【悲報】魔王の我、日本に転移し数日目、一目惚れの女に『我の女になれ命令』するもあっさり振られる。ここから始まった生まれて初めての恋愛奮闘記。

カツラノエース

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第14話だぞ【大好き】

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 そして翌日。我は予定通り6時に起きると、朝食を食べ、服を着替え、お金、スマホを持ち、7時に迎えに来てくれた悠介さんの車に乗り、今回のデート場所である春丘テーマパークへ向かった。

 車に乗ってから数十分後――

「よし、着いたぞ。」
「ありがとうな、悠介さん。」

 我はシートベルトを外しながら隣に座る悠介さんにそう礼を言う。

「全然構わない。今日はいっぱい羽を伸ばしてこいよ。」
「あぁ、そうする。」

 それにしても、前、3人で喫茶店にて話した時だって、悠介さんは店前まで送ってくれたよな。
 ゆうりと言い悠介さんと言い、本当に良い人間だ。

「じゃあ、行ってくるぜ。」
「あぁ、
「……ッ!!あぁ……!」

 そうして我は車から降り、ドアを閉める。すると悠介さんは、そのまま我に軽く窓越しに手を振ると、走って行った。
 
 ふぅ……ッ!!今の一言で気合いが入ったぞ……!!
 よし、今日は絶対、えなの心に残る様な良いデートにしてやろう……!!

 そうして後ろを振り返る我――すると、そこには、

「――あ!おはようございます!魔王さんっ!!」
「……ッ!?!?」

 純白のワンピースに身を包んだ女――えなが立っていた。
 あ、あぁ……魔王の我がこの表現を使うのはおかしいだろうが……今回だけは使わせてもらうぞ……えな、お前は天使だ。

 悠介さん、申し訳ない、さっきはあれだけ決意を固めていたが、やはり一筋縄では行かなそうだ。(主に我の緊張で)

「あ、あぁ。おはよう、えな」

 こうして我とえなの記憶の中に良い意味でも残る春丘テーマパークでのデートが幕を開けた。

 ♦♦♦♦♦

「うわぁぁぁ……!!」

 それから我とえなは入場ゲートで入場料を払い、春丘テーマパークに入った。
 すると、入って早々にえなが目をキラキラと輝かせながら周りを見渡し、そう感嘆の声を上げる。

 確かに、えなの気持ちも分かるぞ。色々な建物と青々とした植物達が良い具合にバランスを取っている。
「自然と遊園地の融合」をキャッチフレーズに掲げている事はあるな。

「よし、じゃあまずはあっち方向に行くぞ。あそこには様々な食べ物の店がある。それに、この公園――では無くテーマパークは至る所に植物による彩色がされているからな、今無理に並んで乗り物に乗るよりも楽しめるだろう。」

 そこで、興奮しているえなに我は出来るだけ落ち着いた声でそう言う。(実際は心臓バクバクだ。)
 
 ん?なぜそんなにこのテーマパークの事が詳しいのか?
 ふっ、忘れたのか?我は昨日ゆうりからここのパンフレットを受け取っている。

 そう、ほぼ徹夜で読んできたのだ。だから、このテーマパークの事は完璧に覚えている。(まぁそのせいですごく眠いが……)
 せっかくのデートなんだ、我は大成功で終わらせたい。だから、そこに努力は惜しまんのだ。

「――はっ!す、すいませんっ!私、つい興奮してしまって……はい!私は魔王さんについて行きます!」
「あ、あぁ。魔王の我が華麗にエスコートしてやろう。」

 そうして我の落ち着いた声で正気に戻ったえなは笑顔で我の左側にくっついてくる。

「……ッ!!――じゃ、じゃあ行くぞ」

 落ち着け……落ち着け魔王よ……!!この程度で――肩が触れた程度で動揺などするのではない……ッ!!

 こうして我とえなは、食べ物屋が多く並んでいる「春丘フードストリート」の方向へと並んで歩き始めた。


「ん~~!!美味し~!!魔王さんっ!この「春丘ドーナツ」美味しいですよ!!」
「あ、あぁ。確かに美味いな。」

 それから我とえなは、春丘フードストリートで様々な食べ物屋を巡り、食べ歩きを始めた。――のだが、さっきから甘い物ばかりで気持ち悪くなってきたぞ……

 そしてこの今食べている、青色と黄緑色のチョコソースが半々で塗られたドーナツも同じく、ものすごく甘かった。まるで、砂糖に齧り付いているみたいだ……

 我は甘いものが嫌いな訳では無いが、それでもサンドイッチの方が美味いぞ……
 ――しかし、それに比べてえなは、

「はぁ……!美味しかったっ!!魔王さん!!次のお店行きましょ!!」
「あ、あぁ。――って!?腕を引っ張るのではない!?」

 さっきからずっとこの調子だった。
 全く、えなはどれだけこの砂糖の塊を食べれば満足するのだ……?どうやらこの世界の人間は、砂糖を食べると頭のリミッターが解除されるらしい……
 ま、そのおかげか我の手を引っ張るえなと自然に手を繋げているから良いんだがな。

――そしてそれから、更に数店舗回った後、気が付けば最初の、入り口前に戻ってきた。

「あれ?戻ってきちゃいましたね?私たち、後戻りはしていないはずなんですが。」
「あぁ、それならな、この春丘テーマパークの飲食店やお土産ショップがある道はドーナツの様に円形なのだ。その中心に色々なアトラクションがある訳だが……だから、さっきの春丘フードストリートを真っ直ぐ歩いていれば元の場所に戻って来るというのは不思議では無い。むしろ当たり前だ。」
「なるほど……確かに、さっきから直線の道は無かったですもんね。理解しました。」
「それなら良かった。」

 そこで我はおもむろに昨日ゆうりからもらったスマホを取り出すと、時間を確認する。

 時間は14時30分。うむ、昼時の少しあとくらいか。
 これなら昼ご飯を食べに行っている客も、逆に昼時に空くのを狙った客も比較的少ないはず……アトラクションに乗るなら今だな。

「どうする?えな。アトラクションに乗りたいか?」
「え?良いんですか?」
「ん?なんでだ?ダメな理由が無いだろう。」
「いや、その……魔王さんアトラクションとか苦手そうだなって。」
「……ッ!?な、なな、我が苦手だと……?そんな訳ないだろうッ!!」

 確かに、我はこの世界のアトラクションとやらが主にどの様な物なのかは分からん。(パンフレットにも、文字の説明のみだったし)
 だが、魔王として、苦手な物があるなど絶対にダメだ!!

「本当ですか……?なら……!早く行きましょう!!」
「あぁ。仕方ない、乗る時に金が必要なら我が出してやる。だから、存分に楽しんでくれ。」

 我のアトラクションは苦手では無い、という返事を聞いて、途端にテンションの上がったえなに、我は少し微笑みながら優しくそう言葉をかける。

 フードストリートの時は奢るタイミングを逃していたが……奢るとしたら今しかないだろう。
 すると、予想通りテンションの上がっていたえなは申し訳なさそうな表情はすること無く、

「ほんとですかっ!?やった!!魔王さんっ!!――」

「大好きですっ!!」
「……ッ!?!?!?」

 それはいきなりの出来事だった。急にえなが笑顔で抱きついてきたのだ。
 今の大好き――これは恐らく恋愛的な意味では無く、友人的な意味だろう。

 しかし、今の――ただでさえずっとえなと1対1という状況の我にとっては、それだけで十分だった。

「よしッ!!!往くぞえな!!!」
「はいっ!!」

 ははは……ッ!!!アトラクションよかかってくるが良い……!!今の我は最強だ……!!
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