上 下
19 / 88
第1章2部【エルフ編】

第18話【勘違いからの依頼〜モンスター討伐じゃないの?〜】

しおりを挟む

 武器屋に行った翌朝。
 俺たちはいつもと同じようにウェーナの家(ここまで来たらもう俺たちの家と言っても良いかもしれないな)を出ると、冒険者ギルドへ向かっていた。

 昨日はこの世界での初めての休日で、冒険者ギルドには行かなかった訳だが、こうやって1日でも日が空くとなんかめんどくさくなるよな。

 学生時代、ズル休み常習犯だった俺はよくこんな気持ちになっていたよ。これ、分かってくれるやつもいるはずだ。

「――ん?どうしたのとうま?いつもの顔も酷いけど、今日は一段と暗いじゃない。」
「あぁ、1日休みがあったからなんか依頼するのがしんどいなって思ってたんだよ。お前らもあったろ?休みが挟まれたら学校がダルくなる的なさ。」

 なんかみさとが今ものすごく失礼な事を言っていた気がするが――まぁ、見逃してやるとするか。
 俺は先程思っていた事と同じ様な内容を口にする。

 すると、俺の発言を聞いた3人は、全員が驚いた様な表情をしてこう言った。

「え?私はダルいなんて思った事なんて一度も無いわよ?」
「あぁ、私も同じ意見だ。」
「うん、学校は楽しいもんね!」

 はぁ?コイツらはさっきから一体何の話をしてるんだ?
 まさかとは思うが、俺の「学校ダルい」発言に対しての返しじゃ無いだろうな?
 仮にそうだとしたらコイツら、タダのドMじゃねぇか。

「楽しいぃ?学校がか?フッ、あんなのただの地獄だろう。」

 俺は手で片目を隠し、もう片方の手を腰に当てるとポーズを決めながら超絶イケた声でそう言う。
 すると、3人はそんな俺を完全に無視すると、嘲笑うかの様に目の前で会話を繰り広げ出す。

「学校楽しいわよね!」
「だよな!友達とプリクラとか良いよな!」
「うんうん!カラオケとかね!」

 こ、コイツらなぁ……
 確かに初めて会った時から俺みたいなヒョロガリ野郎とは釣り合わな過ぎると思っていたが――目の前で陽キャたちの話し合いを聞かされると、高校生活永遠ボッチ+2年で中退の俺はこう叫ばずにはいられなかった。

「こんの、リア充共がァァァッ!!!」

 テンションが低い朝、美少女たちに格の違いを見せつけられた俺であった。

 ---

「おっすー」

 冒険者ギルドの扉を開けた俺は、片手を上げながらそうギルド内の冒険者たちに挨拶をする。

 前までは最低等級の雑魚パーティーだったが、エスタリたちと共に戦い、オーガ討伐を成し遂げ、そして等級も上がった俺は少し調子に乗っていた。(さっきイライラする出来事があったからそれの気晴らしってのもある。)

 普通、漫画とかだとこういうシーンでそんな調子に乗る主人公の天狗になった鼻を折る猛者とかが出てくるよな。「そんな程度で調子に乗るなよクソガキが」的な感じでよ。

 だが、ここは漫画の世界では無く、異世界ではあるが現実だ。俺の挨拶を聞いた冒険者たちは――

「お!期待の新人!おはよう!」
「聞いたぞ!オーガを討伐したんだってな!」

 そんな具合いに、挨拶を返してくれた。
 フッ、良い気分だぜ。この感じでお姉さんにも挨拶をかますとしますか。

 俺が言うお姉さんと言うのは、分かると思うがこのギルドで受付娘をしている金髪ボブの美女の事だ。
 
 俺は3人を引き連れて受け付けカウンターまで歩くと、肘をカウンターに置き、出来るだけのイケボで挨拶をする。

「よッ、お姉さん。今日も可愛いな。」
「――あ!皆様!お待ちしておりました。」
「……おはよ」「おはよう」「おはよ!」

 俺の後で挨拶をした後ろの3人が若干引いている様な気もするが――まぁそんな事は置いておくとして、聞いたか?今の!

「お待ちしておりました。」だってよ!
 ほらなお前ら?俺の事をただの気持ち悪いエロゲーマーだと思っていたかも知れないが、それは間違いだ。
 今の俺は今までとは違う……「スーパーとうま」だぜッ!!

「どうしたんだ?俺の事を待ってたんだろ?」
「はい、実はある一通の手紙が届きまして――」
「ん?手紙?」
「はい、近くに住んでいるエルフ族からです。」
「はい?エルフ?」

 俺改めスーパーとうまは、お姉さんが口にした「エルフ」という言葉が耳に引っかかる。
 一瞬「まさかエルフにも俺のファンがいたのか」なんて考えも出たが――流石にそれは無いだろう。

 というか、この話、あまりふざけない方が良いかもしれんな。
 俺は喉に負担を掛けながら出していたイケボを辞めると、いつも通りの声でその手紙の詳細を尋ねる。

「そこにはどんな内容の事が書かれていたんだ?」
「はい、それはですね――――」

 お姉さんが言った内容を簡単にまとめるとこうだ。
 まず、手紙を出してきたのは先日俺たちがオーガを討伐したオリアラの森の更に奥に住むエルフ族で、「オーガを倒してくれてありがとう」そんな感じの内容がほとんどだった。

 これだけならば俺の天狗の鼻が更に伸びるだけだったのだが、問題はここから。
 実は以前からこのエルフ族と、この町、ラペルでオリアラの森を使用する権利を争っていたらしい。

 最近は冷戦が続いており、冒険者たちも普通に依頼をしていたらしいのだが、この際決着を付けようとの事。
 
 そしてその決着の付け方なのだが……

「本当に俺がやらなくちゃいけないのか……?」

 俺は恐る恐るお姉さんにそう聞く。
 その声色には、先程の「スーパーとうま」の面影は何処にも無かった。

 今ダサいって思ったやつ。とりあえず話を聞いてくれ!
 なんと決着の付け方はエルフの代表とこっちの代表が決闘をし、勝った方が森の権利を手に入れるという物なのだが――冒険者側の代表は俺だというのだ。
 マジで一体なんでなんだよ!?

「はい、手紙では森で偵察していたエルフが、とうま様がオーガのツノを持っているところを見たと書かれていますので……」
「ツノだと?そんなの持って――ッ!?」

 そこで俺は思い出した。
 討伐した証の為にエスタリが切り取ったツノを、記念に持たせて貰った時の事を。

 おそらくその偵察していたエルフはちょうどその場面のみを見ていて、俺がオーガを倒したと勘違いしているのだろう。
 クッソ!なんであんな事したんだ俺!

 大体オーガ討伐をしたって言っても俺はエスタリたちの足を引っ張ってただけだし、決闘なんて勝てるはずが……

 だが、こうなってしまった以上、断る事は出来ない。
 ここで俺が怖いからという理由で断ると、冒険者たち全員に迷惑を掛けてしまうからだ。

 ヒキニート時代に色んな人たちに迷惑をかけてきた分、この世界では迷惑をかけたくないんだよ俺は。だから――

「……分かった。俺がやるよ。」

 いつも物事を任せられた時にする苦笑いをしながら、お姉さんに向かってそう言った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

処理中です...