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第1章1部【始まりの街〜ラペル〜】
第10話【まるで合コン〜魔法は義務教育らしい〜】
しおりを挟む「じゃあまずは自己紹介からするな。」
俺たちは今、声を掛けてくれた3人組の冒険者と共にギルド内にある階段を上り、中二階の一番奥にある椅子に座っている。
ちなみに座席順は、奥から俺、みさと、ちなつ、くるみで、俺の対面に弓を持った女の子、リーダーらしき青年、龍人だ。
「俺の名前はとうま」
「私はみさとよ」
「ちなつだ。」
「くるみだよ~」
俺たちは全員席に座り終わると、順番に自己紹介をしていく。
すると、そんな俺たちを真似するように、対面の3人もひとりづつ自己紹介を始めた。
「俺の名前はエスタリ、エスって呼んでくれ。」
と、茶髪のリーダーだろう青年
「私はオネメルよ、よろしくね。」
と、弓使いの黒髪ロング
「我が名はヒルデベルトと申します。」
と、龍人
「自己紹介ありがとう、全員、よろしくな。」
「おう!こっちこそよろしく!」
---
自己紹介が終わると、すぐにエスタリは俺たちに質問を投げかけてきた。
「――さっきの事もあってで聞きづらいんだけどよ、お前らはほんとになんでオーガから逃げきれたんだ?」
「あぁ、やっぱり気になるよな――」
まぁ、さっきの感じ悪い上級者が言っていたように、初心者である俺たちがオーガから逃げ切るのは普通じゃないんだもんな。
俺たちだってユニークスキルが無ければ逃げ切れなかった訳だし……
先程みたいにまた茶化すというのもアリかも知れないが――コイツらなら良いだろう。
「実は、俺が持ってるユニークスキルの力で逃げ切ったんだよ。」
「ちょ、ちょっととうま、それ言っちゃって良かったの?」
「ま、大丈夫だろ、周りにあまり人は居ないし。」
というか、予めこの話が出ると思ったから人の少ない中二階の一番奥を選んだんだが。
すると、俺の放った「ユニークスキル」という単語に、エスタリやオネメル、それに出会ってからまだ一度も表情を変えていなかったヒルデベルトまでもが、勢いよく食い付いてきた。
「ユニークスキルだって……?噂で聞いた事はあったが、まさか本当に持っているヤツがいたんだな……」
「その話、詳しく聞きたいわ!」
「お恥ずかしながら、我もその話には興味がありますぞ。」
「分かった、じゃあ――」
それに対して、ユニークスキルという名前を出してまで能力を隠す意味は無いだろうから、俺は自分の持っているユニークスキルの能力と、ほか3人が持っている能力を説明した。
ちなみに俺たちが死んで転生してきて――って話はして無いぜ、ややこしい事になりそうだからな。
ユニークスキルは気づいたら持ってたって事にしてある。
「――なるほど……気づいたら持ってた、か。案外そんな感じなんだな。」
「もっと凄いもんだと思ってたのか?」
「あぁ、てっきり魔王を倒したら――とかだと思ってたぜ。」
それはヤバすぎだろ――って、魔王?この世界にもそんな存在があるのか。
「だってみさとちゃんは、人の考えてる事分かるんだろ?」
「まぁね、体力は消費するけれど。」
体力消費するのか、それは俺も初見だな。
「ちょっと今俺が考えてること当ててみてくれよ!」
「良いわよ?――――――「オネメル、結婚してくれ」でしょ?」
「当たりだ!よく分かったな!」
「ちょっと!?何考えてんのよエス!?」
そんな楽しい談笑の時間を過ごしていると――
「ちなみによ、」
「ん?なんだ?」
「お前らって、どんな武器構成なんだ?」
「武器構成?」
「パーティーで、それぞれが使ってる武器だよ。」
あ~、そういう事ね。
正直テオさんから貰ったのは剣3本と杖1本なんだが――魔法なんて存在しない世界から来た訳だから当然誰も杖を使うことが出来ず、この中だと一番剣を使えなさそうな低身長ロリのくるみに持たせてるだけだから、実質剣が3人のパーティーなんだよな。
(くるみは杖を持った応援役だ。)
「それなら、くるみ以外の3人が剣だな。まぁ、俺たちは誰ひとり魔法なんて使えないから、一番戦闘力の低そうなくるみに杖を持たせてるだけなんだが」
「ちょっと!酷いよ~」
すると、笑いながらそう放った俺にエスタリは酷く驚いたらしい。
「な……今魔法を使えないって言ったか……?」
「ん?そうだが?」
「4人とも、か……?」
「あぁ」
なんだよ?魔法ってのは冒険者だけが使える物で、どちらかというと使える方が珍しいとかそんなんじゃないのか?
「そんなにおかしいか?」
俺は頭を抱えるエスタリにそう質問をする。
だってここまで来たら気になるじゃん?
すると、頭を抱えたままこう返された。
「いや……魔法は今どき使えないやつは居ないと思ってたんだが……」
「え!?そんなにみんな使えるのか!?」
その後、詳しく聞くと、この世界では地球で言う学校のようなところで魔法を教えているらしく、初級程度の魔法なら誰もが使えて当たり前らしい。
だからさっきの俺たちの発言は、地球で言う「俺たち4人、全員かけ算出来ませんッ!」みたいなもんだったって訳だ。
そりゃあれだけ驚かれてもしかたないよな。
(その事実を知った後、俺はまるで異世界から来ました!みたいな発言をしていた事に気づいて、急いでその魔法学校に通っていなかったって事にしたぜ。)
「――とにかく、これからも冒険者を続けるってんなら魔法は使えないと困るぜ?」
「だよな……」
ゲームの攻略本見たいなノリで、売ってたりはしないのだろうか?
「なんか無いのか?魔法が撃てるようになる本とか」
「あるっちゃあるが――」
やめといた方が良いらしい。
なんでかって言うと、最初はちゃんとした人に見てもらいながらしないと変なくせが付くからだそうだ。
確かに日本でも基礎は先生にじっくり教えて貰いながらするもんな。
だからそういう本は、更に極めたい中級者以降向けなんだと。
じゃあ、28歳にして何ひとつ魔法を使えない俺はどうしたら良いってんだよ……
俺は頭を抱えて考える。
すると、そんな俺たちのために何か案を考えていてくれたのか、オネメルが、
「じゃあ、魔法を人に教えてる先生に頼めば良いんじゃないかしら?」
そう言った。
「先生?それって魔法学校のか?」
「いいえ、それとは別に教えている先生よ。お金は掛かるかもしれないけど、その分分かりやすいと思うわよ?」
「なるほど……」
要するに家庭教師的なヤツって事だな。
確かにそれは良いかもしれない。
すると、そこでずっと黙っていたヒルデベルトが、窓の外を見ながらこう言った。
「エスタリ殿、そろそろ依頼を受けないと帰りが暗くなりますぞ」
「――もうそんな頃か、分かった。じゃあ行こう。」
「そうね」
ヒルデベルトの一言で、予想以上に時間が経っていた事に気づいた2人は、椅子から立ち上がる。
「すまねぇ、俺たちそろそろクエストに行かねぇと行けないんだ。」
「ごめんね」
「すみませぬな。」
そして、それぞれそう言い残すと、階段を降りて行った。
まだアイツら依頼受けてなかったのか、ならしょうがねぇな。
「おう!ありがとな。」
「またね!」「じゃあな!」「ばいば~い」
俺たちも、そんな3人に別れの言葉を告げた。
家庭教師――か、確かにいい案だよな。
「受け付けのお姉さんに聞いてみるか、オネメルが言ってた先生の事。」
「そうね」「だな」「うん」
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※小説家になろう様にも掲載しています。
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