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最高に最低なコラボ
#27:彼のコメント欄に震える僕 1 - side 時生
しおりを挟む『話っていうか経緯を聞いてみたかったんだ。君が解説動画を出すまでの経緯をね。ちゃんと一度整理して改めて全体で起きていた状況を把握したかったんだ』
「経緯、ですか…」
少し拍子抜けをした。
僕が告発者だと彼は思い、それを確かめるためにライブ配信に誘ってたのではないらしい。彼が僕を呼び出したのは、チートだと告発して騒いだ投稿者に、僕が対応した背景を確認しておきたいようだった。
90万人もいるからこそ、起きた問題をちゃんと受け止めて恐らく次また同じようなことがおきたら対策を打ちたいのかもしれない。
『うん。どういうタイミングで君が気づいて動画を出すまでに至ったのかを知りたいんだ。今後の配信で対策を考えるにしても参考にさせてもらえると有難いなって』
「配信の参考…あ…そっか、わかりました…」
彼が話すたびに高速で流れるコメントも同意の意思がみられる言葉がチラチラと見えた。
〈なるほどね〉〈経緯ね〉〈経緯が分かれば事前に打てる対策もあるしね〉〈聞いておきたいのは分かる〉〈あーそういうこと〉〈気になるところだね〉〈確かに〉〈それな〉〈俺も聞きたい〉
『そうそう。リスナーには冬くんがどういった人なのか知らないひともいると思うので、ちょっと先に紹介となるんだけど、俺がコンタクトを取る前に、解説してくれた冬くんのチャンネルを見たんだよ。チャンネルを紹介する概要欄にはプロゲーミングチームのキングス所属ってあるんだよね』
「あ、見てくれたんですか!」
僕が呼ばれる前に、彼は、どこの誰が解説をしたのか、きちんと調べていたようだ。当たり前の行動なのかもしれないが、少し嬉しかった。
『うん。見たよ。キングスは夏河腎さんが仕切ってることも知ってる。というか夏河さんは、元らふTV社員の人だったんだけど、前に、俺も会ったことがあるんだ。話したこともあるし、まぁ顔見知りではあるかな』
「そうなんですね!」
それは知らなかった。今まで彼の配信で夏河社長の話は一度も出たことはないのに。メンバー限定の雑談配信でさえ、夏河社長、もといキングスの話が出たこともない。唯一、直近の《れこ盤》で先輩の宮田が出演したことで、ようやくキングスの話に番組内で話題的に出たくらいなのだから。
『それで今はキングスの準備生として活動してるってことで間違いないのかな?』
「あ、はい。間違いないです」
〈キングス所属だったのか〉〈準備生か〉〈へぇキングスね〉〈みやっちがいる事務所か〉〈夏河ってらふTVにいたん?〉〈じゃあゆくゆくはプロゲーマーになるひとか〉〈準備生って研究生みたいなやつと同じ?〉〈事務所のサポート側だっけ〉〈キングスって強いの?〉〈冬くんがんばえ〉
『それじゃ経緯を聞かせてもらえるかな?』
「えっと。まず友達から教えてもらってトレンドになってるのに気づきました。SNSで動画が上がってて、その動画を見て、あ、これ違うって、なって、そのすぐあと解説動画を作って出しました」
〈解説になってない気がw〉〈へぇ〉〈友達も盤さんのリスナーか?〉〈いまいち容量が掴めんな〉〈なる、ほど?〉〈わかりずら〉〈ふーん〉〈説明下手かw〉〈端折ってるくね?w〉〈解説の人もちっとわかりやすくw〉
チラッとコメントを見れば、僕の説明に彼のリスナーたちは少し困惑しているようだった。
『成る程。動画を見てすぐ判断して解説動画に取り掛かったってことなんだね。Vキャラの彼女の実況動画も一緒に取り上げていたけれど、それは動画提供してもらったの?』
僕の分かりづらい説明に、彼がきちんと嚙み砕いてくれたようだ。
「はい。動画作るときに許諾をちゃんと得たんで」
〈無音動画だったのによく判断できたな〉〈つかVキャラ視点って何でわかったんだ〉〈準備生が実況見てても別に不思議じゃないけど〉〈そういやリザルトに、ねまき猫@らふTVってあったけど映ったの一瞬だしよく覚えてたな〉〈てか準備生やめるって話じゃなかったか〉〈冬くん盤さんの配信見てた?〉〈準備生続けんの?〉〈もう準備生じゃないだろ〉
再びコメントの流れを見れば、彼のコメント欄が微妙に荒れ出しているような気がした。
やばい。
彼との話に集中しなければいけないのに、あまりコメント欄を見ている暇はないのだが、嫌な予感がした。
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