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ライバルからの置き土産
しおりを挟む「何とか勝てた...」
疲れきった声でみずきがそう言う。
「みずき!怪我は無いか?」
その声を聞いたかんたはそう言い、みずきに近寄った。
「少し肩を斬られたけど...大丈夫よ。かんたは?」
「俺も大丈夫だ。」
2人はそうお互いの安否を確認し終えると、かんたが表情を真剣にしてこう言う。
「それにしても、結構やばい事になってきたな...」
その言葉に対してみずきも
「そうね...」
と、同意する。
その2人の会話はこれはまだ始まりに過ぎないと言う事を物語っていた――
「スレイヤー武道会テロ事件」の次の日。
フィールド内で気を失った岩崎武は第一スレイヤー育成学校のすぐ横にある以前、かんた達が諸星 葉子に会いに行ったあの病院に搬送されていた。
「うぅ...ここは...」
武が目を覚ますとそこには誰も居ない、真っ白な病室のベットで横になっていた。
「これは...」
武は自分の身体を見ると包帯が至る所に巻かれている事に気付く。しかし、まだ記憶が曖昧な武はまず今の状況を知る為に、ナースコールを押した。
するとしばらくして病室の扉がノックされ、直ぐに扉が開いた。
「目を覚ましたんですね...!良かった...!」
看護師らしい風貌の女性は目を覚ました武を見るなりそう安堵の声を出した。
「ああ、とりあえず今の状況を教えてくれへんか?」
しかし武は女性に急かせる様にそう言う。武は一刻も早く今の状況を知りたかった。すると女性は直ぐに顔を真剣にして、
「はい...今はスレイヤー武道会テロ事件の次の日です。あの事件での死者はスレイヤーの皆様のおかげで0人ですが、スレイヤーの方を合わせて数人怪我人が出ているそうです。」
と、女性は自分が知っている限りの情報を武に教えた。
それを聞いた武は、
「そうか...」
と深く考えながらそう呟く。するとそこで、武は今一番聞くべき事を思い出す。
「そうや...つかさは、俺と一緒の場所にいたつかさはどこや、アイツは俺より怪我が酷かったんや。」
そう、武が気を失った時、同じ学校のスレイヤーであり後輩でもある信条つかさをおぶっており、その時のつかさは大量出血をしており非常に危険な状態だったのだ。だから武は看護師をしている女性からの返答を急かす様にそう言った。
しかし、女性からの返答は残酷な物だった。女性は非常に真剣な顔をしながら、
「武さんと一緒に運ばれてきた信条つかささんは出血が酷く、未だに意識を取り戻しておらず非常に危険な状態です...」
と言う。それを聞いた武は直ぐに身体を起こし、
「なんやて...つかさは...つかさは何処におるんや!?」
急に声を荒らげ女性にそう聞く。すると女性は武の圧力に押されながらも、
「と、隣の部屋です」
と、つかさのいる病室を教えた。するとそれを聞いた武は直ぐにベットから降り、病室を出ようとした。しかし、
「武さん!貴方も軽傷では無いんですから安静にしていて下さい!」
と、ベットから降りた武を直ぐにベットに戻そうとする。だが、もちろん武が従う訳が無かった。
「うるさい!どいてくれ!つかさが、つかさが危ないんや!」
武はそう叫び、無理やり女性を退かし、痛む身体を強引に動かして、部屋から出た。
廊下に出ると武は自分が一番端の部屋だったという事を知る。
そして、急いで横の部屋を見る。そこには「信条」と扉の横に書かれており、武はそこがつかさの寝ている病室だと言う事を確信した。そして武は包帯が巻かれた足を引きずりながら何とか歩き、つかさが寝ている病室の扉を開けた。するとそこには、
「つか、さ...?」
包帯で至る所が巻かれ、身体に色々なチューブを取り付けられているつかさの姿があった。
武は急いでつかさに駆け寄る。
「ちょっと武さん!?」
つかさの病室でずっと様子を見ていた看護師の女性はいきなり入って来た武に驚きそう言う。しかし、武はつかさ以外は眼中に無く、ひたすら「つかさ!つかさ!」と声を掛けていた。だがこの時、武は正直この声はつかさには届かないと思っていた。今も意識を取り戻していない事など最初に見た時から分かっていたからだ。しかし、最後に奇跡は起きた。
「つかさ?つかさ...!」
つかさが、うっすらと目を開けたのだ。
そしてつかさは武の方を見て、
「武、さん...みっともない所を見せてしまい...申し訳...無い...です...」
と、途切れ途切れ言った。
それに武は
「お前はみっともなくなんかない!俺の自慢の後輩や!やから、行かんといてくれ...俺はまだお前と一緒におりたいんや...つかさ!」
と叫びとも言える声でそう言う。
しかし、次第にまたつかさの目が閉じていく。
その様子を見て武は必死につかさの名前を呼び続けた。するとつかさは何とか最後の力を振り絞り、
「武、さん...俺の能力を...託します...貴方ならきっと...この世界を...変えられる...」
そう言い、ボロボロの左手を武の方に伸ばした。
武は直ぐにその手を両手で掴んだ。
するとつかさは最後に
「ありがとう...ございまし...た...」
そう言った。その途端、
「これは...」
つかさの左手から光が溢れ出し、その光が武を包み込んだ。
そしてその光は次第に武の身体の中に吸い込まれて行き、
全て吸い込まれた後、つかさの左手から力が抜けた。
その手を武はそっとつかさの胸の上に起き、
「俺が世界を平和にしたるからな...!見守っといてくれ」
夕日に照らされる病室で亡き友人にそう誓った。
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