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第21話だぞ【我には刺激が強過ぎる】
しおりを挟む「――で、これから我はどうすれば良いのだ……?」
目の前に聳え立つ――我の城よりも遥かに大きな建物に対してそう口から言葉を漏らす。
「もう!忘れちゃったんですか?魔王さん。これからリオンで海で遊ぶ用の水着を買うんですよ?」
「いや、それは分かっているのだが……」
ゆうりに言われるがままにここまでえなと来たが、我、この世界だとまだいつもの喫茶店やコンビニ、近所の銭湯くらいしか行った事無いんだぞ……?
もちろん、こんなに巨大な建物に入るのは初めてだ。
だから、一体どこから入ってどこに行けば良いのかなんて全く分からなかった。
しかし、そこでえなはそんな我をリードする様に、
「――あ、でも魔王さん。こういう場所に来るのは初めてなんですよね!私が案内しますから!着いて来て下さいっ!」
我の前へ数歩歩くと、こちらへ振り返り手招きをして来る。
「……ッ!!あ、あぁ。すまないがそうさせてもらうとしよう。」
くっ……こんなところでえなに気を遣わせるなんて魔王のプライドが――だが、仕方ない。頼りにさせてもらうぞ。
――それに、ここに来る前、喫茶店でゆうりと別れる寸前に耳元でこんな事を言われた。
『どう?これでえなと2人きりねっ!それに、女子は異性に水着を選んでもらいたい生き物なのよ?ま、頑張って!』
うぅ……あんなセリフだけ残して行くとは……
だが、知ってしまった以上、少しでもえなからの好感度は上げておきたい。――よし、最高の水着とやらを選んでやろうではないか……!!
♦♦♦♦♦
それからえなに着いて行き、リオンに入ると、そこは外見通り――今まで行った事のある建物とは比べ物にならない規模の内装が視界一杯に広がった。
「こ、これは凄いぞ……!!まるでひとつの街の様だ……!」
「そう言えば、魔王さんが元々居た世界にはこういうショッピングモールは無かったんですか?」
「あぁ、色んな店が並んでいる道などはあるが、この様にその全ての店がひとつの建物の中にあるというのは見た事が無いぞ。」
「へぇ、そうなんですね。まぁでも、今回はあくまでも水着が目的なので、とりあえず着いて来てくださいっ!」
「分かったぞ。」
それから我は巨大な建物の中に並ぶ色々な店を見ながらえなに着いて行く。――すると、しばらく歩いたところでひとつの店の前でえなは歩みを止めた。
「多分、ここですね」
「お、着いたのか。」
全く……最初は中々凄いと思ったが、慣れて来るとひとつの建物の中で長距離移動をするのは不便だな。
我は心の中でそう文句を垂れながらも、目的の水着が売っているという店の方を見る。
すると、その店はどうやら服屋の様で、様々な服がテーブルやハンガーにかけられて販売されていた。
そしてその中心、一番目立つ場所にデカデカと「夏の大水着セール!!」と赤文字で書かれた看板と共に、数々の水着が売られている――って、……ッ!?
「――お、おいえな……」
「ん?なんですか?」
我は恐る恐る聞く
「ま、まさかあの異様に面積の小さな服が水着という奴なのか……?」
「え?何言ってるんですか、当たり前じゃないですかー!」
「バカにしないで下さいよーっ!」そう笑いながら肩を叩いて来るえな。
い、いや、バカになどしていない。
我が元々居た世界には水着という物が(恐らく、我は見た事が無い)無いから今こうして実物を見るまではそれがどの様な物なのかは想像が付かなかったが――――こ、こんな物下着となんら変わらんでは無いか!?!?
に、人間はこの様な物を着て海で遊ぶというのか!?恥ずかしく無いのか!?
――って、ちょ、ちょっと待てよ……?という事は、えなも海ではこの様な物を……?
「――ん?魔王さん?なんでそんなに顔赤くしながらこっちを見つめてるんです?――って!?ちょ、頭から煙出てますよ!?」
わ、我には刺激が強過ぎるぞッッッッ!?!?
(意外にも、純粋な魔王の我である。)
「で、えな……本当にこの中から選べば良いのか……?」
「は、はい、ゆうり先輩にも「選んでもらえ」って言われましたし……」
「でもな……」
流石に、この中から我が選ぶのは刺激が強過ぎるぞ……!?
「ふぅ……」
落ち着け……落ち着くのだ我……これは下着では無い、水着だ。それに、選ばなければこの時間は終わらん……!!
こうなったら――適当に手に触れた物に決める……ッ!!
「こ、これにするぞォォォォォ!!!」
そこで覚悟を決めた我は、目を瞑ると勢い任せに数々の水着が並ぶ棚へ手を伸ばす。
そして、手に当たった水着を掴むとそれを掲げた……!
「どうだえな……!これなんか良いではないか……!!――って、」
「ちょ!?ちょっと魔王さん……さ、流石に、恥ずかしいです……//」
「な、なんだこれはァァァ!?!?」
すると、なんとそこで我は中でも布面積が極端に少ないほぼ紐の赤い水着を選んでしまった!?
「じょ、冗談だえな!!――あ!?これなんかはどうだ!?――って、これも紐ではないかッ!?」
「ま、魔王さん――――」
「この変態っ!!」
パチィンッ!!
「痛!?」
この後、何度も謝る我であった。
(どうやら今居た場所は極端に露出度の高い水着のエリアだったらしく、結局えなの水着はもっと奥に置いてあった白色のワンピースタイプ?にし、我のは普通の黒にしたぞ)
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