとううううううううう!!!〉〈盤さん歌えるのか?〉〈めっっちゃ楽しみ!!!〉〈ついに歌企画きちゃ!w〉〈すごい玲央君とデュエットかよ!w〉〈おい朝5時過ぎに聞く話じゃないって!wwww〉〈嬉し過ぎて逆に寝られないwww〉〈早朝発表えぐwwwwwwwwwww〉〈玲央とデュエット、マ!?www〉〈お祝いじゃああ!!!〉〈むしろこれ100万人達成祝いで発表するやつじゃんww〉〈まだ100万になってませんよ?ww〉
驚くコメントの大量な阿鼻叫喚が流れていく中、俺はVCルームに一人残されて神楽から送られてきたURLをクリックした。
そこには、れこ盤の大型プロジェクト企画と称したウェブコンテンツページがあった。間違いなく神楽玲央と俺は、デュエット曲をリリースすることが告げられている。
俺に何の許諾もなく、全くの寝耳に水な状況で、歌を出す日付がでかでかと表示されていた。
「えっ…うそだろ…そんな…はぁぁあああああああ?」
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