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第1章1部【始まりの街〜ラペル〜】

第5話【武器探し〜またもやう○こ拾いさせられる俺〜】

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 次の日。
 今までは毎日ヒキニートで、早く起きる必要が無かった俺は昼頃に起きていたのだが、昨日町の中を歩き回ったりしたからか、今日は朝焼けと共に起きることが出来た。

 とりあえず今日はどこかで武器を手に入れて、それでモンスター討伐の依頼を受けられるようにしないとな。
 まぁ、正直なところ俺はモンスター討伐なんてしたく無いんだが。

 だって怖いじゃん?相手はモンスターだぞ?
 ヒキニートだった時はやる事が無さすぎて、「もし転生したりしたら~」なんて主人公気取りで考えていたが、昨日あの巨人みたいなモンスターを見てからそんな考えは一切無くなった。

 ――と、語るのはこれくらいにしておこうか。
 よし!じゃあ武器探し、始めるかね!

「じゃ、今日もお願いね」
「――え?なんでこうなるん?」

 しかし、なんと今俺たちが居るのは、モーウのう○こだらけの放牧地である。

「なんでって、さっきも言ったけど武器を持ってない私たちはこういう依頼しか受けられないの。」

 一体なぜこうなったのか、事の発端は30分前まで遡る。

 ~30分前~

「ふぁあ……お前らもう起きてるのか?」

 俺は冒険者ギルド内にあるベンチ状の椅子から身体を起こす。
 すると、俺以外の3人はもう起きていたらしく、俺が起きた事に気づいたみさとは、

「お、とうま起きたのね。」

 そう言いながら、昨日と同じメディー牧場のお手伝い依頼の紙を見せてきた。
 そしてそれに俺が反対することはもちろん出来ず、気づけばメディー牧場まで連れてこられた。
 そして今になるって訳。

「はぁ……どうせ今日もひとりでやる羽目になるんだろ?」
「頑張ってくれとうま!」「がんばれ~!」
「みさとはもう家の中に入っていないしよ……」

 まさか武器が手に入るまで一生この依頼しか受けれないんじゃないだろうな……?
 だとしたら最悪なんだが……

 朝早くから無理やり仕事を強いられる俺と、仕事をせずに俺を見守る女子たち(ひとり例外)
 まるでヒキニートだった時に働かなかった分ここで働かされているような、そんな気分になるのだった。

 ---

「よっしゃ、やっと終わったぜ。」
「おつかれ」「おつかれさま!」

 それから20分後、昨日と同じようにカゴいっぱいになるまでモーウのう○こを集め終わった俺は、カゴを地面に下ろし、はぁはぁと荒い息を吐く。

 この仕事傍から見たら楽に見えるかもしれんが、集めれば集める程カゴも重くなってくるから相当重労働だぜ……

「お、終わったか。2日連続お疲れ様じゃ。すごく助かるわい。」
「いえいえ、依頼ですから……」

 そこでこの牧場の所有者であるテオさんは俺が仕事を終えた事に気づき、労いの言葉を掛けてきた。
 そして更にテオさんは、俺たちにこう提案してくる。

「良かったら、朝食食べていくか?」
「え!良いんですか!」
「おう、お前たちには頑張ってもらったからの。」
「ありがとうございます!!」

 朝食を食べずに動いてたからずっと腹が減ってたんだよ……!よっしゃ!これで元気が出るぜ!
 こうして俺たちは、テオさんの家で朝食を食べさせて貰うことになった。
 今まで朝食を食べられる事にここまで喜ぶなんてあったのだろうか。

 ---

「美味いかの?」
「はい!」「美味しいわ」
「あぁ」「うん!」
「それは良かったわい。」

 長机に並んで食べる俺たちを見て優しく笑うテオさん。
 あれから家の中に入った俺たちは、中で待っていたみさとの座っている机に予め用意されていた朝食の前に座り、「いただきます」と声を合わせ、何年かぶりのちゃんとした朝食を食べた。

 朝食の内容はパンと目玉焼きに牛乳。
 シンプルではあるが、栄養満点で美味しい。
 何故か知らないが一口目、食べながら少し涙が出たのは俺だけなのだろう。
 そんな風に味わいながら食べていると――テオさんがこう聞いてきた。

「ちなみにお前らはこの町の冒険者なのかの?」
「いえ、実は俺たち、昨日この町に来たんです。」
「そうなのか、それで初日からこの牧場の依頼を受けたと。」
「はい、そうです。」

 苦笑いでそう答える俺。
 本当はこんな依頼じゃなくて、もう少しお金を稼げる依頼をしたいところなんだがな。(この依頼や仕事をバカにしてる訳じゃないぞ?)

 すると、そこでテオさんは何かに気づいたのだろうか、真剣な表情となり、俺たちにこう問いかけてきた。

「――お前ら、まさか武器を持っていないのかの?」
「え?――はい、実はそうなんです。」
「そうかそうか、なら少し待っておれ。」

 俺の回答を聞いて、優しく笑うとリビングから奥の部屋(恐らくテオさんの寝室?)へと入っていくテオさん。
 ん?どういうことだ?

 すると、しばらくして部屋に入って行ったテオさんは、手に数本の剣と、一本の杖を持って帰って来た。――って、え?

「よっこいせ、やっぱり剣は重いのう。」
「えっと、これって?」
「昔冒険者をしていた頃に仲間たちとワシが使っていた武器じゃ。」
「「えぇ!?」」

 なんと、メディー牧場を経営していたテオさんは、先輩冒険者だったのだ。
 優しそうなおじいさん、というのが第一印象で頭に染み付いてるから全然イメージ湧かないな。

「冒険者だったなんて知らなかったわ。」
「ワシが冒険者だったのはもう何十年も前の事だからのう、分からないのも無理ないわい。」
「で、どうして俺たちにその話を?」

 大人特有の、年下に語りたくなる武勇伝的なやつか?とも思ったが、このおじいさんがそんなことをしてくるとは思えなかった。

「あぁ、それはの。この武器をお前らに託そうと思ったからじゃ。」
「「え!?」」
「い、良いんですか!?」

 再び4人全員の声が被る。
 いや、もちろん貰えるなら貰いたいし、凄く嬉しいんだが……

 先程言っていた通り、テオさんが冒険者をしていたのは何十年も前の話だ。
 杖はともかく、鉄で出来ている剣は錆びてしまっているのでは無いだろうか?
 俺はそう嬉しさと不安のよく分からない気持ちになっていると、再び俺の気持ちを感じ取ったエスパーなテオさんは、

「剣の錆なら安心しろ、ちゃんと手入れはしてあるわい。」

 そう言うと、鞘から剣を抜き、まるで新品かのようにピカピカと光を反射している刀身を見せてきた。

「す、すごい……ずっと前の剣とは思えないわね……」
「ほんとだな……」

 テオさん、牧場経営なんてしてないで剣の手入れ屋をした方がいいんじゃないのか?
 それとも剣ってのはどれもこういうものなのだろうか?

「本当に良いのか?こんな武器もらっても?」
「あぁ、ワシはもう二度と使わないだろうからの。それに、若者にワシたちが使っていた武器を再び使って貰えたら、アイツらも喜ぶだろうしの……」

 ちなつの確認にそう優しく答えるテオさん。
 最後に言ったアイツらってのは恐らく一緒のパーティーだった人たちの事なんだろうな。
 言い方的にその人たちが今生きているかどうかは――この事は聞く必要無いか。

「じゃあ、貰っても良いですか……?」
「あぁ、この武器をもう一度輝かせてやってくれ。」

 こうして俺たちは、テオさんが冒険者をしていた頃、パーティーで使っていた武器を譲り受けた。
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