上 下
28 / 88
第1章3部【中央大陸招待編〜アンテズ村を救え〜】

第27話【尋問〜恐怖でチビりそう〜】

しおりを挟む

 夜のアンテズ村に現れた一匹のゴブリンをみさとは漫画などでよく見る手法で気絶させると、それを肩に担いで、すぐ側に生えていた一本の木のそばに下ろした。

 そして、「とうま、ちょっとロープ持ってきて」
 こっちを向かずに手を俺の方に伸ばし、指示をして来る。

 これから本当に何をするのかが分からなかった俺は、とりあえず指示に従って、小麦畑の右側にある倉庫の壁に掛かったロープを取り、それを言われるがままにみさとに渡した。

「ありがと。――お、このくらいの長さがあれば行けそうね」
「?」

 こいつ、本当に何するってんだよ。
 ロープを手にして再び先程の様な不気味過ぎる笑みを浮かべたみさとに、察しの悪すぎる俺は首を傾げる。

 しかし、次の瞬間――そんな俺でも何をしているのか分かった。

「み、みさと――まさかとは思うがそれってまさか……」
「そう、ゴブリンを木に縛り付けるのよ」

 ニコッと笑顔でそう言うみさと。
 いやいやいやいや!可愛く笑ってるけど目の奥か濁ってるぞ!

「そ、そんなことしてど、どうするんだよ……?」
「そんなの拷問して巣穴の位置を聞き出すに決まってるじゃない」
「決まってるじゃないじゃねぇよ!」

 いや、第一相手が喋れる人間ならばともかく、(それも非人道的過ぎて嫌だが)相手はゴブリンだぞ?どうやって聞き出すってんだよ。

 しかし、どうやらそんなみさとには考えがあるらしく、

「ま、見てなさいって」

 ニヤッと笑ってそう言った。

 ---

「これで良しっと!」
「手際良いな……」
「学校で習ったのよ」
「どんな学校だ!」

 みさとは木にゴブリンをロープでグルグル巻きにし、それを固結びすると、腰に手を当ててドヤ顔をする。

 ――で、ここから一体どうするんだ?
 ロープを巻いている時にどうやって巣穴を聞き出すのか聞いても、みさとは「まだ秘密」と言って答えてくれなかったのだ。

 これからゴブリンの身に降りかかるであろう災難に若干同情しながらも、少し後ろで腕を組みながら見ていると――早速、みさとは行動を開始した。

「まずは――おらッ!」
「――ギャギャ!?」

 まずは手始めに、ゴブリンの顔を殴って起こす。って……もう既になかなか酷いのだが……

 しかし、当然こんな事で終わるわけが無い。
 みさとはゴブリンが起きたのを確認すると、声を荒らげ始めた。

「おい!お前の巣穴はどこだ?吐け!」
「ギャギャギャ!?」
「早く吐け!」
「ギャギャ!!」
「こんのッ!」
「ギャギャァ!?」

 当然だが人間の言葉を話せる訳が無いゴブリンは、要求に対してギャギャギャと叫んでいたが、それにみさとは腹が立ったのか顔を思いっきり蹴った。

「いい加減吐け!」
「ギャギャ……ギャギャ!」
「もう!!ねぇとうま!コイツギャギャギャギャしか言わない!」
「当たり前だろバカ女!」

 こ、こいつは本気でこう言ってやがるのか……?
 そろそろマジで怖くなって来たぞ……

「なぁみさと……こんな事を続けてたら巣穴の位置を聞く前にゴブリンが死ぬぞ?」
「はぁはぁ……まぁ、確かにそうね。」
「考え、あるんじゃないのか?」

 もしその考えとやらが今の尋問だとしたらマジでキレるが。
 しかし、それは流石に無かった様で、俺にそう言われたみさとは八重歯を出しながら笑った。

「ま、あるわ。秘策がね。」
「じゃあ早くそれをしてくれ。」
「しょうがないわね、分かったわ。」

 たく……なんでこういう時に最初から秘策を出さないんだろうな?
 俺もいつも漫画とかを読んででずっと思ってるんだよ。

「じゃあ、始めるわ。」

 俺から視線をゴブリンに移すと、腰に手を当てたまま顔を前に突き出すみさと。

「……ッ!まさか……!」

 そこで俺もこいつがこれから何をしようとしているのかが分かった。
 
 そう、こいつはゴブリンに対して思っている事を読むことの出来るユニークスキル、[ココロ・ビジョン]を使おうとしているのだ。

 普通、モンスターは人間の言葉を理解する事は出来ないが、知能の高いゴブリンなら、人語を話すことは出来なくとも理解する事は出来る。

 要するに、ゴブリンの知能の高さを逆手に取ったって訳だった。
 こ、こいつ……バカなのか賢いのかよく分からん野郎だぜ。

「最後にもう一度聞くわ……お前の巣穴はどこなの。――――なるほど。分かったわ。」
「マジか!?」
「えぇ、西側に見える森の中よ。」
「ギャギャ!?ギャギャ!!」

 みさとが場所を言った瞬間、急に激しく暴れ出すゴブリン。
 これは完全に図星だった。

「もう貴方に用はないわ。死になさい。」
「ギャギャ!?……」

 そんなゴブリンの反応を見て、更に確信を得たみさとは、地面に置いていた剣を手に取ると、ゴブリンの首を飛ばす。

 そして俺の方を向くと一言、笑顔でこう言った。

「さ!夜も遅い事だし寝ましょうか!」
「ママぁ!?みさとが怖いよぉぉ!?」
「ちょ、なに走り出してんのよ!?」
「こ、殺される!?」

 空に浮かぶ赤い星と相まって、完全に殺人鬼の様になったみさとから俺はダッシュで借りている家の方へ走って行く。

 こうして俺とみさとは、真夜中にゴブリンの巣穴の位置を突き止めたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

ゲームで第二の人生を!~最強?チート?ユニークスキル無双で【最強の相棒】と一緒にのんびりまったりハチャメチャライフ!?~

俊郎
SF
『カスタムパートナーオンライン』。それは、唯一無二の相棒を自分好みにカスタマイズしていく、発表時点で大いに期待が寄せられた最新VRMMOだった。 が、リリース直前に運営会社は倒産。ゲームは秘密裏に、とある研究機関へ譲渡された。 現実世界に嫌気がさした松永雅夫はこのゲームを利用した実験へ誘われ、第二の人生を歩むべく参加を決めた。 しかし、雅夫の相棒は予期しないものになった。 相棒になった謎の物体にタマと名付け、第二の人生を開始した雅夫を待っていたのは、怒涛のようなユニークスキル無双。 チートとしか言えないような相乗効果を生み出すユニークスキルのお陰でステータスは異常な数値を突破して、スキルの倍率もおかしなことに。 強くなれば将来は安泰だと、困惑しながらも楽しくまったり暮らしていくお話。 この作品は小説家になろう様、ツギクル様、ノベルアップ様でも公開しています。 大体1話2000~3000字くらいでぼちぼち更新していきます。 初めてのVRMMOものなので応援よろしくお願いします。 基本コメディです。 あまり難しく考えずお読みください。 Twitterです。 更新情報等呟くと思います。良ければフォロー等宜しくお願いします。 https://twitter.com/shiroutotoshiro?s=09

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

処理中です...