上 下
20 / 88
第1章2部【エルフ編】

第19話【エルフの元へ〜関係無い奴もついて来る〜】

しおりを挟む

「でもよ、俺はこれから一体どうすれば良いんだ?」

 俺がオリアラの森の使用権を巡ってエルフと決闘をするのは分かったが、それ以外のことが全然よく分からん。
 お姉さんにそう聞いた。

「今から私も含めた数人でオリアラの森に入り、エルフ族の方に決闘をするということを伝えに行きます。そして恐らく、そのまま決闘という流れかと。」
「それって、とうまと同じパーティーの私たちも行った方が良いのかしら?」
「そうですね、オリアラの森ではモンスターが出る可能性もあるので、来ていただけると幸いです。」
「よし!じゃあ私たちでとうまの応援をしに行くぞ!!」
「「おー!」」

 おいおい、俺がこれからする決闘はコロシアムでする様な見物じゃねぇんだぞ。
 たく……パーティーのイケメン担当が戦うってのにお気楽なヤツらだな。

 それにしても今の話を聞いた限りでは、エルフたちと会ってすぐに決闘をする感じか。
 出会って5秒で決闘って訳だな。

「じゃあ俺たちはもう出発の準備をした方が良いのか?」
「はい、私もこれから出発の支度をしますので、皆様は冒険者ギルドの前で待っていて下さい。」
「あいよ。」

 それにしても、まさか今日こんなことをするなんて思わなかったぜ。
 俺はさっき入って来たばかりの扉を開けると、4人で外に出る。
 お姉さんが来るのを待つことになった。

 ---

 それからしばらくして、俺たちは冒険者ギルドの前にあるベンチで座っていると扉から日傘を持ったお姉さんと、ひとりの冒険者が一緒に出てきた。

 ん?まさか付き添いか?
 俺はそいつの顔を見て、それが誰か確認する――って!

「エスタリ?なんでお前がお姉さんと一緒に出てきたんだ?」

 そう、一緒に出てきたひとりの冒険者は、本当にオーガを倒したエスタリだったのだ。
 こいつと最近めちゃくちゃ会うな。まさか俺たちのことが好きなのだろうか?

「皆様、待ちましたか?」「よっ、お前ら。」
「いえ、全然大丈夫よ――ってそんな事より、」
「お前、他の仲間はどうしたんだよ?」

 俺はいつも通りのお気楽な雰囲気を醸し出すエスタリにそう尋ねる。
 
「あいつらには依頼に行かせる。」
「お前は?」
「俺は行かない。お前の決闘を見届ける義務があるからな。」

 なんだよ義務って。
 そんなセリフを俺に対して吐くんなら、いっその事立場を変わってくれよッ!!――とは言わないが……
 本来この立場に立つのはお前だろうが。

 っていうか、依頼に行かせるあの2人は大丈夫なのだろうか。
 実際に異世界に来てから分かったのだが、パーティーメンバーがひとり欠けるというのは、思っている何倍も痛い。
(オーガと戦った時に痛感したよ)

「っていうか、あの2人は大丈夫なのか?」
「あの2人?オネメルとヒルデベルトの事か?」
「逆にそいつら以外いるか?」

 全く……こいつは仲間が心配とか無いのか?
 確かにあの2人は強いが――信頼し過ぎだろ。

「あの2人なら大丈夫だ!難易度低めの依頼だからな。」

 真っ白な八重歯をグイッと出して、片手でグッドを作りそれを突き出してくるエスタリ。
 そういうもんなのかねぇ……まぁ良いけどよ。

「じゃあとりあえず、立ち話をするのもなんだし、歩き始めるか。」
「そうですね」

 これ以上エスタリと話していても時間が経つだけという事に気が付いた俺は目線をお姉さんの方に向けると、出発する様に促す。

「じゃあ、行きましょう。」
「行こう行こう!!」
「ちょっとくるみ、あんまりはしゃぎ過ぎないの。」
「はぁ……こいつらは俺のする決闘をなんだと思ってるんだよ……」
「まぁ元気だせって、俺もお前の決闘、楽しむ気満々だからよ!」
「フォローになってねぇよそれ!!」

 むしろボケているのかと疑いたくなるエスタリのフォローにツッコミながら、俺はみんなでオリアラの森へ向けて出発したのだった。

 ---

 そこからしばらく雑談を交えながら歩いていると、あっという間にオリアラの森へ入った。
 俺たちは2日前にここでワーウルフを倒し、オーガと戦った訳だが――なんだか思ってたよりかは怖くないな。

 てっきり、「オーガは倒したからもう居ないって分かるが、それでも怖いな……」なんて弱気な発言をすると思っていたんだが……

 まぁ、怖くないに越したことはないから良いんだけどな。
 でも、普段こういうところに来ていないお姉さんは、終始みさとに引っ付いて涙目だったぜ。
 正直に言っておこう。こういうギャップも興奮するな。

 
 それから更に歩き続けると、ずっと薄暗かった森から抜けた様で、いい具合いに光が入ってくる、良い雰囲気の場所に変化して行った。

「さっきまでのジメジメとした雰囲気からガラッと変わったな。」
「だな、この光景を愛しのオネメルにも見せてやりたかったぜ。」

 いや、依頼に行かせたのアンタじゃねぇか。
 それに愛しのオネメルって――前から思ってたがコイツ仲間に恋してるのか?
 だとしたら確実にその思いは一方的だろうな。

 するとそこで――さっきまでのジメジメとした場所を抜けて、テンションを取り戻しつつあったお姉さんが、前を指さしながらこう言う。

「あ!あれは!皆様、着きましたよ。」
「ん?――お、あれか。」
「俺も初めて来たけど、やっぱりあったんだな。」

 お姉さんの指さした先には、木でできた鳥居の様なものがあり、その下にひとりの女性が立っている。
 その女性は髪が薄い緑色のボブ、耳は長く伸び、ローブの様な服を羽織っていて、まるで絵に書いたかのようなエルフだった。

 そんなエルフも、こっちへ向かってくる俺たちの存在に気づいたようで――こっちを向くと真剣な声色でこう聞いてきた。

「ここへ何しに来たんですか?」
「私たち、冒険者ギルドの人間です!先程送られてきた手紙の返答をしに来ました!」

 エルフの問い掛けに、小走りで近寄って行きながら笑顔でそう答えるお姉さん。
 すると――それを聞いたエルフはすぐに理解したような表情になると、

「それは失礼しました。すぐに長の元へご案内致します。」

 頭を下げながらそう言った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

~まるまる 町ごと ほのぼの 異世界生活~

クラゲ散歩
ファンタジー
よく 1人か2人で 異世界に召喚や転生者とか 本やゲームにあるけど、実際どうなのよ・・・ それに 町ごとってあり? みんな仲良く 町ごと クリーン国に転移してきた話。 夢の中 白猫?の人物も出てきます。 。

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

処理中です...