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第3章2部【ソルクユポ編】
第70話【魔王と会う条件〜なんで俺!?〜】
しおりを挟む「あ、あれが……!?」
「恐らくな、あの城が魔王城だろう。」
スザクは両手を腰に当てると、進んでいる道の向こうに見える石の城を見ながらそう言う。
いや、なんでそんなに冷静で居られるんだよ……!?目の前の城の中に居るのは魔王なんだぜ!?
――だが、さっきもスザクは「魔王は普通に人間とも共存している」って言ってたしな……もしかして魔王=悪のイメージを持っているのはそういうゲームなどをプレイした事のある俺たちくらいなのかもしれない。
「お前らも立ち止まっとらんとはよ来いや!置いていってまうで!」
「あ、あぁ!」
兎にも角にも、まずは実際に会ってみないと分からないしな。
こうして俺たちは、古い石の城へ向け、歩いて行った。
---
それから3分後、俺たちは城の前へ到着した。
ここに来る前に城を守る為に造られたであろう石の壁や門があったが、どれもこれも崩れており、簡単に入り口まで来ることが出来た――のだが、今俺たちはその入り口の右側にある石の柱にその身を隠していた。
「お、おい。こっからどうするんだよ……?」
俺は柱から顔をちょこちょこと覗かせ、様子を伺うスザクに小声でそう尋ねる。
本当はこんな事をせずに、すぐに城へ入って魔王と話したいところなのだが……
「……」
なんと入り口の前に1人の武装した門番が立っており、俺たちは咄嗟に姿を隠したのだ。
その門番は全身に鎧を纏っており、手には長い槍を持っている。
身長も180センチはありそうで、口からは2本の鋭い八重歯、鋭い目付きに真っ赤な眼球。そしてエルフ同様にとんがった巨大な耳。
こりゃおっかねぇ……出来れば穏便に魔王のところへ案内してもらいたいんだが。
するとそこで、俺の質問に対してしばし考えていたスザクがそこで口を開き、意を決した様な表情でこう言った。
「よし、じゃあこれからあの魔族と話そう。」
---
「――ん?なんだ貴様ら。見ない顔だな、別大陸の人間か?」
「あぁ、実は今回この城に居る魔王に聞きたい事があってな。」
「魔王様に……?一体なんの用だ?我々魔族はここ数百年、貴様ら別大陸の人間とは接触していないはずだが。」
それから俺たちは軽く段取りを済ませ、門番の前に行った。
今こうして話をしているスザクは流石上級冒険者!態度も落ち着いていて、ものすごい圧を放っている魔族にも引けを取っていない。
あぁ、憧れるぜ!やっぱり上級冒険者はすげぇよ!
って事は等級がスザクやミラボレアよりも高いレザリオはもっと――――
「グリグリグリグリ」
暇そうに鼻をほじっていた。
って憧れねぇぇぇ!!!なんだよこいつ!?
「あぁ、お前の言う通り魔族はここ数百年は俺たちとは関わりを持っていなかった。だから聞きたいことと言うのはお前たち魔族の事では無い。」
「なら余計になぜ我々に聞こうとするのだ?」
「それは、魔族がこの魔大陸についていちばん詳しいからだ。」
「――ほぅ?」
それから俺たちは、今回この大陸に来た理由と、最近中央大陸で起こっている謎の変異種出現と、魔大陸を本拠地にしているソルクユポの関係がある可能性があるという意見が出た事を門番に告げた。
「――まとめると、貴様らは自分の大陸で起こっている事とこの大陸に住んでいる人間、ソルクユポとの関係があるのかどうかを、魔大陸に古くから住んでいる魔族に聞きに来たという事だな?」
「あぁ、その通りだ。」
「なら、こちらが出す試練を合格する事が出来れば貴様らを魔王様の元に通してやろう。」
「――その試練というのは……?」
スザクがそう尋ねた瞬間、門番は急に手に持っていた槍を俺たちの方に向け、ニヤリと笑うと、
「それは我と決闘だ。貴様らの中から1人代表を選び、そいつが一撃でもこの身体に攻撃を当てられたら合格にしてやろう。」
なるほど……確かにこの門番は強そうだし、出すとしたらそんな感じだろうなとは思っていたが……ふっ、勝ったな。
こいつは知らないだろうが、今こっちには中央大陸最強の狂乱の戦士が居る。
始まった瞬間に一撃バシュンで終わりだぜ!
「なるほど、分かった。じゃあ代表は――――とうま、お前が行け。」
「って、は、は、は、は、」
「はぁぁッ!?!?」
「せやな、丁度ええ機会やろし。頑張るんやで。」
「頑張ってぇ」
「まぁ、スザクが言うなら逆らえないわね。ねぇ?とうま?」
「頑張れよ!」「頑張って~」
いやいやいやいや!?なんかもう俺で決まったみたいな空気感になってるが、おかしいだろ誰がどう考えても!!
だって俺だぜ!?普通こういう時は一番強いやつが出るだろ!まだこれが練習試合とかなら分かるけどよ!バチバチの本番じゃねぇか!
「いや、無理だって!」
いつも何か指示をされるとなんだかんだ従う俺だったが、今回ばかりは必死に抵抗した。
だって命大切だしッ!まだ死にたかねぇぇ!!
絶対やらねぇ!絶対にやらねぇからな俺は!!
---
それから5分後。
「では貴様、準備は良いか?」
「はぁ……良いよ……」
俺は見事にスザクたちに言い負かされ、城の前の開けた場所で門番と対峙していた。
「頑張れよとうま。これは本気の殺し合いでは無いが、気を抜くと死ぬからな。」
「頑張るんやで」「頑張れぇ」
少し後ろには、それを観客の様に見るスザクたち。
なんかこれ、前にエルフとした決闘の時みたいだな。
「っし!もう知らん!こうなったらやってやるよ……!」
俺は背中から、エスタリから受け継いだ剣を引き抜くと、それを門番の方に構え、もう片方の手で盾をしっかりと握る。
すると、そんな俺を見て門番はニヤリと笑うと、
「では、行くぞッ!!」
槍を構え、俺の方目掛けて突進をして来た。
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