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はじまり
#9:夢も希望もない(´・ω・`) - side 時生
しおりを挟む『だったら、マッチを待つんじゃなくて、例えば何かのコースや自作ゲームを作って、オンライン上に公開したら、わんちゃん遊んでくれるんじゃね?』
相馬が新たに提案してきた。アマチュアが手軽にゲームの盤面を作れるクリエイト系のゲームを活用するという手法だ。
僕は、その手段も真剣に考えたことがある。だが致命的なことに直ぐ直面した。
「それもね。考えてやってみたことがある。サーキットコースを作ってオンライン公開して、皆に遊べるようにできたら、いつかは盤さんもやってくれるかもって思ってさ。でも僕には面白いサーキットコースを作る才能がイマイチなくて、他の人の面白いサーキットコースを超えるものが作れなかったんだ。もちろんサーキットコースだけじゃなくて、ホラーゲームでも作れたらなって考えたこともある。けど僕が想像するホラゲのアイデアって、もう他の人が作っててさ。オリジナリティがない。だからゲームを作るセンスが壊滅的にダメ!」
『じゃあ、究極、人の紹介じゃね?』
「紹介?」
『そうだよ。みやっちパイセンが盤さんと共演したわけじゃん。今度また一緒に遊びたいって番組終わりに約束してたんだから、次回あたりに呼んでもらえばいいじゃん?』
僕は盛大なる溜め息を付きそうになった。それができたら一番良いのだけど。
「なぁ相馬。そんなに甘い話じゃないんだ。宮田先輩への盤さんが言った『ぜひまた遊びましょう』っていう約束はさ、社交辞令みたいなもん。次回に繋がるとは限らないよ」
『そうっすか。となると、やっぱ自分の配信内で盤さんとゲームがしたいって訴えるしかないな。さっきは番組を見て悔しがるトッキーを動画化したら、単純に面白そうだと思って何も考えずに提案したけどさ。別に、れこ盤を見て絶叫しなくてもトッキーのリスナーたちを利用すれば、盤さんの配信に伝えてくれるじゃん?』
それは一番やってはいけないやつだ。リスナーを伝書鳩代わりに使う行為は、相手のリスナーに煙たがられるマナー違反行為なのだ。
「僕。さっきもダメって言ったよね。ワザと言ってる?」
『そうだよ。もうそれしか手札残ってなくね?』
茶化した言葉ではなかった。相馬なりに、敢えてマナー違反を踏み込んででも、やるしかないのではと改めて提案しているのだろう。
「うーん、それやったらさ…僕は終わりだよ。リスナーの鳩行為って、どんな配信でも嫌われるからね。盤さんのコメント欄を僕のリスナーが急に書き込んだら、それは荒らし行為と捉えかねない。そんなことリスナーさんたちに絶対させられない!」
『でもなぁ。そのくらいやらないと気づいてもらえないじゃん。やるしかないと思うけど。例えば盤さんが今後タイデスのゲーム配信をしてた場合、スナイプするとかさ?』
特定の人物がオンライン上でゲームを始めたとき、狙って自分もオンライン上で彼とのマッチを狙う行為をスナイプという。下手をしたら配信者にもリスナーにも白い目で見られる行為になりかねないが――。
「相馬…それも立派なマナー違反だよ。だけどね、スナイプの問題よりも大きな問題があるんだ。僕のランクと盤さんのランクは同じじゃない。タイデスのオンラインでマッチなんて実現することない」
『だったらトッキーと、みやっちパイセンと盤さんで組んで、タイデスのオースをやれば良いじゃん。適当にリスナーか、あるいはキングス所属の選手かストリーマーでも呼んで、3on3のカスタムで遊べば良い』
実に理想的な提案だった。ただ、それも考えなかったわけではない。
「宮田先輩は来月には国際試合が控えてる。れこ盤に出たのは本当にたまたまなんだ。それに出演以降は練習時間に当ててるからさ。もちろん控えの選手だって練習時間は欲しいと思う。他のストリーマーには、あんまり絡みがないから難しいかな。あと、リスナーを呼んで一緒にチームを組むのも難しいよ。あとから飛んできたヤジに悲しむかもしれない。だから僕の我儘で一緒にタイデスをやってほしいとか言えないよ」
『おいおいトッキー。悲観的すぎるだろ。夢も希望もねぇじゃねぇか!』
「そうだよ! 夢も希望もないんだよ!」
僕が一緒に彼とゲームをできる日は、果たして来るのだろうか。
プロゲーマーを断らなければ、彼の番組に出演できたのだ。それなのに、ストリーマーになれば、ゆくゆくは遊べるかもしないと僕が安易に考えたことがいけなかった。
みすみす逃してしまったチャンスは、とてつもなくデカい。
「それと相馬。さっき配信歴の話をしてたけど、僕は1年半じゃなくて2年だよ!」
『えー。そうだっけ? 今までタイデス試合のミラー配信と雑談枠に、他のゲームをたまにやるだけじゃん。配信回数を詰めて考えると2年というには、ちょっと…』
「配信回数が少なかったのは裏で選手の練習に付き合っていたからだよ! 来月からはストリーマー部門。これから沢山やるから!」
思わず深い溜め息が零れた。
『言っちゃなんだが、お先真っ暗だな。チャンスの機会なんて早々訪れるもんじゃねぇけど、なんとか盤さんと知り合いになることができれば簡単な話だけどな』
相馬の指摘に、僕は息を飲んだ。
もともと僕と彼が知り合いであることは、まだ一度も伝えたことはない。
知れば、きっと相馬は気を利かせてコンタクトを取るだろう。
だが配信歴13年の大手と、配信歴の短い僕がコラボなんてした日には、リスナー界隈で小言は間違いなく飛び出すのだ。
<盤さん。人が良すぎるよ。いくら知り合いだからって規模が小さい配信者は同接稼ぎに利用してんじゃん。相手もさぁ、そういうの考えねぇのかな?>
こんな言葉を過去の配信後に、SNSで見たことがある。
彼を追い掛けて、配信者になるケースは少なくない。だから始めたての若い配信者が彼にコラボを誘い、その要求に度々応じることがある。そしてコラボに繋がるが、またヤジを飛ばす者が現れる。
僕は彼ではない。なのに、そんなエゴサをSNSで目にして、深く落ち込んだことがある。
だから相馬には、まだ彼と知り合いであるなんて言えない。
『まぁ頑張って有名になってくれよ。トッキー。そしたら、いつかは盤さんと、あっ! あー、暫くは盤さんの配信…見れないかも…』
急に、声を上げた。言葉を切るように途切れ途切れに相馬が話すから、音声が悪いのかと思った。
「え。相馬? 途中からよく聞こえない。あれ…僕の音質の設定に問題あるのかな…」
ピロンと受信音と共にVCのチャットからメッセージが届いた。
相馬からだ。一つのURLが記載されていた。
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